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Qプラスリポートです。渡嘉敷島で、30年にわたって、たった一人で漁をする83歳の男性を追いました。83歳の海人が語る言葉には深い人生の哲学ありました。

沖縄本島から西におよそ30キロの場所にある渡嘉敷島。人口およそ700人の小さな島です。島全体が国立公園に指定されているこの島は、きれいな海に囲まれ、多くの観光客も訪れます。そんな島に多くの島民が知る有名な男性がいました。

渡嘉敷島で出会った83歳の新里武光さん。おだやかな表情をした優しい男性です。そんな新里さんが見かけからは想像できない姿を見せる場所がありました。

ウエットスーツを身に着け、軽トラックを運転し、颯爽と漁港に現れた新里さん。

新里さん「これ着けて今から潜るわけ。」

これから漁をするという新里さん。漁をするには少し小さいようにも感じる船に乗り込み、一人で沖へと向かい、船を操縦します。船を走らせることおよそ10分。長年の経験をいかし、この日の潮の状況や風向きを考え、最初のポイントに到着。到着すると、さっそく潜る準備を始める新里さん。その表情は、陸とは違い、引き締まった表情です。

実は新里さんが行う漁は追い込み漁。新里さんも父親や周りの男性がやっていた関係で、若い頃から手伝いなどをしていましたが、25年ほど前から本格的に追い込み漁を始めました。83歳になった今でも、ほぼ毎日一人で漁に出ています。準備が整うと勢いよく海に飛び込み、いざ追い込み漁開始!およそ25分泳ぎ続け、船へと戻ってくると、引き上げた網には魚が。しかし新里さんは納得がいかない様子。

新里さん「きょう取れてる方じゃないですよ。(Q.この数でも全然満足いく数じゃない?)ないない、全然。全然満足いく量じゃないですよ。」

この日は少し海が荒れていたため、魚が少なかったそうですが、多い日は1日で合計40キロの魚を取ることもあるそうです。一度目の漁を終えると、次のポイントへ。陸では、おだやかな表情を見せている新里さん。漁の合間に、陸の上での姿からが想像できない様々な海の男の名言が飛び出しました。

次のポイントの水深はおよそ5メートル。潮の流れや風向きなどを計算して、網を仕掛けていきます。実はほかにも計算しているものが。

新里さん「この場所の魚はこの性格を持っている。またこの場所の魚は性格や習性が全然違うとか。その場所によって違うんですよ。全部これをマスターしないと取れない。」

渡嘉敷島周辺で、150か所の追い込み漁のポイントがあり、その場所ごとの魚の習性などをすべて把握し、漁を行っています。新里さんは、魚を見つけると素潜りで魚を目指して、潜っていきます。

新里さん「自分が魚を絶対に追い込むまでは、この魚がかかるまでは息がきれようがどうしようがという感じですよ。」

その言葉通り、魚を網に追い込むために何度も何度も潜り続けます。83歳にして、息継ぎをせずおよそ1分の間、魚を追いかけます。

この日、3か所で漁を行い、およそ30匹の魚を取った新里さん。この年齢まで続けてきた追い込み漁。これからも続けていくと話します。

新里さん「君は何歳までやるかと言われるけど、僕には年齢とかそういったのはないよ。やれるまではやります。もうできなくなったらやめますと。それまでは何歳までやるというのはない。限界は今のところないんですよ。できるまではやる。」

漁を終えたあと、取れた魚をさばいてふるまってくれました。ここでも海の男の名言が。

新里さん「僕は実をいうと魚は好きな方じゃないけど。」

新里さん「取ってきた魚を子どもたちとかが食べるときは、取ってきてよかったなと思うね。」