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毎年一万人近くが命を落としている交通事故。那覇市のタクシー会社は、その事故の状況を撮影するカメラを県内で初めてすべての車両に設置しました。

当初は乗務員教育のために導入されたこのドライブレコーダー。映像には、なぜ事故は起きたのか?その見えにくい原因もはっきりと映し出されています。岸本記者です。

車の往来が激しい夜の交差点。タクシーが右折しようとした際、向かいから猛スピードで直進してきた乗用車。

繁華街の裏手の細い通り。左の路地から突然、飛び出してきた小さな子供。道路の反対側にいる父親の所に駆け寄ろうとした瞬間の事故でした。

那覇市に本社を置くタクシー会社の沖縄交通は去年4月、運転手が急ブレーキを踏んだり、車が衝撃を感じた際、その前後20秒の映像を自動的に保存する装置をすべてのタクシーに設置。

沖縄交通・山川総務課長「ドライブレコーダーは一台あたり5万円少しで、140台で計算したら、700万近くかかったが、事故自体も以前みたいな粗暴運転の事故がないもので」

装置を導入する前の2005年度はこの会社のタクシーが絡んだ加害事故は108件、被害事故は98件あったものが、導入後の2006年度はそれぞれ91件と79件に減少。全体では3割近くも事故が減りました。

乗務員「やっぱり(ドライブレコーダーが)目の前にあるだけに、微妙に意識はあります」

運転手の意識や気象条件など、様々な要因が積み重なって起きる事故。

岸本記者「今月14日の夜8時頃、今とほぼ同じ時間帯です。この信号の無い横断歩道を渡っていたお年寄りが、こちらから直進してきた車に跳ねられて死亡する事故がありました。どうしてこの見通しのよい直線道路で事故は起きたんでしょうか?」

時速60キロのスピードで、ブレーキをほとんど踏まずにお年寄りを跳ね飛ばした車。県警は、運転手がなぜ歩行者を見失ってしまうのかを実証する実験を行いました。

対向車のライトを浴びると、人間の眼はその強い光に視点が集中し、車の間にあるものが見えにくくなる。これが「蒸発現象」です。車の中から見ると、フロントガラスが反射して歩行者はさらに見にくくなります。

強い光を浴びると人間の目の瞳孔は急速に縮み、その後、数秒間、視力が若干落ちます。

ドライブレコーダーはこの眼の特性による「蒸発現象」が原因とみられる事故もはっきりと記録していました。

対向車の強いライトを浴び続ける運転手。交差点に差し掛かった時、画面左の方向へ曲がろうとするミニバイクが現われますが、「蒸発現象」によって運転手からはその姿はほとんど見えていません。

そして、次の瞬間!

ミニバイクの運転手は、フロントガラスに頭を直撃しながらも、ヘルメットをかぶっていたこともあり、幸い軽い怪我で済みました。

県警交通指導課・石原課長補佐「自分では見えているつもりだけど、相手からは全く見えないということ」

『あなたは自分の眼をどこまで信用しますか?』

私は車の運転はしないのですが、助手席に乗っているときにヒヤッとした経験は何度もあって、こうした事故の映像を見ると本当に怖いです。このドライブレコーダー、現在、沖縄交通の他にも複数のタクシー会社が導入を検討していて、県警も事故原因の分析のために活用を始めているということです。