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先月、西原町の個人情報保護審査会が、学校で使用されていた指導記録簿、「子ども理解のための指導・支援カルテ」の削除を町に求める答申をしました。その理由は、町の個人情報保護条例に抵触する、というもの。カルテ作成に本人の同意を得ているかや、外部に情報を提供しないかなどを、事前にチェックしていないと指摘したのです。

県の教育委員会の指導のもと、すべての公立校で導入された「指導カルテ」は、そもそも、なぜ導入されることになったのでしょうか。県は、2003年北谷町で発生した中学生どうしの暴行致死事件がきっかけだったと話します。

県義務教育課課長「その事件を未然に防ぐことができなかった」「児童生徒理解充実の視点から,子ども理解のための指導支援カルテの作成および提出をお願いいたしました」

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児童・生徒に対する理解の充実が、再発防止に役立つと考えたというのです。指導カルテの導入通知は、事件のわずか13日後、県から各市町村に対して行われました。

県義務教育課課長「かなり緊急性があったと思うんですね」

対策を急いだ結果、手続きが見過ごされたとする県。しかし、暴行事件の2ヶ月前、文部科学省が、問題行動のある児童生徒に対する、個別指導記録が必要だと、全都道府県に通知していました。

「校内・関係者間で情報を共有し、共通理解の下で指導・対応に当たる—」「学年間や小・中学校間、転校先等との引継ぎ、教育委員会への連絡等において活用する—」

県は、文科省の意向を承知しながら、個人情報収集に関する問題点を議論せず、問題行動などがある児童のカルテ作成を各市町村に指示。翌年からは、全児童・生徒のカルテ作成・運用を決めました。

西原町教育委員会教育長「一方的であると。こういう風に、これに書いてくださいと。上意下達式であったことも問題がありますけどもね」

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県内で初めて、カルテの違法性を指摘された西原町。カルテに法的な問題があるとは考えず、県に指示されるまま導入したことが不適切だったと述べました。

西原町教育委員会教育長「審査会に出て初めて私どもは」「何の手続きも踏まれていないという、違法性を指摘されたわけです。そうなるともう、内容の話ではなくなってきたんです。制度そのものがおかしいと、届けられてないと。」

また、西原町の審査会は、3人の現場教員を意見聴取した結果、カルテの必要性や、有効性に疑問があるとの意見があったことも指摘しています。実際に、報道でカルテの存在を知り、開示請求をした保護者はその中身に驚きました。

保護者「名前と出席日数しかなくて、何も書かれてなかったです。良いも悪いも」

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この保護者は、学校が、特に問題視している子どもだけを、カルテで監視しやすくしているのではとも指摘しました。

「特に問題のある子だとすれば、よけいコミュニケーションが大事だと思うんですね」「愛情が感じられないカルテ」

こうした批判を受け、個人情報保護手続きを取った、新たなカルテ作成を目指す自治体も出てきています。西原町もその方針です。

西原町教育委員会教育長「新しい別のカルテは、当然父母ともこういうことを相談できるようなね、」「親も一緒にいい面も悪い面も、確認しながら書いていけるとなお良いわけです」

ただ教師サイドには、この議論自体無意味だという意見もあります。

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県教職員組合中央執行委員長「カルテに書かれた内容を吟味したり、照合しあったり、意見交換したりっていう風な、手続きが全員に必要なわけでしょ。例えば1クラス40人に。そんな時間と労力があるんなら、向き合って話したほうがいいんじゃない?」

子ども一人ひとりを尊重すべき教育現場に、カルテは本当に必要なのか。県民全体で考える時期に来ています。