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辺野古の新基地建設に向け政府は4月25日、名護市辺野古の予定海域で石材の投入を始め、埋め立て工事に着手しました。翁長知事は会見で「重大な決意で対処する」と今後、訴訟に踏み切る考え示しました。

名護市辺野古の海上では厳戒態勢のなか、午前9時20分、海底を敷きならすための捨て石の投入が始まりました。投入された石は建設予定地の北西部に位置する護岸の基礎を造るもので、今後、護岸が完成すれば、その内側へ土砂が投入されることになり、新基地建設は大きな局面を迎えました。

埋め立て着手に県民からは「何とも言えない複雑な状況です」「沖縄いじめはもうやめて、できるだけ穏便に済ませてもらいたい」といった声が聴かれました。

一方、海上では工事に反対する人々が船を出して、着工に抗議したほか、ゲート前で座り込みの抗議を続けている人たちからも工事強行に批判の声があがりました。

工事に反対する人は「翁長さんと心共にして世論に訴えかけていくだけですよ」「現場と翁長さんと一つになって、日本政府がどんなに嫌なことしようとも私たちは心揺るがない」と話していました。

大量の石材や土砂が投入されれば、原状回復は事実上困難になるとみられ、埋め立て着手には新基地建設への反対意見が根強い県内世論にあきらめ感を誘おうという政府の狙いがあるものとみられます。

埋め立てに稲嶺名護市長は「ワジワジーして、到底許せるものではない。工事が強行されるというのは絶対にあってはならないこと」だと話しました。

政府が辺野古埋立着手 知事「重大な決意で対処」

また、翁長知事は「海域にですね、捨て石が入ったということは大変重大なことと考えておりまして、そのことに関して私たちも重大な決意でこれからいろいろ対処していなければいけないなとこのように考えています」と述べ、今後、訴訟に踏み切る考えを示しました。

一方、政府は会見で、菅官房長官が「埋め立て本体工事の開始は、多くの人々が望んできた普天間飛行場の全面返還を実現する確かなこれ一歩だというふうに思っております」と話しました。

県側が工事を止める打開策の模索を続けるなか、政府は埋め立て工事を計画の5年で終えるよう、工事を加速させていくことが予想されます。

ここからは基地担当の久田記者に聞きます。きょうはどんな工事だったのでしょうか。

政府が辺野古埋立着手 知事「重大な決意で対処」

久田記者「新基地を取り囲む護岸のなかでも、北西部に位置するK9護岸と呼ばれる部分の着工でした。VTRで波打ち際に置かれていたこの岩、これが護岸の基礎となる部分です。この岩で凹凸の激しい海底をならし、両脇からブロックで固めるなどして、全長およそ315mに及ぶ護岸を作ることにしています」

全体の工事のなかではどういう意味を持つのでしょうか。

政府が辺野古埋立着手 知事「重大な決意で対処」

久田記者「2つあると思います。まず1つは、工事の進捗に関してです。モニターをご覧いただきたいのですが、工事の進め方を見ますと、最初の1年は護岸を集中的に作る工程になっています。外枠を囲ってから、内側に一気に土砂を投入するわけです。護岸が出来て以降は、2年後でこのように、内側の半分ほどが埋まり、4年後にはすべての区域で土砂が入ってしまいます」

政府が辺野古埋立着手 知事「重大な決意で対処」

久田記者「もう1つは『印象付け』です。護岸で、埋め立て区域と外海を遮断してしまうことで、あきらめ感を県内に広めたい、政府にとってはそういった意味も持つ工事だと思います」

県民がどこまで粘り強く反対の意思を示し続けることができるかが試されますね。

久田記者「護岸工事着工が大きな節目であることに間違いはありませんが、全体を通してみますと、必要な土砂はドーム球場17個分が必要なんです。工事の道のりはまだまだ長いと言えます」

そういった意味では、きょうの工事は印象付けの儀式といった印象ですね。対する県は「次の対抗策」をどう考えているのでしょうか。

久田記者「翁長知事が先ほどの会見で示したのが『差止訴訟』というものです。県は、工事には知事の岩礁破砕許可が必要としていますが、国がこの工事を無許可で行うことを止めさせよ、という訴えです。ただこちらに『適切な時期に』とありますが、これが『直ちに』というわけにはいかないんです」

どうしてですか?

久田記者「提訴には、海底の岩礁を壊す『岩礁破砕行為』を確認する必要がありますが、日米両政府の協力がなければ、県は制限水域に立ち入ることすらできません。ですから、最も確実なのは、地上からでも岩礁破砕が行われたと断定できる『杭打ち』と『浚渫』の工事を確認することなんですが、その時期は近いとされるものの、場合によっては1か月から2か月先になるということです」

それまでに、ほかの工事は進みそうですね。

久田記者「ほかの部分でも護岸工事が進むなど、既成事実化が進むのは確かに県に不利な状況です。奇しくもきょうは、翁長知事が埋め立て承認の撤回を『必ずやる』と明言してから1か月になります。県の関係者によると『撤回』は最後の手段と位置付けられ、差し止め訴訟以上に慎重な見極めが必要だといいます。『差止め訴訟』『撤回』どちらにも時間を要する状況で、埋め立てが進む海を横目に、県民がどこまで知事を支え切れるのか。きょうの着工で、県民は今までに経験のない長い試練の入口に入ったと言えそうです」

政府が辺野古埋立着手 知事「重大な決意で対処」