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戦前から現在にかけて、沖縄や日本が歩んだ歴史や基地から派生する問題などを体系立ててまとめた本が先月完成しました。戦争体験者が少なくなり、学校の授業でも触れ機会が減るなか、後世にどう伝えていくのか?編さんに携わった沖縄の歴史や平和教育の研究者に話を伺いました。

戦後80年の節目に完成したのが「2045年のあなたへ」です。未来を担う生徒たちの平和教育に役立ててほしいと編さんされました。

沖縄戦の実相伝える書籍 全高校に配るためにクラウドファンディング

第一次世界大戦以降、日本が軍備強化によって戦争に向かっていく様子。沖縄戦の実相や占領から残り続けるアメリカ軍基地などの現状の問題まで、証言や公式の記録などをもとに記されています。

編さんしたのは県内の高校で教べんをとり、沖縄の歴史や平和教育を研究している沖縄大学の新城俊昭客員教授です。

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新城俊昭客員教授「(沖縄では)慰霊の日に向かって沖縄戦について私たちは学習するんですけど、実は体系立てられたテキスト・教材がなかったんですよ」

新城さんは、県内の教員らで組織する沖縄歴史研究会の立ち上げ人でもあり、30年前から5年に1度、県内の高校生に沖縄戦や基地問題への認識についてアンケート調査をしています。

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ことし実施した調査では、県内の高校生1642人のうち94・8%の生徒が沖縄戦を学ぶことは「とても大切・大切」と答えていて、毎回通り関心の高さがうかがえる一方、沖縄戦にかかわる具体的な設問や戦後の沖縄に関しての設問では、正答率が5割をきるものも多くなっています。また、アメリカ軍・普天間基地の移設先についての質問に対しては、「分からない」との回答は、およそ14%増加して46・3%になりました。

新城俊昭客員教授 6月12日放送「意識は高いけど知識は低いというのが30年間ずっとなんですね、ただ知識も少しずつ高くなっている。(子どもたちが)学ぶ時間が足りない、それですね」

新城さんは、学校の授業に「平和教育」という科目がなく、生徒に教える時間の確保が難しいうえ現場の教師も教えることに慣れていないという課題もあると指摘します。

新城俊昭客員教授「(教師も)平和教育については、きちんと学習してるわけじゃないし、そして、その指導方法もほとんどの教師が学んでない場合が多いんですよね」「初めて教壇に立つ教師にとって、これはもう本当に不安でしかないんです」
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新城さんは、こうした調査結果を受けて、本では戦争について考えることのできる設問や、県内の資料館や戦跡をみながら問いに答えるページを設けました。「なぜ戦争が起こったのか」「基地問題とはなんなのか」などを読者みずからが考えることで、沖縄戦や基地問題との距離感を埋められるようにしています。

また、多忙だったり、平和教育の指導に慣れていなかったりする教師が授業をする際に、そのまま教材として使用できるというねらいもあります。

新城俊昭客員教授「紛争から住民を守るためには、どうしたらいいですかと聞いたら(戦争体験者に)怒られたんですよ」「紛争になったらもう守ることは難しい。だから住民を守りたかったら、紛争を起こさないこと、戦争を起こさない、それ以外に住民を守る方法はないって言われたのが、とても何か胸にジーンときています」
「実相を知れば、やはり戦争を起こさないための努力がいかに大切かっていうことがわかると思います」
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本のタイトル「2045年のあなたへ」には、戦後100年も平和で迎えたいという願いはもちろん、これからの社会を担っていく若い世代が、しっかりと沖縄戦の教訓を受け継いで平和を維持していってほしいという意味も込められています。

新城さんは現在、本を県内すべての高校と公立図書館に無償で届けるために、クラウドファンディングで寄付を募っています。期限は今月31日までということです。

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