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Qプラスリポートです。沖縄国際大学にアメリカ軍ヘリが墜落した事故からきのうで15年。事故で浮き彫りとなったのは、不平等な日米地位協定の壁でした。アメリカ軍は世界各地に駐留していますが他の国との比較で見えてくるものがありました。

2004年8月13日、アメリカ海兵隊のCH53大型輸送ヘリコプターが、沖縄国際大学の敷地内に墜落し炎上。現場は基地の外にもかかわらず、即座にアメリカ軍が占拠しました。

「どんな場所であってもアメリカ軍の財産について日本は捜索、差押え、または検証する権利を持たない」という日米地位協定の壁が立ちはだかりました。あれから15年。

沖国ヘリ墜落15年 日米地位協定と他国比較

岩屋防衛大臣(7月25日会見)「今回の改正は、沖縄県東村高江でのCH53の緊急着陸、炎上事故対応における課題などを踏まえまして、日米両政府による一層効果的な対応が可能となるよう、日米間で合意に至ったものでございます」

この沖国大の事故をきっかけにできた、アメリカ軍機が基地の外で事故を起こした時の対応などを定めた、地位協定に関連するガイドラインを、日米両政府は先月改定。

これによって、アメリカ軍機の事故が起きた際に、日米の責任者の迅速かつ早期の制限区域内(内周規制線内)への立ち入りや、事故現場で環境調査を実施する場合、その結果を日米で共有することなどが明記されました。しかしこの改定に問題を投げかける専門家がいます。

沖縄国際大学前泊博盛教授「日本がアメリカの支配下にあることを示すためのガイドラインだと思います」

沖縄国際大学の前泊教授は、ガイドラインの改定に疑問を投げかけます。

沖国ヘリ墜落15年 日米地位協定と他国比較

沖縄国際大学前泊博盛教授「環境調査を行った際はその結果を日米合同委員会の枠組みで共有するって何?問題を共有してそれをどうするのか、汚染除去は誰がやるのか。これは沖縄県が調査した地位協定の各国の調査報告書の中でも、日本側がいかに国内法を適用していないかという、他の国がどうやって適用して対処しているかということが明らかになっていますけれども、こういうことからしても日本という国はどこまで主権を渡し続けるのかというやりとりが鮮明になった」

地位協定について県が4月に発表した、アメリカ軍基地のあるヨーロッパの国々での調査によると日本と大きく違うことがわかりました。

例えば日本の場合、今回政府が成果として強調した、米軍機が事故を起こした際の基地内への「立ち入り」について。改定後も日米の合意が必要という点は変わっていません。しかしドイツでは地方自治体の立ち入り権までも明記されているほかイタリアでは、基地はイタリア司令部の下に置かれ、司令官は基地のすべての区域にいかなる制約も受けず自由に立ち入ることができます。

また、「警察権」について。日本では基地の外でも日本の警察が捜索、差押え、検証を行うことはできませんが、ドイツでは事故の際にドイツ軍が現場の安全を保持し警察も規制線の中に入ることができた。イタリアでは事故の際イタリアの警察がフライトレコーダーなどの証拠品を押収し主体的に操作したと報告されています。

沖国ヘリ墜落15年 日米地位協定と他国比較

この背景には、米軍機による事故で国民世論や反米感情が高まった際に、ドイツは過去3回協定を改定、イタリアでは新たな協定を締結するなどして「国内法の適用を強化」してきた歴史がありました。

前泊教授は、「地位協定の改定」よりも、「国内法の適用」こそが必要だと指摘します。

前泊教授「シンプルに考えてほしいのは、地位協定は日本の主権を行使できないような取り決め。ですから地位協定を改定するのではなくて在日米軍に対して日本の法律を適用する、国内法の適用というのを基本的に考える、地位協定をなしにするというのが基本です。どうしてもだめな場合だけ、特例法を作るという形じゃなきゃおかしいと思います。基本的にアメリカの権利を抑えたうえで、一部で日本の国内法を適用しようというような、そういう無理が出てきているような気がします」

1960年の締結以来、一度も改正されていない日米地位協定。それに付随する補足事項の改定だけが本当に”前進”と言えるのでしょうか。