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自民党の西田参議院議員が、今月3日の集会でひめゆりの塔について「歴史の書き換え」などと発言して波紋を広げています。

ひめゆり平和祈念資料館の普天間館長はQABの取材に「実相をくみ取った展示がなされている」と訴えています。沖縄戦の実相と、西田議員の歴史観を分析する中で、問題点が見えてきました。

問題になっているのは、3日、那覇市で開かれた改憲派の集会での発言です。糸満市のひめゆりの塔について「日本軍が入ってきてひめゆり隊が死んだ。米国が入ってきて沖縄が解放されたとの文脈で書かれていた」などとし「歴史の書き換え」などと発言したと報じられました。

一連の報道について、西田議員は真意は別にあったと強調します。

記者解説 西田氏発言の問題点は/ひめゆりの塔「歴史書き変え」歴史観と沖縄戦実相のはざまで

西田氏「その事実が要するに意図を持った形で作られてしまうと、それは歴史を次の世代に伝えることにならない」

普天間館長「体験者の方からもそういう発言が許せないという声もあった」

一方、現在、ひめゆりの塔に隣接する平和祈念資料館で館長を務める普天間朝佳さん。西田議員の主張する主旨の展示の存在は否定し、歴史認識の問題点を指摘します。

普天間館長「日本軍と米軍が沖縄という小さな島で激しい戦闘をしたがゆえに、地上戦になったがゆえにたくさんの命が奪われたというのは伝えている」「日本軍が来て死者が増えたとか、米軍が解放したという」「単純な歴史の認識ではなく」「実際に沖縄戦で起こったことの実相が、ここには展示されているのに」「本当に乱暴に発言をされた」「あの発言を聞いていると、沖縄戦の実相はどうであれ」「自分の考えていること、意見を言いたいだけの発言だったのではと思う」

記者解説 西田氏発言の問題点は/ひめゆりの塔「歴史書き変え」歴史観と沖縄戦実相のはざまで

西田議員の発言を受けて、元ひめゆり学徒の翁長安子さんはQABの取材に「常識不足も甚だしい。また沖縄の地を戦場にするのか」などと怒りをあらわにしていました。

戦争体験者がつらい記憶を思い起こしながら、次世代に伝えてきた沖縄戦の歴史は、西田議員がいうように意図をもって作られたのでしょうか。

元ひめゆり学徒・宮良ルリさん・2011年「きっと皆さんはわかってくれると思う。忘れないと思う」「自分たちの戦争のことを、皆さんにバトンタッチする」「皆さんに知ってほしい。そして次の世代に伝えてほしい」

では塚崎記者に聞いていきます。今回の西田議員の発言ですが、どういった点が問題なのでしょうか。

塚崎記者「西田議員は『日本軍が入ってきてひめゆり学徒が死んだ』『アメリカが入ってきて沖縄が解放されたと書かれていた』として『歴史の書き換え』と主張していました。資料館側への取材では事実関係としてそのような展示は過去にも行われていなかったことがわかりました」

記者解説 西田氏発言の問題点は/ひめゆりの塔「歴史書き変え」歴史観と沖縄戦実相のはざまで

「西田議員の発言はそもそもが事実誤認で、きのうの会見では展示について「明確な違和感」と主張しつつも具体的な指摘はなく「記憶ではそういう印象だった」と釈明しています」

一方で、西田議員は報道について「切り取り」などと主張していますよね。そちらについてはいかがですか。

塚崎記者「はい。3日の集会では憲法改正をテーマに話をする中で、自身が持つ政治観・歴史観に基づいて、戦中・戦後の歴史を語る中の一部としてひめゆりの塔について言及したとみられます」

「議員は一部に着目しているという意味で「切り取り」と主張していますが、本人の認識自体が少なくとも沖縄戦については事実誤認に基づいて行われていたといえます」

「さらに『沖縄で憲法改正論議をするのはけしからんという方向を導き出す意図が透けて見える』などと述べましたが、事実誤認の指摘を曲解するその姿勢はむしろ議員が沖縄戦をはじめとして、様々な事柄を自分の歴史観に合うよう都合よく解釈して述べてきた様子に『明確な違和感』があると言わざるを得ないと思います」

記者解説 西田氏発言の問題点は/ひめゆりの塔「歴史書き変え」歴史観と沖縄戦実相のはざまで

「憲法の改正の是非や第二次大戦の歴史観は、さまざまな議論があってしかるべきではありますが、まずは歴史的な事実を踏まえて議論することが最低限求められると思います」