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アメリカ軍の再編計画にも基づき、軍用地の返還が本格化している韓国。ところが、大きな問題が浮上しています。

2007年の4月と5月に返還されたアメリカ軍施設23カ所のうち22カ所で、化学物質による土壌や地下水の汚染が見つかったのです。

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また去年5月、慶尚北道ウェガン村にあるアメリカ軍の補給基地、キャンプ・キャロルで明らかになった環境汚染は大きな社会問題になりました。

1978年にこの基地で設備オペレーターとして働いていた男性が枯れ葉剤とみられる物質を大量に埋めたと証言したのです。

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スティーブ・ハウスさんの証言「私たちはヘリパッドの裏に大きな穴を掘るように命じられ、そこにオレンジ色の線が引かれた、緑色のドラム缶を埋めました。ラベルには化学薬品オレンジ、1967年ベトナムと書かれていました。」

しかし真相究明には大きな壁がありました。韓国はアメリカと地位協定を結んでいるため、自由に基地内に立ち入り、調査することができなかったのです。

また沖縄とも違う、住民たちの複雑な感情もありました。北朝鮮との関係が緊張状態にある韓国。「アメリカ軍は自分たちを守ってくれる存在」と考える人も少なくないのです。

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ウェガン修道院 コウ・ジンソク神父「韓国で米軍に対して問題を提起するのは、国益を損なうという考えがあり、人々は口を開かないのです。」

しかし枯れ葉剤の問題については、その深刻さから世論の反発が広がりました。

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この地域で活動する市民団体のメンバー、キム・ソヌさんはおよそ60の市民団体とともに真相究明対策委員会を設置し、基地内に入れない代わりに、基地の周辺での調査に踏み切りました。

真相究明対策委員会 キム・ソヌさん「真相究明対策委員会が、基地周辺の住民の健康調査や、周辺の土壌や地下水の調査などを専門家を招いて行いました。」  

こうした中、韓国、アメリカ両政府は異例の対応をとります。

2000年以降相次ぐアメリカ軍による環境汚染や事件、事故に韓国国民の怒りが増す中、枯れ葉剤の証言が報じられて8日後には合同調査を始めたのです。

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真相究明対策委員会 キム・ソヌさん「これは今までになかった対応の速さで、2000年以降、韓国内で反米感情が高まりつつあったし、この問題をこのままにしておくと米軍にとって不利という判断をしたのだと思います。」

調査を始めて、およそ4カ月後、韓国、アメリカの合同調査団は基地内の地下水から枯れ葉剤の成分を検出したと発表しました。事実上、枯れ葉剤が存在していたことを認めたのです。

一方、沖縄では。去年、韓国と同じように基地内で枯れ葉剤が使用されていたという退役アメリカ軍人の証言が複数出されましたが、いまだに調査はされていません。

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実は1973年の日米合同委員会の合意では日本政府が汚染場所を視察し、水や土壌などのサンプルを入手できると記されています。しかし日本政府は、アメリカ軍から「枯れ葉剤の使用を裏付ける記録は見つかっていない」との回答を得るとそれ以上追及していないのです。

キャンプ・キャロルの真相究明対策委員会は枯れ葉剤問題はまだ解決していないと話します。

対策委員会が基地近くの住民およそ60人を調べただけで10代、20代の若者2人が白血病などにかかっていること、過去10年以内に2人が白血病で亡くなっていたことがわかりましたが、政府の調査団は「キャンプ・キャロルの汚染は健康被害が出るほどのものではない」と説明し、幕引きを図ろうとしているのです。

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真相究明対策委員会 キム・ソヌさん「韓国政府も米国の顔色を伺うのではなく、国民の安全と健康を第一に考えるべき。米軍に対して枯れ葉剤に対する責任ある調査、発掘調査を要求すべきだ。」