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シリーズでお伝えしている「沖縄と自衛隊」です。きょうは、多くの紛争を取材してきた、報道写真家・石川文洋さんがレンズを通して見た、南西シフトについてお伝えします。

那覇市出身の石川文洋さん。ベトナム戦争では戦火にさらされる現地の人たちとアメリカ軍の出撃拠点となった沖縄の両方を取材しました。自衛隊配備が進む先島地域も取材で訪れたという、石川さんは、南西シフトをどう見たのでしょうか。

石川さん「戦争になれば民間人が犠牲になる。政府や軍隊は民間人のことを考えない。それを私は実際見て、写真を撮ってある」

沖縄と自衛隊(19) 報道写真家と南西シフト 沖縄が再び戦争の加害者に?

那覇市出身の報道写真家・石川文洋さん。ベトナム戦争のほか、アフガニスタンやボスニアなど戦地で取材を重ねました。

石川さん「前ここでよく、ござを引いて宴会をしたんですよ」

石川さんが住むのは、諏訪湖を望む長野県諏訪市。沖縄へもたびたび通い、基地の取材も続けています。

石川さん「沖縄にいるよりも、こちらにいるから。2階から長野の諏訪湖を見ながら、いつも沖縄のことを心配している」

沖縄と自衛隊(19) 報道写真家と南西シフト 沖縄が再び戦争の加害者に?

1972年の沖縄の本土復帰当日、石川さんが撮った写真。子どもたちが黒板に書いた文字では、日本軍と自衛隊が同一視されていました。あれから51年が経ち、先島を中心に自衛隊強化が続く現状を石川さんは、どのように見ているのでしょうか。

記者「与那国の写真もありますか」石川さん「与那国ですね」

今年、自衛隊の取材で与那国島と石垣島を取材で訪れたという石川さん。与那国駐屯地を撮影中、隊員から声をかけられたといいます。

石川さん「与那国では担当者が、すぐ来た。なぜ(写真を)撮っているのか。本土とやっぱり警戒の度合いが違うなということを感じましたね」

自衛官「メディアの方ですか」「会社はどちら」

沖縄と自衛隊(19) 報道写真家と南西シフト 沖縄が再び戦争の加害者に?

QABのクルーも以前、与那国駐屯地前で撮影していると同様に、声をかけられました。その時、石川さんは声をかけてきた隊員と、対話を試みました。

石川さん「私はベトナム戦争を取材してるから。自衛隊の人よりは先輩のつもりでいるわけですよ。沖縄に生まれ、実際戦場取材してるから。そういう話をですね、自衛隊の人と直に話し合いたかったんですね。そうした話であれば、本庁を通してくださいと、結局話せなかったんですけどね」

与那国島の自衛官に話したかったというベトナム戦争。石川さんは現地のほかに、ベトナムへB52爆撃機が飛び立った嘉手納基地でも撮影を続けました。

沖縄と自衛隊(19) 報道写真家と南西シフト 沖縄が再び戦争の加害者に?

石川さん「ベトナムで私は4年間行って目の前で、見てるわけですよ。B52が嘉手納基地を飛び立っていきます。間接的ではなくて、沖縄が直接の出撃基地になっていた」「B52が爆弾を落とす。嘉手納基地から飛んで行って」「爆弾で破壊された建物や、負傷した人を私は撮影しています」

一方で、ベトナム戦争当時の沖縄のことを表現したあの象徴的な言葉には異を唱えます。

石川さん「悪魔の島というのは一度も聞いたことないです。現地で」「沖縄から直接B52は飛んできてるけど、沖縄ではベトナム戦争に反対をしてる人たちはいるんだっていうことは(ベトナムの人々は)理解してましたね」「だから政府と民間人と軍隊を分けて考えていた」

沖縄と自衛隊(19) 報道写真家と南西シフト 沖縄が再び戦争の加害者に?

銃声と爆音が鳴り響く戦場で取材にあたっていた石川さん。居を構える長野県の陸自松本駐屯地での取材で、ギャップを感じる場面に出くわしたといいます。

石川さん「ベトナムから帰るときに、香港によって香港でちょうどお正月でですね、爆竹が鳴ったときは本当に怖くなってですね、どっか隠れようと思ったぐらいです」「松本の自衛隊基地。機関銃を撃つと拍手が起きた。そういう違いが、その人たちを批判するんじゃなくて、私は年代を感じました」「戦争が終わって、70年以上が過ぎて。戦争の悲劇というものが、もう記憶が遠くなってるわけです」

南西シフトとして、先島地域の自衛隊配備も行われてきた中で、政府は辺野古新基地建設も強行しています。

石川さん「基地が利用されて、またベトナム戦争のように、どこかの民間人が殺されてはいけない」「もし、ベトナム戦争当時ですね。ベトナムにそういう(反撃する)力があってその気があったら、沖縄が攻撃されてもですね、仕方がない」「戦争になれば、やはり相手・敵の中心になってる場所を攻撃する」「こんどは、仮想敵国としてどこか(国)を挙げれば、そこは力がありますからですね、沖縄を攻撃する」「だから私は非常に心配してるんだ」

沖縄と自衛隊(19) 報道写真家と南西シフト 沖縄が再び戦争の加害者に?

沖縄からアメリカ軍が出撃し、ベトナムで人々の命を奪うさまを目の当たりにしてきた石川さん。石川さんがファインダーでとらえ続けた戦場や基地の姿は、沖縄の基地がまたもほかの国の人々の命を奪い、報復の連鎖を生む危険性を、私たちに伝えています。

ベトナム戦争で出撃基地になった沖縄の人たちが、戦争に反対していたことをベトナムの人たちは知っていたと話していました。政府が戦争に踏み切ったとしても、民衆が反対していくことは報復の連鎖を断ち切るためにも、必要なことだと感じました。

石川さんは戦場の取材で記録した実態を若い人たちに語り継ぐために活動を始めていて、来年3月には県内の大学生と、ベトナムで平和研修を行う予定とのことです。