沖縄で今を懸命に生きる人々にスポットをあてる「イマジンおきなわ」です。以前、QABでも取材した弾むコンクリート、そのコンクリートが時を経て新たに新化しました。その進化と技術者が考える未来とは?
HPC沖縄阿波根昌樹代表「これをこれから世界に打って出ていく。そのまず先駆けになります。非常に今わくわくして楽しんでこの日を迎えました」
ことし開催した「大阪・関西万博」。その中で、中小企業基盤整備機構が主催する「技術と想いで創る・いのち輝く未来」をテーマとした「未来への航海」と題したイベントが開かれ、全国の中小企業の中から83の企業が自然の恵みを活かす発想や、最先端のデジタルテクノロジーなどを世界へ発信するため集結しました。
「精巧なモノづくりの技術」のブースでは、沖縄生まれで次世代の環境と暮らしを支える持続可能な社会づくりへの挑戦として、環境に配慮したあるコンクリートが発表されました。
HPC沖縄阿波根昌樹代表「この新しいコンクリートはセメントを使っていないセメントゼロのコンクリート、さらに地球温暖化に悪さをする二酸化炭素をこのコンクリートの中に閉じ込めてます。未来のコンクリートです」
塩害に強く海洋生態系に配慮されたハイブリッド・プレストレストコンクリート「HPC」。沖縄の厳しい自然環境の解決を目指して開発されたコンクリートです。このイベントでは誰もが想像しえなかったゴミとなる産業廃棄物から生まれた未来のインフラの要として注目を浴びました。
HPC沖縄阿波根昌樹代表「地味なコンクリートが地球を、地球の温暖化を防ぐ度に役に立つ。そういうのをやっぱり間近でですね、実物を見てコンクリートの役割をもう少し感じ取っていただければ幸いです」
HPC沖縄阿波根昌樹代表「固まっているねすぐ・・・(飯星さん)早いね(阿波根さん)早いね」
コーアツ工業飯星幸治工場長「上出来じゃないですか、今の段階ではセメントのすごさは改めて実感しましたね」
熊本県宇城市、コンクリートの製造を行うこの企業。ここで製造されていたのは、新たなHPCの試作品です。
今までのコンクリートは中に鉄筋を埋め込み強度を補います。ただ、鉄筋が空気や水に触れると錆びで劣化し強度が下がる難点を持っています。
HPCは鉄の代わりにカーボンワイヤー、いわゆる炭素繊維をねじり合わせた素材を使うことで錆びないように弱点をカバーしたコンクリートです。しかも薄くて弾力性を持つコンクリートに仕上げ、世界中のなかでも沖縄にしかない技術を阿波根さんは作り上げたのです。
今回、阿波根さんはあるものを取り入れたと話します。
HPC沖縄阿波根昌樹代表「原材料としてコンクリートのゴミであるコンクリートスラッジと言われているものを、セメントの変わりに使ってます」
コンクリートスラッジとは、セメントを運搬するミキサー車からセメントが流し込まれた後に残った廃棄物のこと。そして、その廃棄物を洗い流す際に使われる水、スラッジ水も新たなHPCの材料として使われます。
HPC沖縄阿波根昌樹代表「第2世代のHPCは練り混ぜ水にコンクリートのスラッジ水を使っております。そこにさらにCO2を固定化させたものを使ってるので、CO2ネガティブなコンクリートの製品として生まれ変わります」
HPC沖縄阿波根昌樹代表「今まで捨てられていたものが製品として使えるような形で、HPCのシリーズといいますか、次世代に向かった製品作りができる。今後HPCがインフラとして、社会インフラとして、いろんなところにカーボンニュートラルに向けたまち作りに寄与できる製品を提供できるということで今わくわくしてます」
コーアツ工業飯星幸治工場長「正直びっくりしかなかったですね。錆びない材料で構成されてるんで、我々からするとありえない薄さですね。それが一番大きいポイントですね」
HPCの存在に驚いたと話す飯星さん、さらに廃材を使用することについては?
コーアツ工業飯星幸治工場長「(廃材使用は)もってこいだなって思ったもんで、弊社の処理費用とか、その辺の問題は常に問題意識として抱えてたんで、それが再資源化に繋がっていくというのは非常に良い面があります。非常に今後さらに楽しみですね」
またこの企業ではHPCをいかした取り組みを行っています。それが「海底養殖実験」。
HPC沖縄阿波根昌樹代表「地球温暖化の影響は確実に受けてると思うんですよね。そうすると、やっぱり海水温度が上昇することによって、沖縄もそうですが珊瑚の白化現象だったり、生物の何ていう生態系が崩れてくるというところがあります」
HPC沖縄阿波根昌樹代表「(HPCは)薄く作れることによって、揺れるんですよ。揺れることによって、ウニが海藻を食べるという食害に合わないと。そうすると藻場が磯焼け起こらない。そこがHPCのある意味魅力」
ネガティブなイメージのコンクリートを、ポジティブな発想で環境に役立てたいと話す阿波根さん、常に意識していることがあります。
HPC沖縄阿波根昌樹代表「いつも逆です。逆張りしてます。逆張りしないとみんなと同じ方向に行くじゃないですか。みんなと違う方向に行こうとすると逆張りですよ。常にコンクリートが硬いねって言ったら柔らかいコンクリートを作るうと。コンクリートは塩害に弱いよねって言ったら沿岸に強いやつ作ればいいと。逆を張っていった方がいいっすよ」
柔らかく、錆びず、耐久性を持ち、これまでにないコンクリートを生み出した阿波根さん。その先に見ている「夢」に向かって進みます。
VTRで紹介したHPC、実は大阪・関西万博のパビリオン「いのちめぐる冒険」で使われていたのですが、来年、中城村の中学校整備事業の一部にリユースすされることがきのう決まりました。
技術者の阿波根さんは「沖縄で生まれた技術が万博で使われ、レガシーとしてその技術が沖縄に帰ってきてまた使われたらすごく美しい」とコメントしています。
普通、コンクリートにする際にはセメントと真水が必要ですが、万博のHPCは真水の代わりに大作湾の海水を100%使って作っているとのことです。
環境に配慮したHPCに期待したいですね。以上、IMAGINEおきなわでした。
