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Qプラスリポートです。2回シリーズでお届けしている「空飛ぶドクター」。今回は「グリーフケア」について考えます。あまり耳なじみのない言葉かもしれませんが、1人の医師の精力的な活動に密着することで見えてくることがありました。

Qプラスリポート 空飛ぶドクターのグリーフケア

イタリア歌曲を高らかに歌い、拍手喝采を浴びる男性。仲間直崇さんは消化器内科専門医。そして、もうひとつの顔が「空飛ぶドクター」。普段は北中城村にある中部徳洲会病院の医師だが、月に1度、飛行機に乗り、沖永良部島に通って離島の医療を支えている。

そんな仲間先生の名刺には…んん!?「野生のテノール」??

中学生のとき声楽をはじめた仲間先生。大学進学の際には、音楽を目指すか医学部に進むか、本気で迷ったのだとか。結局、医師の道を選んだが、今でも声楽を楽しんでいる。

そんな仲間先生と阿部津代子さん、直之さん夫婦との出会いは約2年前に遡る。阿部さん夫婦が沖永良部島に移住してわずか数年で、直之さんに進行がんが見つかり、仲間先生たち医療チームが診療にあたったが、残念ながらおよそ半年後に直之さんは亡くなった。

Qプラスリポート 空飛ぶドクターのグリーフケア

津代子さん「患者とのコミュニケーションを大切にしたいっていう先生、お父さんがそれに惚れこんじゃってね」

決して長い年月ではなかったが、仲間先生と阿部さん夫婦の間には強い絆が生まれた。

仲間先生「とても帰りたかったと思うんですけど、奥さんが大変だから(入院を選んだ)。家で自分を看取らせるという経験をさせたくなかったのかな」

誰もが避けては通れない「死」。家族や親しい人との永遠の別れを経験した人は深い哀しみに包まれる。

仲間先生「がっちり関わったケースほど、家族は二重の喪失感。大切な家族を失ったこと、(治療や介護で)関わった医療者も関わらなくなるので、二重の喪失感って生まれやすくなる」

Qプラスリポート 空飛ぶドクターのグリーフケア

そうした哀しみを癒すために行われるケアを「グリーフケア」という。その哀しみに寄り添い、悲嘆から立ち直らせようというものだ。

仲間先生「僕らから、元気ですかって、大丈夫ですかって言いに行く」

仲間先生は縁のあった患者の看取りが終わると、時間を見つけてはグリーフケアのために亡くなった患者の家族などを尋ねる。

仲間先生「医療の基本って僕が思ってるのは、人からされたくないことを人にしちゃいけませんっていうのが基本。その先に、人にされたい事を人にしてあげましょうっていうのが入ってくると思う」

夫を亡くし、ひとり暮らしをする津代子さんを気遣い、たびたびその後の話をきいていた仲間先生。直之さんの死後1年以上経ったが、今回コンサートの形をとったグリーフケアが行われた。

仲間先生「最後の曲は、阿部直之さんの充実した人生に敬意を表して歌わせていただきたいと思います」

仲間先生「僕らがやってあげたいって気持ちと自己満足に陥らないバランス。それをどういう風にかかわっていったらいいのか、毎回手探り。僕としてはこうしてあげたいって思って動くんですけど。そこをバランスとるのが毎回難しくて。昨日のコンサートでも阿部さんの顔色ばかり見てましたし」

津代子さん「お父さん聴いてるー!?(感涙)良かった、涙が出ました。(お父さんに)届いたと思います、昨日雲に乗って来たから」

仲間先生「今回したことっていうのが、阿部さんにとってポジティブな良いストーリーに変わっていけばいいなって思います」

空飛ぶドクター。彼は歌うドクターであり、患者やその家族の心に深く寄り添うドクターでもあった。