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首里城再建を追いかける「復興のキセキ」です。今回は「平成と令和 首里城が変わる」をテーマにお伝えします。スタジオには、首里城のエキスパートにお越しいただきました。

平塚所長「沖縄総合事務局 国営沖縄記念公園事務所の所長をしています平塚です。よろしくお願いします。」

平塚さんは今回の再建工事で、首里城復元の現場責任者として、専門家の意見の取りまとめや技術的検討などを担当されています。工事のことを知り尽くした平塚さんとともに「令和の首里城」を紐解いていきます。

そして!沼尻アナウンサーは視聴者目線で疑問に思うことや知りたいと思うことがあれば何でも聞いてください。

まず、改めてにはなりますが、首里城について整理します。

沖縄戦で受けた壊滅的な被害から建て直したものが「平成の復元」です。1989年11月に工事が始まり、1992年に公開されました。

そして、「令和の復元」は4年前の火災で焼失した正殿をはじめとする主要な建物を取り戻そうというものです。現在、2026年秋(3年後)の完成を目指し正殿の再建工事が進められています。

平塚さん、この令和の首里城「平成の時以上」に王国時代の首里城により忠実に再現されるんですよね?

平塚所長「はい、バージョンアップするんです!平成の正殿は、限られた資料、時間の中での復元でしたが、30年以上が経ち、当時なかった資料が発見されたり、その後の研究で新たなことが分ったり、首里城に関する研究が進んだことがその主な要因です。」

首里城2026 復興のキセキ 令和の復元を徹底解明エキスパートに聞く「平成」との違い

例えばこちらをご覧ください、今から146年前の1877年に フランス海軍のルヴェルテガ少尉という人物が撮影した写真です。正殿の全景が映し出されていて、この写真が今回の再建で大きな役割を果たしたんですよね。

平塚所長「この写真の存在は平成の復元後に明らかになり、今回、国の技術検討委員会の委員が高精細な画像データを入手したことで、特に正殿の外観の彫刻などの詳細な分析が可能になりました。」

「特に変わるのが建物の正面、向拝奥の彫刻物です。こちらには一対の獅子と牡丹の彫刻があって平成の時はこうした絵図などをもとに復元しました。しかし、写真を見てみますと獅子は、枠いっぱいに大きく描かれしかも顔は上向きのように見えますよね」「そのため、今回の復元で獅子は、平成の時より1.3倍ほど大きく顔も上を向きます。」

「牡丹の彫刻に関しても牡丹の両脇に黒いものが見えて全体的に、上の模様、3つの牡丹と獅子の模様と似ていることがわかりますよね、むしろ同じ模様と考えた方が自然だろう、と判断して今回の復元では3つの牡丹と獅子・唐草の文様になる予定です。」

首里城2026 復興のキセキ 令和の復元を徹底解明エキスパートに聞く「平成」との違い

長年の研究の成果や技術の進歩が反映されこれまで以上にリアルな正殿の姿を、3年後見られるということなんですね。

変わる首里城の中でも、注目してほしいポイントがあるんですよね!

平塚さん「首里城といえば赤ですが、城を象徴する赤が前回とは「異なる赤」になるんです!」

つまり「正殿の色が変わる」ということですね、平成では「弁柄」を使っていましたよね?

平塚所長「はい、そうなんです、基本的には鉄にできるサビと同じ、酸化鉄由来の「弁柄」と呼ばれる赤を使用していました。しかし今回は、本島北部産の「久志間切弁柄」とよばれる色味が採用されます。」

その「久志間切弁柄」に決まった経緯や製法などVTRにまとめました。

首里城2026 復興のキセキ 令和の復元を徹底解明エキスパートに聞く「平成」との違い

「首里城」の赤がより史実に近づくことになりました。きっかけは「百浦添御殿御普請日記」と呼ばれる古文書です。

「弁柄朱三拾三斤 先例之通当座入用御座候間、有所 久志間切江本行之員数兼而手当 仕置、来年三・四月比御手形次第、皆同 相納候様被仰付置度」

「首里城正殿の工事があるので先例に倣い、現在の名護市から東村辺りの地域を指す『久志間切』で調達するように」と書かれていました。

平成の復元時には見つかったばかりで詳細を解明する時間がなく再建に反映させることができませんでした。その後も調査が続けられ、ある時入った「真っ赤な水が溜まる不思議な川がある」という情報が研究に大きな成果をもたらします。

かつて久志の地域には赤い水田が広がっていたといいます。地元の人たちは赤い水を「カイミジ」と呼んでいました。「カイミジ」には、鉄分や鉄バクテリアが多く含まれていて、良質な顔料を作ることに成功したことから「久志間切弁柄」に間違いないと結論付けられたのです。

