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沖縄の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」のコーナーです。案内は動物写真家の湊 和雄さんです。

湊 和雄さん「宜しくお願いします。」

今回のテーマは「”リュウキュウ”ってどこ?」です。どういう意味ですか?? 

湊 和雄さん「このコーナーのタイトルにも含まれるリュウキュウ。って、何処を指すかご存知ですか?決して沖縄の古い名称ではありません。生物の世界で使われる「琉球列島」。一般に使われる「南西諸島」とどう違うのでしょうか?」

どう違うんですか?

湊 和雄さん「まず、天気予報などでよく耳にする「南西諸島」。鹿児島本土沖から台湾沖まで伸びる、「大隅諸島」から「八重山諸島」。さらに「大東諸島」と「尖閣諸島」も含みます。」「そして、「琉球列島」は「トカラ列島」から「八重山諸島」までで、「大東諸島」と「尖閣諸島」は含みません。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

「ここは亜熱帯地域なのです。「大隅諸島」以北は温帯なのです。また、琉球列島は太古にひとつの陸地だった時代が複数回あります。しかし、「大東諸島」と「尖閣諸島」は繋がったことがないので含まれません。」「この亜熱帯と温帯の境界線は、詳しく言うと、「トカラ列島」の悪石島と小宝島の間にある「渡瀬線」。

「しかし、扱う動物のグループ(哺乳類、昆虫など)によって多少異なります。大雑把には「トカラ列島」が境界。この渡瀬線は、地球全体を8つの地域に分けた「生物地理区」の境界線でもあるのです。生物の名前には、その姿であったり、発見者の名前であったり、様々な名前が付けられていますが、生息地が付けられているものも少なくありません。その具体例でさらに詳しく。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

スケールの大きなお話ですね!VTRご覧ください。

湊 和雄さん「これはよく見かけるリュウキュウアサギマダラ。生息地はトカラ列島以南でほぼ完璧に琉球列島です。しかし、このような典型的な例は、意外に少ないのです。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

と仰いますと?

湊 和雄さん「例えば、リュウキュウハグロトンボ。沖縄本島、徳之島、奄美大島に生息しています。台湾には(亜種が)いるのに、間の八重山諸島、宮古諸島にはいないのです。爬虫類のリュウキュウヤマガメ。ほとんど陸上生活をするカメです。沖縄本島、久米島、渡嘉敷島に生息しています。奄美群島にも八重山にもいないので、リュウキュウと冠するよりもオキナワのほうが相応しい例でしょう。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

なるほど!

湊 和雄さん「渡り鳥にもいます。アカショウビンという鳥は、北海道から沖縄まで、夏鳥として飛来し繁殖します。しかし、琉球列島に飛来する鳥は、羽の色が微妙に異なることからリュウキュウアカショウビンという亜種名が付けられています。」

「リュウキュウではなくオキナワと付く生物も少なくありません。生物の名前で「オキナワ」には3つの意味があります。「沖縄県」「沖縄本島」「沖縄諸島」。オキナワアオガエルは、沖縄本島と伊平屋島に生息。同じ種で亜種の異なるアマミアオガエルが奄美大島、徳之島に生息。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

「また、石垣島、西表島には近縁種のヤエヤマアオガエルが生息。なので、このオキナワを沖縄諸島と考えれば矛盾はありません。次に沖縄本島のオキナワの例。オキナワイシカワガエルは沖縄本島だけに生息しています。但し、北部・やんばるだけです。」

「かつては奄美大島のイシカワガエルと同種とされていましたが、2011年にオキナワイシカワガエル、アマミイシカワガエルとそれぞれ独立種になりました。

「一般には沖縄本島と呼びますが、正式には沖縄島です。しかし、沖縄本島のホントウが付けられた生き物もいます。ホントウアカヒゲです。奄美群島、トカラ列島他に生息するナミアカヒゲの沖縄本島亜種がホントウアカヒゲです。やんばるだけに生息しています。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

湊 和雄さん「生物の生息地は基本的に島毎(単位)で報告されます。しかし日本最大の島、沖縄本島。希少生物の宝庫「やんばる」が付く種も有名です。1983年に発見されたヤンバルテナガコガネ。日本最大の甲虫ですね。その後も他の地域で見つかっていませんから、正真正銘のやんばるの生物です。その2年前の1981年に発見されたヤンバルクイナ。やんばるのシンボルのような存在ですね。やはりやんばる以外で見つかってません。」

リュウキュウの自然:「リュウキュウ」ってどこ?

湊 和雄さん「ネット検索でも「琉球列島」よりも「南西諸島」が圧倒的に多い現状です。生物関係者でも行政でも「南西諸島」を使うことがしばしばです。しかし、これは生物の世界では誤りなのです。その最も説得力のある証拠は図鑑です。図鑑の索引を見ると、「リュウキュウ」と付く生物は多数いますが、「ナンセイ」と付く生物は1種もいません。」

今回も貴重な映像ありがとうございました以上、リュウキュウの自然でした。