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感染急拡大で医療の現場が窮地に立たされています。「患者を受け入れるベッドが足りない」うえに、「医療スタッフの人手も不足している」という、去年の夏のひっ迫度合いをはるかに超えた状態に陥っているといいます。新型コロナの最前線で対応を続ける病院の実情を見つめることで、私たちに何ができるのか、考えるきっかけにしたいと思います。

スタッフ「南徳と協同、断られている」

医師「どこも行くところがない?」

スタッフ「どこも行くところがない」

医師「かかりつけに断られた?」

スタッフ「かかりつけ、断られてます」

県内の感染者数が連日過去最多が続いたことで、医療現場は限界を迎えていました。

スタッフ「コロナの濃厚接触者で多くの病院に断られたそうです」

医療のひっ迫深刻化で患者を受け入れられない

那覇市内に搬送先が見つからず、豊見城市の友愛医療センターに依頼がやってきました。

電話する医師「濃厚接触者なので、個室がいるかなと思うんですが、お部屋どうですか?」

患者は、高齢者施設の入居者。

電話する医師「厳しい…」

医師「主訴は?」

スタッフ「大腿部骨折疑い」

骨折の疑いがあり、整形外科での診療が必要なのに、この時、入院可能なベッドは、あと2床しか残っていませんでした。

医師「那覇で6件断られて、うち7件目?」

スタッフ「こっちが6件目です」

医師「大丈夫です?…ありがとうございます」

医療のひっ迫深刻化で患者を受け入れられない

深刻なベッド不足に、受け入れ要請を断るケースも、日に日に増えています。6月の救急車の受け入れ件数は、過去最多の426件。一方、搬送を断ったのは87件で、このうち51件がベッド不足によるものでした。

7月は、18日までで107件の受け入れを断っています。

友愛医療センター 救急科 山内素直 部長「例年は受け入れベッドがないって言って泣く泣くお断りするのは10件以下なんですよ。以前の5倍のペースで救急車をお断りせざるを得なくなっている」

これまでにないほどの感染者の激増に加え、3年ぶりに行動制限がない夏を迎えたことも、救急外来のひっ迫に拍車をかけているといいます。

友愛医療センター 救急科 山内素直 部長「もしかしたらコロナの自粛が終わって、観光客とかも増えた。外に出る方が増えて怪我とか熱中症とかも増えて、6月7月は、そもそもの救急搬送件数自体が増えている。その中にコロナっていうのが来てしまって、最悪な状況になってるんじゃないかなと思います」

コロナに限らず重症者のベッドを確保するため、症状が落ち着いた患者は、一般病棟に移動したり転院したりせざるを得ない状況です。

医療のひっ迫深刻化で患者を受け入れられない

友愛医療センター 救急科 山内素直 部長「防げることで救急外来を受診する患者さんもすごく多いんですよ。睡眠不足でゴルフ行って、炎天下でゴルフして熱中症になって。お酒がらみ、ケガがらみ…やはりここはもう少しその救急医療を自分たちの地域の医療を守るっていう意識を一人ひとりが持っていただく必要があるんじゃないかなと思います」

医療資源に限りのある本島北部では、さらに深刻な状況です。医療崩壊を避けるために、北部地区医師会病院では80代~90代の陽性者のうち、医療行為が本当に必要な人だけに受け入れを絞っています。

北部地区医師会病院 呼吸器・感染症科 田里大輔 部長「大多数の80歳、90歳の方っていうのは、基本的にはお元気でしたら、電話診療で対応していますし、多くの人は入院していないのが現状ですね」

スタッフの感染や濃厚接触の急増で、マンパワーが圧倒的に不足しているのです。

北部地区医師会病院 呼吸器・感染症科 田里大輔 部長「本人やご家族から、この年でこんなにきついのになぜ入院できないかって言われるんですけど、やはりもう医療行為が必要な方に入院を絞らないと、もうとてもじゃないけどあの入院で受けるキャパシティがないという状況ですので」

医療のひっ迫深刻化で患者を受け入れられない

県内で就業制限を受けている医療従事者の数は、7月19日時点で768人にのぼり、過去最多となっています。特に、今年4月以降は医師が感染したり濃厚接触者となるケースが増えていて、診療を制限する状況が続いています。

北部地区医師会病院 呼吸器・感染症科 田里大輔 部長「世の中がウィズコロナにどんどん舵を切っていくのは、仕方がないことだと思いますが、最終的には、やはりウィズコロナの裏には、いわゆるゼロコロナを維持することを求められる医療というのがあって、そのギャップで最近医療者はかなりつらい状況におかれています。病院の中でウィズコロナも許容していくのか、そういうコンセンサスをやはりつくるための努力を、緩めた後の先に何があるかっていうところまで含めて、そういったところのメッセージを国に出してほしいなと思っています」

新型コロナの長丁場の対応を強いられるなか、初めて迎えた”行動制限のない夏”は、まだ始まったばかりです。命の砦が直面している“医療崩壊の危機”を乗り越えられるのか、責任ある行動と高い意識が求められています。