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100年に一度という金融危機の影響は、雇用の場が少ない沖縄にとって深刻な問題をもたらしています。規制緩和によって製造業への人材の派遣が認められたものの、企業の業績が悪化すると真っ先に雇用を打ち切られ「派遣切り」という言葉も生まれました。

きょうから3回に渡ってお伝えする「シリーズ雇用危機」。一回目のきょうは本土で派遣契約を切られ沖縄に戻ったお二人を取材しました。仕事と家を同時に失う現実です。

先週行われた、県営住宅の一時入居受付。この冬、県外で派遣切り・雇い止めに遭い、沖縄に戻ってきた人たちが手続きに訪れました。会場を訪れた上間達次さん、32歳もその1人です。


上間達次さん「自動車部品の加工です」

Q.どういう風に雇い止めが告げられたんですか?「口頭で言われました」

派遣労働者として静岡県内で働き、会社の斡旋するアパートに住んでいましたが、先月、解雇され、住む場所も失いました。年末に沖縄に戻ってからは、那覇市内で3畳一間の宿に身を寄せています。

上間さん「8月ごろまでは忙しかったですよ、普通に。残業も休日出勤も毎日あったし。9月の半ばぐらいから残業が禁止になって、どこでもそうだと思いますよ」

本土の大手電機メーカーや自動車メーカーの工場を渡り歩いておよそ15年。今回ほど景気の悪化を肌で感じたことはありませんでした。

上間さん「部品関係だったので本当にダイレクトに(不況の影響が)きましたね」「10月11月あたりから、週休3日とかありましたね。ひどい時には前の日に電話かかってきて『明日休んで』みたいな感じで」

そして、12月に言い渡された解雇通告。沖縄に戻ってきたものの、家族や親戚もなく、身を寄せるところはありません。それだけに、県営住宅の抽選には、すがる思いでした。

「最後の番号です。受付番号2番、お持ちの方前にどうぞ」

しかし、上間さんが呼ばれたのは、最後。交通手段を持たないため、職探しの拠点とする「那覇市」に住むことは必須条件でしたが、那覇市の部屋はすでにありませんでした。

上間さん「そうですね、でもあの抽選はちょっと凹みましたね」「次の日に、就職安定資金融資制度を使ってレオパレスのほうを契約しました。」

その後、厚生労働省の就職安定支援資金を利用し、来月からのアパート暮らしが決まりました。ただ、県営住宅と比べると月々の負担だけでおよそ5倍です。今後は、雇用保険を受給しながら学べる職業訓練校に通い、県内で職につくつもりです。


宮城真由美さん「うん、通った通った。」「うん、良かったね」

県営住宅の抽選で西原の住宅への入居が決まった宮城真由美さん。愛知県豊田市で夫とともに派遣労働者として工場で働いていました。現在妊娠中で、出産を来月に控えています。

宮城さん「12月2日くらいに1年の契約を結んだんですけど、2週間後くらいに解雇になって」

年末、里帰りしていた宮城さんに届いた解雇の一報は、夫からの電話でした。その夫も、今月いっぱいで失職し沖縄に戻ることが決まっています。県営住宅への引越しは、出産予定日の1週間前。気の休まる間もありません。

宮城さん「もともと旦那は独身のときから何回か行ってたので」「だから、結婚したらちょっと行ってみるかという話になって」

県外で働くことになったきっかけをこう話す宮城さん。県内企業は賃金が低く、3年前、夫婦で県外で働く道を選びました。

宮城さん「結構沖縄の人がたくさんいたので(すぐ馴染めた)」「寮も隣は沖縄の人だったので、普通に、食材が届いたらおすそ分けとかやったりして」

景気が落ち込む前のおととしには、ハローワークを通じ、県外へ出稼ぎに出る人が毎月500〜700人ほどいました。民間の求人斡旋で県外に出た人も含めると、さらに多くなります。その求人数が、去年の11月になるとわずか66人に減りました。

沖縄労働局 職業安定部 富永哲史部長「県外就職件数、過去数年見てもここ最近だけちょっと動きが違う。激変している。帰ってきた人が、少しずつ滞留していって、徐々に大きな問題になるという可能性はありうると」

この事態に備えて、いち早く臨時職員の採用を決めた那覇市を始め、県や他の市町村が雇用の場を確保していますが、それも2カ月ほどと期間が限られたものです。県内の失業率は去年11月で7.7%。全国平均の2倍。景気低迷が長引けば、新規学卒者で職に就けなかった人たちも合わせ4月以降はさらに悪化する可能性があります。

宮城さん「予定日までに3000g超えるってことあるんですか?」

お医者さん「うん、あるとおもいます。予定日までいけば」

きのう、宮城さんは週に1回の妊婦健診に訪れました。お腹の赤ちゃんは日々成長を続けています。今は元気な赤ちゃんを産むことだけ考えたいと言いながらも、やはり将来への不安は募るばかりです。

宮城さん「(今まで)使い捨て状態なので」「地元で安定した仕事があれば」


最初に登場した上間さんは、ようやく住む場所は確保したものの、家賃負担は重くのしかかりますね。

一方、出産と引越しを控えた宮城さんのほうも先行きは不透明です。

あすは3月に卒業を控えた新規学卒者の現状をお伝えします。