顔料の作り方はというと、まず川の近くの水を10日ほどねかせ、沈殿物のみをこしとります。その後、乾燥させ 約900度の高温で8時間~9時間程度熱を加える「焼成」を行います。

すると粉末褐色からは赤へと変化し「久志間切弁柄」が完成します。できた弁柄は桐油と調合し、首里城の塗装の仕上げに使われます。令和の正殿には50kgの弁柄が必要だと見込まれていて今急ピッチで作業が進められています。

首里城2026 復興のキセキ 令和の復元を徹底解明エキスパートに聞く「平成」との違い

ということで、スタジオには、平成の時に使われた「弁柄」、そして令和の首里城の赤「久志間切弁柄」のサンプルをお持ちいただきました。

沼尻アナウンサー、どうですか?

沼尻アナウンサー「令和の赤の方が濃い、深みがあるような感じもします」

平塚所長「そうですね、赤みが強く、輝度は低いので少し落ち着いた色になると思いますが、この色こそが往時の正殿の色だったのだと思います。」

自然由来ということで、集めるのもきっと大変なのでは?

平塚所長「久志間切弁柄は、「上塗り」と呼ばれる塗装の仕上げに使います。現在の生成方法では一度に作れる量は多くありませんし、自然のものですので品質も安定しているとは言えません。」

平塚所長「実は今回、「久志間切弁柄」を使用する根拠となった古文書にも、20kgの弁柄を生産するよう1年前には指示していて、しかも「前回の正殿修理時には久志間切の弁柄が足りず日本の弁柄を買わないといけなかったのでそんなことがないように」、と念押しまでされています。」「状況が今と似すぎていて、他人事とは思えません。当時もかなり苦労していたのでしょうね。」

沼尻アナウンサー「今はどういった段階なんでしょうか?」

平塚所長「安定的な生産のための貯水タンクの設置が終わったところで、これから生産体制のサイクルを確立していく段階です。今年度中には塗装に必要な量の確保と塗り方の仕様を固めようと動いています。」

漆塗りの作業は2024年(来年)の夏頃に始まる予定です。正殿の赤がどんな仕上がりになるのか注目してください。さて平塚さん、一歩一歩首里城は復興に向け歩みを進めています。首里城の再建現場では具体的にどんな作業が行われているんでしょうか。

平塚所長「今月から正殿の柱を支える礎石の設置が始まり、おととい(26日)すべての搬入が終わりました。」「また、今月は柱だけでなく、原寸場で描いた原寸図にあわせて加工するための破風板などの搬入も始まっています。」「また正殿をすっぽり覆い建設中の正殿を雨風などから守るための素屋根と木材の加工などを行う木材倉庫との連結も完了しました。」「素屋根は設備工事段階ですが、それが終われば本格的に正殿を建設する環境がいよいよ整います。」

特に9月ごろには素屋根に併設されたデッキから自由に作業の様子が見学できるんですよね!

平塚さん「はい。その通りです。徐々に形作られる正殿の姿、職人の熟練の技をぜひ間近で見てほしいと思います。また、今は夏休み期間中ということで様々なイベントも行っています。」「前回好評だった“ニービの粉”製作ボランティアを今月21日から夏休み期間限定で実施しています。」「皆さんが作ってくれる粉が、今日紹介した久志間切弁柄の漆塗りの下地として新たな正殿に使われます。無料で参加できるので、是非皆さんの力をお貸しください。」

首里城2026 復興のキセキ 令和の復元を徹底解明エキスパートに聞く「平成」との違い

平塚さん「また、明日からは首里城の歴史や琉球王国の文化を楽しみながら学ぶことができる「首里城公園自由研究帳」を園内で配布します。詳しい情報はぜひ首里城公園のHPをご覧ください。」

首里城公園「夏休み体験イベント2023」開催! | 首里城 ‐ 琉球王国の栄華を物語る 世界遺産 首里城

そして!こちらの自由研究帳、視聴者のみなさんに5部プレゼントします。QABの応募フォームから、是非ご応募ください!

首里城の歴史や琉球王国の文化を楽しみながら学ぶことができる「歴史探索!首里城自由研究帳」を5名様にプレゼント!!

首里城2026 復興のキセキ 令和の復元を徹底解明エキスパートに聞く「平成」との違い

きょうは国営沖縄記念公園事務所 平塚勇司さんにお越しいただきました。

平塚さん「夏休み期間中ということで、夏休みの自由研究などにもぜひ活用してください。」

ありがとうございました、以上、復興のキセキでした。