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政府が南西シフトとして進める自衛隊配備や有事の問題などを考える「沖縄と自衛隊」です。きょうは、台湾有事の懸念などを踏まえて、必要性が議論になっている「シェルター」に関するリポートです。

先島地域を中心に、有事の避難場所になるシェルター設置について、国も関連費用を計上するなど、動きが活発になっています。そこで、そもそもシェルターとはどういったものなのか、現物を取材してきました。

川嶋事務局長「こちらが厚さが200ミリ、20センチ。重さが1トンある。これで爆風ですとか、熱。そうしたものを遮る。コンクリート製で非常に重い扉になります」

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

茨城県つくば市の住宅街の一角にある地下施設。核兵器の攻撃にも耐えうるという「核シェルター」のショールームです。

シェルターの広さは、およそ53平方mで7人用。核シェルターが普及しているスイスの基準をもとに、核攻撃後の残留放射線が1000分の1に減るといわれる2週間が経過するまで、避難することを想定しています。

川嶋事務局長「有事になったときに、これをこちらに付け替えて、ガスフィルターを通し、汚い空気をいったんここできれいにし、室内に送り込む流れになりますね」

シェルター内には放射線や毒ガスなども浄化できる機械も取り付けられていました。

シェルターのモデルルームを設置しているのは、日本核シェルター協会。2003年以降、全国の建設関係の業者が参加し、日本での核シェルターの基準作りなどに取り組んできました。去年、ロシアのウクライナ侵攻が起きてから、政府関係者や自治体なども含めて、問い合わせや視察が急増したといいます。

先月には、県内からも建設会社2社の参加申し込みもありました。

池田理事長「北方領土に関して日本もロシアに接している。侵略、日本国民も思ったのではないか。対岸の火ではないと」

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

協会の池田時浩(ときひろ)理事長も、ロシアのウクライナ侵攻の影響の大きさを強調します。

池田理事長「ウクライナでも地下に避難している。いきなり核戦争にならないとは思うが、通常兵器での攻撃というのは、あると思う。その時に地上の建物は、やはり破壊されるリスクがある。(避難施設は)作るなら地下に作った方がいい。どうせ作るなら、地下に、核兵器に対応できるシェルターを配備すべき」

県内でも、台湾有事を念頭にシェルターに関する動きが活発化しているのは先島地域です。政府は先島地域でのシェルター整備の調査費として、来年度予算に1億2千万円を要求に盛り込む方針を固めました。

木原防衛大臣「避難施設の整備・普及は、武力攻撃事態から被害を防止するのみならず、武力攻撃の抑止の観点からも重要」

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

就任後、初めて沖縄を訪れた木原防衛大臣も石垣島での会見で、シェルターの必要性を強調しています。

糸数与那国町長「欲を言えば全戸・全家庭に(シェルターは)必要でしょうよ。だが土台無理」「町民の心のよりどころ、最後の砦。(町役場)庁舎建設、同時に最低限、シェルター機能を果たせるような頑丈なものを作りたい」

そう語る糸数与那国町長は7月、政府に庁舎建て替えに伴うシェルター設置への支援を要請していました。糸数町長は同時に、有事の住民避難の体制作りも訴えます。

糸数与那国町長「(有事に)シェルターの中で、町民を閉じ込めるっていう(考えは)これっぽっちもない」「どうしても(島を)離れられない方のためのシェルター。あるいは避難が間に合わなかったときのシェルター」「本当に危ないっていうときは、その前に島から安全な場所に避難させることが重要と思う」

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

佐藤教授「今のシェルター・避難壕に関する議論は。どこまで本気で何をするのか。言っている側(の政府も)も分かっていないと思う」

一方で、沖縄国際大学の佐藤学教授は実現性に疑問を呈します。

佐藤教授「核戦争でないとしても、シェルターを作るとなったら、このくらい堅牢・強固な構造が必要であると。それから水や食料も備蓄しておかなければならない」「人口が(与那国島より)もう少し大きい宮古島や石垣島で準備できるのか。さらに沖縄島でこういうことは準備できるのか」

また、佐藤教授は先島地域だけにこうした議論が集中しているいびつさを指摘していました。

佐藤教授「台湾有事に関して軍事緊張が高まってそれに備えなきゃいけないという議論が沖縄に限定している。あるいは沖縄島から見たときに、宮古島・石垣島・与那国島に限定させている」「シェルターの建設を準備・要求する。国民保護計画で避難計画をきちんと整備する。でどうなるか。これは『戦争しても大丈夫』という体裁を作るだけではないか。戦争を止める話ではない。『ミサイルが飛んできても大丈夫』と。大丈夫なわけはないのに『大丈夫だ』と装いを持たせることだ」

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

一方、シェルターの整備を訴えていた人たちも、このように吐露していました。

日本核シェルター協会・池田理事長「核シェルターなんて、ない世界が一番いいと思っています。地震も津波も戦争もない。そういう世界が一番理想」

糸数与那国町長「一番大事なのは、シェルターを使わないで済む状況を作り出す外交努力だ」

ロシアのウクライナ侵攻や台湾有事の懸念も踏まえて、必要性が議論されているシェルター。戦争に備え、戦時下に暮らすことを、現実的な問題としてとらえられるかが、問われています。

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

塚崎さんは取材してみてどう感じましたか。

塚崎記者「私も核シェルターの中に入ったんですが、つくりは非常に堅牢で、この中に入っていれば安心感は得られるだろうなと感じました。」「ただ、戦争で核兵器の使用の有無は別にしても、有事の中で一定期間をシェルターの中で耐え忍んで、外に出られたとして、その後、破壊し尽くされた地域でどのように生きていけばいいのか、想像すると、正直、イメージがつきませんでした。」

そのシェルターですが、先島地域を中心に議論になっていますね。自治体や政府はどのように動いているのでしょうか。

塚崎記者「今回取り上げた与那国町以外にも、石垣市や宮古島市で市長から松野官房長官に要請が行われています。」

石垣市は避難シェルターや食料の備蓄などについて、宮古島市は改築する体育館に緊急時の避難施設を併設する形で、それぞれ国に支援を求めています。

一方の政府側は、来年度の予算計上で、先島地域の公共施設に爆発に耐えられる扉や非常用電源を設けるなど、シェルター機能を持たるための適地調査の費用などを計上する予定をしています。

沖縄と自衛隊(15)台湾有事とシェルター「備え」の意味と必要性とは?

台湾有事などを踏まえ、万一への備えは必要との思いもある一方で、シェルターを作ることで本当に命を守れるのか、難しい問題だなと感じます。この問題に、私たちはどのように向き合えばいいのでしょうか。

塚崎記者「シェルターについての議論の本質は、戦争に巻き込まれることを、現実的な問題としてとらえ、何が起きるかイメージできるか、ということだとおもいます。」

「今、ロシア軍の侵略行為にさらされているウクライナの状況を、私たちは映像を通してこうしてみているわけですが、78年前の沖縄戦では、軍民混在の中で、県民が身を隠したガマで集団自決など多くの悲劇が起きています。」

「万一に備えることが重要というのは、確かにその通りですが、その万一が起きないようにする方策を、考えることを放棄してはならないと思います。」

ここまで、塚崎記者でした。