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春の訪れとともに、旬の食材がならぶこの時期は嬉しい季節ですが、気になるのが食品の劣化。ちょっと目を離すと野菜はしなび、お米にはいやな臭いがついたりします。

食品の劣化を防ぐには酸素に触れないようにする、つまり酸化を防ぐこと。品質維持のために食品メーカーや産地では様々な酸化防止の工夫をこらしています。今日はそのいくつかをご紹介します。

私たちが生きていくために欠かせない酸素ですが、その一方で栄養を供給する食品にとっては酸素は厄介者です。酸化することで食品は劣化し、風味はどんどん損なわれていきます。

さて、それではなぜ食品は酸素に触れると劣化するのでしょう?

宮城大学・鈴木建夫教授「食べ物の3大栄養素は炭水化物・たんぱく質・脂質です。食べ物が悪くなるのは、この脂質が酸化されて悪臭の原因となる。これが原因とされます」

酸素を減らして品質を維持するためにピザや味噌、コーヒーなど一部の商品で、脱酸素剤が入れられているものがあります。酸化はどう進むのか、実際に見てみましょう。

見た目はどちらも普通のポテトチップス。しかし超高感度カメラをつかって撮影すると、ポテトの表面の明るさにおおきな違いが出ました。いったい何がおきているのでしょう?

食品総合研究所・萩原昌司主任研究員「脂が酸化すると非常に弱い光を出すことがよく言われています。画面向かって右側の方が封をあけて4時間たったポテト、左側のほうが開封直後のものになります。封をあけることで脂の酸化、あるいは油の酸化を防ぐための抗酸化反応が始まりますので、それが原因で発光が生じ、明るくなっています」

空気に触れるとポテトチップスは品質がどんどん落ちてきます。このためメーカーはポテトチップスが入った袋に窒素をいれて品質を保持しています。

スーパーの食品コーナーに並ぶ多くの野菜や果物。植物は生育の過程で光合成をしますが、実は収穫されたあとも呼吸を続けています。しかし、呼吸をすればするほど栄養分は失われ、野菜や果物の味をきめる糖分も減っていきます。つまり、どんどん品質が落ちていくのです。

食品総合研究所・椎名武夫ユニット長「野菜や果物の品質を保持するためには呼吸を抑制するということが必要です。呼吸を抑制するためには低温にする、あるいは酸素濃度を下げるといった方法がとれます」

酸素濃度を下げるために開発された袋があります。袋の表面に目に見えない小さな穴をあけ、酸素の取り込み量を制御し、低酸素状態を作りだすこの袋は「MA包装」と呼ばれています。冷蔵施設のない場所や、冷やすと品質がおちる野菜や果物の保管にMA包装は役立っています。

おなじく食品売り場の一角に並ぶのは牛乳。メーカーにとっては厳しい販売合戦が続くなか、味を改善し、別の商品との差別化に成功した牛乳があります。キーワードはやはり「酸素」。

宮城大学・鈴木建夫教授「牛乳の中には、じつは酸素が溶け込んでいる。これを溶存酸素といいますが、溶存酸素によって酸化されて変敗してしまう、味がおかしくなってしまいます。ということは溶存酸素を取り去ってしまえば、非常に美味しい牛乳ができあがるわけです」

このメーカーでは、牛乳の中に溶け込んだ酸素濃度をおよそ5分の1に減らした牛乳を開発。口当たりや後味のよさを大幅に改善できたということで、発売以来高い人気を得ています。

食品の酸化をおさえて、品質をまもる。一見、地味な技術ですが、美味しいものを食べたいというニーズにこたえるために、さまざまな取り組みが続いています。