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「文化の秋」を彩るのは島の伝統工芸品・やちむんです。週末開催された「壺屋陶器まつり」には3日間で実に1万2千人が訪れました。まつり最終日となったきのうは、戦前から地域に伝わる陶工たちによる催し「カーミスーブ」が会場を沸かせました。

ろくろを挽く陶工の手によって見る見るうちに器の形ができあがっていきます。粘土の塊がまるで生きているかのようです!しまくとぅばで「甕・勝負」を意味する「カーミスーブ」は与えられたテーマの作品をいかに早く美しく作れるか競うものです。陶器まつりの最終日に行われるメインイベントで、壺屋の秋の風物詩となっています。

壺屋陶器事業協同組合 島袋常秀 理事長「工房で一人で 割と静かな所でろくろを挽くのと色んな人が見ている観衆の場で挽くのは全然気持ちが違う、手が震えたり形が少し変わってしまったりするのでそういう意味でもひとつの肝試しみたいになる」

陶工たちの技を競う!壺屋伝統「カーミスーブ」

今年は18人の職人が出場して火花を散らします。ルールは単純明快!赤と白の2つのチームに分かれてリレー形式で行われます。出番が後ろの人になるにつれてつくる器が大きくなって難易度が上がるため前半に若手、後半にベテランが登場します。

陶工歴31年 赤組(幸陶器)赤嶺肇幸さん「技術にのっとって早いだけではなく、きれいに丁寧に作るというのがカーミスーブの本来のあり方なのでそこをきっちり守っていきたい。それで完全勝利したい」

陶工たちの技を競う!壺屋伝統「カーミスーブ」

陶工歴32年 白組(陶藝玉城)玉城望さん「職人同士の競い合いなので負けたら悔しい面もありますから、できるだけ負けないように頑張るというだけ」

仕上がった作品は5点満点で評価されチームの合計得点で勝敗が決まります。

陶工歴32年 白組(陶藝玉城)玉城望さん「同じ壺屋焼でも職人によってちょっとずつ手の癖が違うから、こういう機会に見られるのは勉強になるというか」

陶工たちの技を競う!壺屋伝統「カーミスーブ」

陶工歴31年 赤組(幸陶器)赤嶺肇幸さん「こけないように頑張りたいと思う。最後持っていくときに転んだりするので」

選手宣誓・声を合わせて「がんばります~」

そして、いよいよ…

壺屋陶器事業協同組合 島袋常秀理事長 実況解説「準備オッケー?それではスタート!」3寸の皿を2枚挽きます。

カーミスーブが始まりました。トップバッターのお題は直径9cmほどの皿を2枚つくることです。作品が仕上がると、15mほど離れた机まで運びます。そしてろくろの前に戻り、次のメンバーのために作業スペースを整えてバトンタッチです。

陶工たちの技を競う!壺屋伝統「カーミスーブ」

島袋常秀理事長実況解説「中に内ゴテといって(湯呑の)中のへこみを綺麗にする道具がある、大橋さん(赤組)は柄ゴテを使って(白組の)渡邊さんは使わなかった」

いかに早く仕上げるか時間も大切ですが陶工たちには丁寧な仕事が求められます。戦前から壺屋の陶工たちは、普段とは異なる環境で自らの技術を試してきました。集まった観客も、普段なかなか見られない職人技を実況とともに見学できるとあって職人の手を真っすぐ見つめます。

観客・男の子「お皿の形がちゃんと整っていてすごいと思った」

観客・女性「こんな短時間であんな格好いいものが仕上がるんだとびっくりした」

いよいよアンカー対決!最後のお題は沖縄独特の大らかな形状が特徴的な「嘉瓶(ゆしびん)」です。これまでのもの以上に繊細な力加減が求められます。

陶工たちの技を競う!壺屋伝統「カーミスーブ」

壺屋陶器事業協同組合 島袋常秀理事長 実況解説「最後糸で切って修さん(赤組)の嘉瓶あがりました~~」

「早さ」を制したのは赤組ですが、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか…

審査委員長 現代の名工 島袋常栄さん「今、点数は一緒、47点と47点。最終的に審査員が物を見て決めますから」

な~んと同点です!作品をじっくりと見た審査員長が出した答えは…

審査委員長 現代の名工 島袋常栄さん「現物見たらやっぱり同じくらいですよ。今回は引き分けとします」

今年はカーミスーブ史上、恐らく初となる引き分けでした!両チーム、うれしくも悔し気な表情を浮かべながら、互いの健闘をたたえ合います。

陶工たちの技を競う!壺屋伝統「カーミスーブ」

陶工歴31年 赤組(幸陶器)赤嶺肇幸さん「ちょっと悔しい。勝ちたかったです。」Q来年は?「勝ちます」

陶工歴32年 白組(陶藝玉城)玉城望さん「良かったです、僕のせいで負けなくて良かったです」「来年もし同じ喜瓶を挽くのならもうちょっといい形作ろうかな、練習しておきます」

一大イベントを終えた直後にもかかわらず、陶工たちはもう闘志を燃やしていました。

女の子2人「楽しかった!すごかった」「お皿を作ってみたいです」「実際に作ったことはあるけどヒビが入ったりして難しかったから職人さんたちはすごいと思った」

壺屋の伝統・カーミスーブ!熱き思いは途切れることなく、歴史が紡がれていきます。