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那覇市首里にあるこのクリニックでは通常の外来診療のほかに在宅診療を行っています。医師で院長の喜納美津男さんは長く在宅医療に関わってきました。

56歳から100歳を超える方まで毎月平均80人の在宅患者を訪問、診察しています。この日は午前中にクリニックで検査と外来診療あわせて30人ほどの患者さんを診て、午後からは6人の在宅患者を訪問しました。

Qプラスリポート 看取りを考える 最期まで自分らしく

はじめに訪問したのは首里にお住いの90歳の女性。3年ほど前から車椅子生活となりました。自宅で70年連れ添った夫が介護を行っています。以前は2人で一緒に出掛けては外食をするのが楽しみだったといいます。

去年の秋から殆ど寝たきりの状態となり、出かけることも難しくなってきました。夫は介護制度と近所に住む娘2人の力を借りながら妻を自宅で看取ることを決めています。

家族が自宅で看取ることの意義を喜納先生はこう考えます。

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喜納先生インタビュー「療養生活すべて支える。専属スタッフとしてね。介護者でもあるし、医療者でもあるし、或いは看護スタッフでもある。すべては家族がやるんですね。その分大変なんですけども、その分最期看取った後っていうのは充実感があるっていうんですかね、これが一番じゃないですかね。病院だと預けっぱなしになってね、病院にお任せで病院で亡くなったよっていう、今までの医療になってしまうんですけど、終末期を自分らで支えたっていう満足感はすごくあると思うんですよね」

休む間もなく次に向かったのは老人ホーム。実は、喜納先生が在宅診療でみている患者の殆どは、このような施設に暮らしています。ここでは2人を診察しました。

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このグラフは、2040年頃までの近い将来に看取りがどのような場所で行われるかを予想したものです。病院や自宅での件数にはあまり変化はありませんが、老人ホームでの看取り件数が、かなり増えることが考えられます。

喜納先生「ご自宅で介護の手がある方々はいいんですけども、高齢者の世帯っていうのは半数以上が独居か、或いは老夫婦世帯なんですね。だからおうちではなかなか看れない方が多くて。それでやはり施設、老人ホームとかそういったところでの看取りが多くはなってきますよね。施設で最期まで看取りまで出来るようにする体制をすることは凄く大事なことで、我々医療者もそうですけど介護にかかわる方々、それから地域の方々を含めて解決していかなきゃいけないんで、これはもう今からしっかり取り組んでいきたいと思っています」

沖縄県立中部病院感染症内科の医師髙山義浩さんは同時に、地域ケア科の医長を務め、在宅医療にもあたっています。髙山先生は老人ホーム施設などから救急搬送されてくる高齢患者を多数みてきました。そして医療処置によって一命をとりとめ、施設に戻ってもすぐにまた状態が悪くなり、病院と施設を行ったり来たりしているうちに自分がどこにいるのかもわからない状態で亡くなっていく高齢患者が、人生の結末としてとても悲しいものであると考えています。

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髙山先生「実は老いることも死ぬことも病気ではないんですね。昔から自然に受け止められてきたことです。ところが、いつしかそれが病院任せになり、医療者任せになりという風になってきてしまったことで少し老いや死が人々の生活から遠くになってしまったというところは残念な事じゃないかなという風にも思っています。高齢者の方々、或いはその介護をしているご家族の方々、自分自身で抱え込むことはせずに色んな専門家がいるので是非、自分たちがどういう事で困っているのか、或いは自分たちがどういう事をしたいと思っているのかという事を是非、地域で声をあげて下さい」

死を思うこと、それは、今ある生を思うこと。自分の親や自分自身の最期を迎える形を私たちは今、考えなくてはならない時期に来ています。