※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

去年、一部の農家で、天然記念物ミヤコウマの不適切な飼育環境が問題となりました。私はずっと気になっていて、その後、ウマたちを取り巻く環境に変化はあったのか、取材してきました。

天然記念物ミヤコウマを守るために、求められる方策と課題

元気よく駆け回るミヤコウマ。好きなだけ草を食べ、たまに仲間にちょっかい。のどかな時間が流れます。実は、このウマは、狭い厩舎でロープで繋がれたまま飼われていた子馬と一緒に飼われていたウマです。名前はシンゴ。

若手の飼育者、狩俣さんの元へ3カ月前に引き取られ、のびのびと暮らしています。

狩俣大輔さん「ひどい飼い方されてるって知って、人間不信だろうなと思って、自分なら愛情をかけて育てられるっていう自信があったから。」「10年くらい小屋の中で生活してたから、外も楽しいよってことを教えたりとか。時間はすごいかかるんだけど、やってたらわかってくれるから楽しいですね。」

天然記念物ミヤコウマを守るために、求められる方策と課題

少しづつ心を開いていったシンゴ。最初は触れることすらできませんでしたが今はすっかり狩俣さんになついています。

狩俣大輔さん「本当に同じ馬かなって感じで、少年みたいな顔になっててかわいいですね。」「大変だけど引き取ってよかったなと思います。」

1991年に県の天然記念物として指定されたミヤコウマ。ウマは市の任意団体「宮古馬保存会」が所有していますが、飼育は一般の農家に委託されています。しかし、その飼育費として市や日本馬事協会から出る補助金は、一頭あたり、合わせて月1万あまり。これではエサ代にも足りず飼育者たちは自腹を切りながらウマを育てています。市の担当課は1月の取材でこう答えていました。

宮古島市教育委員会 久貝春陽主事「飼養費として十分かというと飼養者の方たちに負担がかかっているというのは事実だと思いますので、そちらのものに関しては保存会としても事務局としても、そういう風に市の財政の方と調整しながら予算計上のほうをお願いしているところではありますね。」

先週、宮古島市議会の予算決算委員会に2019年度のミヤコウマ保存にかかる予算案が計上されました。予算額は、615万円。2018年度と比べると倍増しています。事務費は219万円と大幅な増額。そのうちの100万円あまりは、飼育環境が問題となった農家から引き取った馬の世話をする市の植物園の職員たちの賃金として支払われます。しかし、飼育者へ支払われる飼育費は、一頭あたり月5000円から6000円へとわずかに増えただけでした。

天然記念物ミヤコウマを守るために、求められる方策と課題

狩俣大輔さん「1000円アップじゃなにも足りない。別に儲けを求めていっているわけじゃないし、これだけ必要だという(エサ代)1万5000円、かかるというのをみんな言っているから、プラスマイナスゼロでいいのになんでそれができないかなって。」

1月には、日本馬事協会の関係者などが宮古島市を訪れ飼育者たちと話し合いを行いました。そこで提案されたのは、ミヤコウマの「活用」。調教をして、観光資源として活用しては、というものです。

狩俣大輔さん「結局多分、活用できないから金の無駄って感じですよね。」「それ(活用)をできる環境を作ってくれないと、それもできないし勝手にやってくださいはおかしいよね。俺らの馬じゃないから話が違いますよね、それは。」

天然記念物に指定されている馬の飼育を全面的に市民に委託している自治体は全国で宮古島市だけといっても過言ではありません。

ミヤコウマと同じ時期に保存活動が始まった与那国町の天然記念物、ヨナグニウマの場合はどうなんでしょうか?18年前からヨナグニウマの保存、活用に関わっている中川さん。現在は南城市で、ヨナグニウマと触れあえる牧場を開いています。

社団法人ヨナグニウマ保護活用協会 中川美和子 代表理事「ヨナグニウマは集団放牧っていうのが主流なんです(ヨナグニウマ)保存会の方たちの馬はみんなそこに入っていて、そこで自由繁殖という感じになっていますので、あまり人の手がかかっていない」

天然記念物ミヤコウマを守るために、求められる方策と課題

ヨナグニウマの保存にかかる補助金は日本馬事協会から支給されるおよそ60万円のみ。与那国町からの補助金はありません。放牧をすることで費用を抑えたり馬を活用したりしながら、島の人たちが主導して必要な資金を集めてきました。

「ヨナグニウマはもともと行政のバックアップっていうのがほとんどゼロのところから始めているので。」「自助努力っていう感じでやってきたというところがあります。」「土地があったら(放牧は)すごく有効だと思いますし。宮古も景勝地とか草がいっぱいなところにはなしたらいいんじゃないかと思うんですけど。」「ただ宮古馬を活用しろって強制することはできないし」「馬って専門性が高かったりするので、調教するにもいろいろ知っている方が調教して、そういう方をうまく取り入れて安全でかわいい馬づくりっていうのをやってから(将来は)観光資源にっていうことが大事かなと思うんですけど。」

そんななか、この牧場では、生後一カ月半の子馬可愛がられていました。今週も新たな命が誕生し、出産ラッシュを迎えています。荷川取明弘さん「(Qどんな性格ですか)やんちゃ。やんちゃ坊主。」

長年、ミヤコウマを飼育してきた荷川取さんは、ウマの活用に、複雑な気持ちを抱いています。

荷川取明弘さん「お客さんから乗馬をやってお金をもらうのが活用と考えている人が多いんだけど、自然学習っていう形でやることも活用だし、歳を取った方が毎日来ている人がいるんだけど、見てるだけで気持ちが癒されると。これも立派な活用じゃないかなと思う。」

天然記念物ミヤコウマを守るために、求められる方策と課題

世界中どこを探しても宮古島にしかいないミヤコウマ。現在、その数はおよそ40頭。それをどう守っていくのか、課題をひとつひとつ乗り越えていかなくてはいけません。ミヤコウマは40年かけて42頭になった。遅すぎるペース。

ミヤコウマ保存会は100頭を目指して増やしていくと言っているが負担の大きさから繁殖を控える農家も多く、このままの支援体制では増やすことは難しい。活用の前に、しっかりと栄養がとれるような十分なエサ代、健康に暮らせる厩舎の設置が必要。今はそれも不十分。観光資源としての活用はそれができてからの話。