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女性「一番ひどいのはこっち、ちょうど後ろのほうまで来てるのよ」

沖縄市に住む75歳の女性の足に、血管のこぶが浮き出てきたのは30年ほどまえのことです。

女性「歩いてきて、すわるときはパンパンになる」

女性に多い、血管の異常。これは「下肢静脈瘤」と呼ばれるものです。足の静脈内に血液の逆流がおき、血管が大きく膨らんだり、内出血をおこす病気。

人間の足の静脈は、奥のほうにある太い血管と、そこに繋がる細い血管で構成されていて、足から心臓に向かう血液の逆流を防ぐために、弁があります。しかし、長時間の立ち仕事につく、おもに女性で、この弁が損傷することが多いのです。弁の壊れた血管内では血液の逆流がはじまります。

中部徳洲会 心臓血管外科医長 池村綾さん「下肢静脈瘤っていう方は、その弁が壊れてしまう“弁不全”を起こしていて、それに伴い静脈が逆流してしまい大きく腫れあがったしまったりこぶのようになったりします」

逆流した血液で変形した血管はもとに戻ることはありません。症状が進行すると色素沈着が起きたり、皮膚が硬くなったり潰瘍を起こすこともある病気です。この女性は40年にわたりアメリカ軍基地内で働いてきました。ベーカリーや両替所など立ち詰めの勤務は一日8時間、長いときでは10時間以上になったといいます。職場では、彼女をはじめもっと血管こぶが大きく浮き出た女性が足のむくみや痛みを訴えていました。

女性「立ち通し仕事してる血管が浮き上がってくるよ、ということは(皆で)話は聞いてたんだけど病気とは思わなかった。最近になって血液何とかかんとかって、ええ!って。(知らなくて?)知らないわよ!(じゃあ一緒に仕事してた皆さん病気とは?)いー、私も出てるよ!なんて言われて(笑)」

これまでこの症状に対しては、伸縮性の強いストッキングを履いて血流を調整したり、硬化剤治療などとともに、変形した血管を引き抜く手術が行われてきました。しかし足に傷が残ったり、神経を損傷する危険性もあり、さらに一週間程度入院する必要がありました。

しかし、傷も目立たず、日帰りで行えるという最新のレーザー手術が沖縄にも導入されました。これは、特殊な波長をもつレーザー光線を発する機械。この機械に取り付けられた極細ファイバーの先端からレーザーが照射されます。このファイバーを血管の中にいれて治療するというのです。

この女性が受けるのはその最新の手術。数十年にわたって悩まされ続けた静脈瘤の治療を決心しました。手術は、ファイバーを差し込む小さな穴を、足の付け根の静脈に開けるだけです。女性は局所麻酔のみで、手術台に横たわりました。

あらたな手術では、静脈にあけた穴からファイバーを差しこみ、変形した血管の奥までファイバーの先端を到達させます。そこでレーザーの照射を開始。ファイバーをゆっくり引き抜きながら血管の内側を熱していきます。これまでのレーザーでは温度が高すぎ組織まで焼いて損傷させてしまいましたが、最新型の機械ではおよそ100度以下。局部以外に負担をかけることなく血管を閉塞させることができます。

女性の静脈内にファイバーが挿入されました。最新型の機器では、レーザーを照射しながら、一定速度でファイバーを抜くことができます。エコー画面には、血管を焼きながら動いていくファイバーの影が鮮明にうつっています。

ファイバー挿入から施術の終了まではおよそ15分間。手術による傷跡はこの数ミリの傷で、ほとんど目立ちません。

中部徳洲会 池村医長「傷が目立たないということ、そして入院を要さないことが一番大きなメリットだと思います。…からだに与える影響がきわめて少なくて済みますので、それは仕事を持たれてるお母さんや主婦業を一生懸命されている、あるいは時間の取れない方にとってはたいへんメリットになると思います」

手術室に入ったときと同じ足取りで、休憩室にもどる女性。痛みはほとんどありません。1時間ほど休んだあと、自分の足で自宅に帰ることができました。働き盛りの女性の足を蝕む下肢静脈瘤。治療へのあらたな光が見えてきました。

この「下肢静脈瘤」、ある調査によると40歳以上の、出産経験のある方ではおよそ1割にあきらかな静脈瘤が確認されるそうです。

現在は自由心療のため手術費用は本人負担となりますが県内では片足で12万円ほどです。これまでは、状態がひどくなるまで治療をしない人が殆どでしたが、この手術で早めの治療を考える方も多くなるかもしれませんね。がんじゅうへの扉でした。