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まずはこちらの映像をご覧ください。女性が板状の物の上に乗っています。反動をつけたことで弾みましたね。実は世界中探しても沖縄にしかない物なんです。開発するために沢山の情熱がそそがれていました。きょうの特集は、この弾んでいる板に注目しました。この物体の正体に気づきましたか?日常の至る所に使われているものなんです。

渡久山設計・運天勲社長「やはり一番びっくりしたのは薄い、薄くて弾力性があるということに非常に驚きましたね。」

HPC沖縄・阿波根昌樹さん「沖縄発、世界初のコンクリート。」

弾力性のあるコンクリート!?世界初の技術で広がる未来

実はコンクリートなんです!その名もハイブリット・プレストレスト・コンクリート、通称HPC(エイチ・ピー・シー)。沖縄生まれで世界初の技術が詰め込まれています。コンクリートというと、固いけど分厚くて重いというイメージがありますが、HPCは従来のイメージを覆す代物なのです。

阿波根さん「薄いコンクリートっていう、今まで見たことがない、世界にもないのかも知れない。世界にないのであれば、自分がもう作っちゃった方がいいかな。」

阿波根昌樹さん。このコンクリート、HPCの産みの親です。ないものは自分で作る!そんな阿波根さんの大胆な発想が、薄くて軽いうえに強靭という特徴を兼ね備えたHPCの開発を可能にしました。

今までのコンクリートは、なかに鉄筋を埋め込み強度を保ちます。ただ鉄筋が、空気や水に触れるとさびて劣化し、強度が下がるため、それを防ぐためにどうしても分厚くなっていました。また、沖縄を襲う台風による塩害はコンクリートの敵でもあります。

阿波根さん「HPCはコンクリートの弱点をカバーする。」

なんとHPCは塩害とは無縁なんです。鉄筋ではなくカーボンワイヤー、いわゆる炭素繊維をねじり合わせた素材を使うことで錆びないようにしたのです。

弾力性のあるコンクリート!?世界初の技術で広がる未来

阿波根さん「これがカーボンワイヤーで、テンションを引っ張っています、そこにコンクリートが、ファイバー入りのコンクリートが打設(流し込む)。これが固まれば、カーボンワイヤーはテンションが入っていますので、切ってしまいます。切ることによってカーボンワイヤーが縮もうとする力を利用して、コンクリートの強度を高めます。」

簡単に言うと、ゴムの両端を引っ張り中心に力を加え、離すとゴムは元の状態に戻る。それと原理が一緒なんです。

さらに独自の開発を加えて強度を増すことができました。実際の強度テストで確認すると、繊維が入ってないコンクリトートと入っているコンクリートでは一目瞭然の結果になってます。

渡久山設計・運天勲社長「錆びないという話を聞いた時には、ちょっとびっくりするぐらいの驚きがありましたね。」

一級建築士で渡久山設計の運天勲(うんてん・いさお)さん。HPCの魅力をよく知る1人です。設計やデザインで数々の賞を取った琉球銀行牧港支店は、渡久山設計が設計しました。この建物は緑と木のぬくもりを強調しながら、軒下で人々が集える場所をイメージした造りになっていて、屋根の大きさがひときわ目を引きます。

運天社長「大きな屋根がありますね、それがほぼHPCですね。」

弾力性のあるコンクリート!?世界初の技術で広がる未来

HPCは厚さがたったの4センチ。従来のものより厚みが半分ほどになっています。最先端のデザインには欠かせない存在となっています。

運天社長「このHPCの特性としては、まず薄くて軽い。そして靭性(じんせい)。靭性というのは壊そうとする力に対して抵抗する力あるいは粘りですね。それが非常に高い。コンクリートと思われない、すごいシャープな軽快なデザインが出来ました。」

HPCを使うことで建物の軽量化に繋がり、建物コストを抑えられるというメリットがありますが、建築家にとって塩害を気にしなくていいというのが最も嬉しい部分だと断言します。

運天社長「まず塩害がないということは朽ちることがない訳ですから、永久に半永久的に使えると思います。それがクリアできたということによって、いろんなところで色んな場所、建築だけでなくて土木、あるいはそれ以外のもの全然考えられてない部分にですね、使えるような状況になるのではないでしょうかね。」

無限の可能性を秘めていると建築家を唸らせたHPC。産みの親・阿波根さんはすでに海の中で使うことを考えていました。

阿波根さん「いまだに海底都市というのは実現していない。その理由は何かなと思うとやっぱり海に使える建材がない、そういうことも一つ理由じゃないかなと。有効に海が使えれば、非常に新しいビジネスが生まれてくるのではないか、その一つの役割というか、起用できるような建材に育てばいいかなって思っております。」

弾力性のあるコンクリート!?世界初の技術で広がる未来

阿波根さんは海底都市の構想だけでなく、開発途上国の開発にも役立たせたいという未来予想図を描いています。情熱が尽きることはありません

阿波根さん「常に挑戦しているんですよ。映画ではないけど、次はどうなるのだろうよいうようなワクワク感が起こるような形でHPCを展開させていきたい。」

落ち込むことを考えない、ネガティブにはならない、いつも前を歩きポジティブに生きる。阿波根さんの可能性はまだまだ続きます。

阿波根さん「歴史に残るようなことをやれればいいかな。お金では買えないプライスレスのような、そういうものを目指す。普通はお金持ちが目指すのですが、お金がなくてもプライスレスを目指す。」