※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

ここからは早わかりビズです。りゅうぎん総合研究所の研究員にお越しいただいて県経済の動きをわかりやすく解説いたします。きょうの担当は我謝 和紀(がじゃ かずき)さんです。よろしくお願いします。

我謝 和紀 研究員「よろしくお願いします」

テーマはこちら「沖縄県内の空港グランドハンドリングの現状と課題」についてです。今回このテーマを取り上げるのは?

我謝 和紀 研究員「はい、皆さまは『グランドハンドリング』というお仕事はご存知でしょうか?空港でカウンター業務や飛行機の誘導、荷物の積み下ろしなどを担う業務の総称を指します。皆さまが空港へ来て出発するまで、また到着して空港の建物を出るまでをスムーズに行えるようにサポートします」

安全で快適な空の旅のために、なくてはならない仕事ですよね。

我謝 和紀 研究員「はい。実は、その『グランドハンドリング』を担う人材不足が全国的な問題となっています。沖縄にも同様な問題があるのではと考え、県内の主要空港である那覇空港、新石垣空港、宮古空港のグランドハンドングの実態を調査しました。

観光客が多い沖縄ではかなり影響あるのでは?

早わかりビズ「沖縄県内の空港グランドハンドリングの現状と課題」ビジネスキャッチー

我謝 和紀 研究員「はい。沖縄県内の各空港の旅客数は、コロナ禍の落ち込みを経て観光需要の回復により急激に増加しています。これらの空港を利用すると『いつも混雑しているな』と感じられる方も多いと思います。特に那覇空港の旅客数は多く、2023年度の旅客数は全国で6番目となりました。これは今のターミナルがつくられた当時の想定の1.5倍となっていますまた、旅客ターミナル1平方メートルあたりの旅客数は、羽田や成田などの旅客数が多い空港と比較しても高く、那覇空港の混雑具合は国内の中でもトップクラスです。その一方で、グランドハンリングを担う従業員は、コロナ禍を機に人手不足が続いているんです」

という事は、我謝さんがおっしゃった空港をスムーズに利用することが難しくなっているという事でしょうか?人手不足の原因はなんでしょうか?

早わかりビズ「沖縄県内の空港グランドハンドリングの現状と課題」ビジネスキャッチー

我謝 和紀 研究員「はい。コロナ禍の旅行需要の減少から、航空業界は大きな打撃を受けました。景気に左右されやすい不安定な業界だというイメージがつき、全国的にグランドハンドリング従業員の離職が進みました。その後、採用活動を強化し、県内の主要空港の従業員数は2024年度までにコロナ前の9割程度は戻ったのですが、旅客数の急激な伸びと比べて、まだ足りていないという状況にあります。また、新卒採用の若手が増えており、その育成や定着も課題となっています」

なるほど。従業員の確保には、働きやすい環境も大事ですよね。空港はすでに手狭で働くグランドハンドリングを担う従業員にも影響がある?

我謝 和紀 研究員「今回の調査にあたり、各空港の視察やヒアリングの結果、職場の『執務スペースや休憩室が手狭』『従業員駐車場が足りない』などの実態がわかりました。また、駐機場での業務や手荷物・貨物業務は夏場の猛暑で熱中症のリスクがあるなど、厳しい労働環境にあります。増加する観光需要の受入体制の整備の一つとして、こうした従業員の労働環境の改善が欠かせません」

早わかりビズ「沖縄県内の空港グランドハンドリングの現状と課題」ビジネスキャッチー1

これからの夏休みやお正月シーズンなど、空港利用者が集中することも増えると思います。早急に職場環境を改善する対応などは考えられているのでしょうか?

我謝 和紀 研究員「2023年に、国土交通省による『持続的な発展に向けた空港業務の在り方検討会』やグランドハンドリングを担う民間事業者等で構成される『空港グランドハンドリング協会』といった協議会が立ち上がり、グランドハンドリング業界の発展に向けた取り組みが行われています」

具体的にはどんな事が行われているんでしょうか?

我謝 和紀 研究員「民間の『空港グランドハンドリング協会』が示したアクションプランでは『雇用を増やして人手を増やす』『離職を減らして人手を減らさない』『DX化などにより省力化していく』この3つを目指して取り組んでいて、一定の成果が出始めています」

国や民間事業者の取り組みに加えて、今回りゅうぎん総研が提言するのはどういったことでしょうか?

我謝 和紀 研究員「はい。沖縄県のグランドハンドリングの発展に向けた提言は2つです」

「1つ目は「官民連携による機動的な協議体制の整備は」です。『行政』や『観光関連団体』『航空会社』、そして空港を運営する『空港ターミナル会社』等による機動的な協議体制の整備が必要だと考えています。グランドハンドリングに携わる従業員の労働環境改善のために 定期的に協議をする体制を整えて、その協議内容を公開して県民全体で空港の課題に向き合う事が重要だと考えます」

「そして2つ目は『補助金などの行政支援の拡充』です。国土交通省が活用を呼びかけている補助金は、地方空港が人材確保や人材育成の他、業務効率化や職場環境の改善など多角的な観点で活用が出来ます」

スタッフの休憩室問題などこの補助金が活用出来そうですね。

早わかりビズ「沖縄県内の空港グランドハンドリングの現状と課題」ビジネスキャッチー

我謝 和紀 研究員「そうですね。また、国の補助金に加え、県としても補助金の拡充やグランドハンドリングの支援策を検討する必要があると考えます。那覇空港を始め県内の空港は、働く人たちが厳しい労働環境の中での業務を強いられていることが判りました。空港を利用する観光客はもちろんの事、私たち県民も安心してトラブルなくスムーズな利用が出来るよう空港の機能強化はマストですね」

我謝 和紀 研究員「沖縄では『世界に開かれたゲートウェイ』を目指し、官民連携の『GW2050 PROJECTS 推進協議会』が設立され、那覇空港の機能強化等が議論されています。将来の機能強化はもちろんですが、足元における空港機能の現状を把握し、その大部分を占めるグランドハンドリング業務の支援を県全体で早急に検討していく必要があると考えます」

きょうはりゅうぎん総合研究所の我謝さんにわかりやすく解説していただきました。ありがとうございました。ここまで「早わかりビズ」ビジネスキャッチーでした。