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首里城の再建を追いかけ続ける「復興のキセキ」です。2年後の首里城正殿の完成に向け、着々と工事が進んで正殿の骨格も出来上がり、見学デッキから見える姿は存在感と迫力を日に日に増しています。

首里城の再建、そして完成した後の維持という大切な役割を担うのが技術者です。沖縄のシンボルを支えていくために欠かすことのできない、職人の人材育成も歩を進めています。

ありし日の姿を取り戻そうと日々工事は進んでいます。2026年秋の正殿完成を目指して、今年は大きな進捗を見せる一年となります。先月には「垂木」(たるき)と呼ばれる赤瓦の屋根を支える土台の据え付け作業が始まりました。

今年に入って、県内3か所の工場で屋根に乗せる赤瓦を焼き上げる作業もスタートしました。6月を予定している「瓦葺き」(かわらぶき)に間い合わせようと、急ピッチで焼成が行われています。

正殿の正面に建つ4本の「向拝柱」(こうはいばしら)も作業が進んでいます。真っすぐ滑らかな柱にするため、細かな繊維や木の粉を混ぜた漆を使ってひびや節を埋める「刻荢詰め」(こくそ)呼ばれる下地工事です。

下地を塗る工程は、正殿の赤を蘇えらせるまでに数回行われます。着々と進む復興を後押しする取り組みが去年9月に始まりました。

県土木建築部首里城復興課企画班・大濱長猛班長「当然建物ができた後は維持・補修も必要ですので、そういった支える人材というのは沖縄でぜひ育てていかないといけないんじゃないかという課題といいますか、懸念点というのがありまして。首里城建造している間に早めに育成を進めていかないと完成後を見据えた人材育成できないと思いました」

職人の技術 次の世代につなぐ

県は沖縄の伝統的な建築技術を継承する技術者を育てようと、首里城未来基金を活用して初めての研修を始めました。将来の首里城を後世に残し続けるため、技術の継承は避けられない課題です。職人をどう育てるかが今後の鍵を握っていると言っても過言ではありません。

県土木建築部首里城復興課企画班・大濱長猛(おおはまながたけ)班長「本気でやりたい人を集中して育てていくといったことが必要になってくるのではないかと思っています。最終的にはこの世代にはこの人がいるなと、この技術分野にはこの人がいるような状況を継続して作り上げていくことが必要だと思いますので、これにはやはり時間をかけてじっくりとやっていくんだと考えています」

研修には、建造物木工と木彫刻の分野があって、首里の円覚寺山門など文化財の復元工事に携わっている技術者や仏像を専門に彫る職人など、合わせて7人が参加しています。そのうち木彫刻の実習に4人が励んでいます。

小泉ゆりかさん「首里城の火災というのも学生時代、衝撃的なものでもありましたので、そこに関しても知りたい部分だったりとか、そういう感じで応募しました」

香川県出身の小泉ゆりかさんは、首里城火災が起きた当時、県立芸術大学の学生でした。おりしも首里城祭に作品を搬入する日だったこともあって、大きな衝撃を受けたと話します。

職人の技術 次の世代につなぐ

小泉ゆりかさん「在学中の3年生位だったと思うんですけど、首里城際の搬入の日に火災がおきまして、例祭の時にありまして、私も出展の予定だったのでたくさんあった商品も出すことができず、みんなあぜんとして『どうするのどうするの』ってなった覚えがありまして、すごく衝撃なことでした」

火災をきっかけに首里城の事をもっと知りたいと考えるようになった小泉さんは、大学を卒業しても彫刻を学びたい、技術・知識を吸収したい思いから研修に参加しました。

小泉ゆりかさん「木彫刻・木の彫刻というものは後継者がすごく少なくて、技術的にもやっぱりここでどうにか引き継いでいかないといけないんじゃないかなというのはありまして。ちょうどこういった機会を頂けたのがうれしくて、それもまたちゃんと今回の件でしっかり勉強させて頂いて、自分がちゃんと持った状態で誰かに渡していけたらなと思っています」

この研修で何を得て、どういう担い手になりたいか聞いてみると。

小泉ゆりかさん「何かの破損だったり何か修復修繕ということが起こった時に、自分がぱっと出ていって、ちゃんと使える人間であるぐらいのところまでは成長していきたいなとは思っていて、自分は彫刻家という自分の製作もありますので、そちらもやりながら何かあった時は社会の中で自分の力を活かせるような人間になっていきたいと思っています」

県土木建築部首里城復興課企画班・大濱長猛(おおはまながたけ)班長「石川県の方で職人大学校という職人を育てる学校がございます。こちらは基本的には3年間で1つのプログラムをやっておりましたので、我々の方も基本は3年ぐらいは必要だろうというふうなことは想定ではおりました。1人の研修生に対して3年間ということで、当然ながら人材育成は時間がかかりますのでその後も研修生は変わるのか、或いは実施しているコースですね、現在も建造物木工・木彫刻ですけど、それを変えてやるのか分かりませんがいずれにしても授業は続いていきます」

職人の技術 次の世代につなぐ

人材育成の研修期間について県は3年と想定しています。県は研修を終えた職人たちについて、県庁で受け入れる制度をつくる必要があるといいます。

県土木建築部首里城復興課企画班・大濱長猛(おおはまながたけ)班長「制度としてきちんと取り入れて、伝統的な技術を持った方がきちんとお仕事に繋がるような、そういった取り組みはぜひ必要かと考えております」

一方、正殿工事の現場ではいち早く1人の女性が経験を積み重ねています。

後藤亜和さん「こんなにいろんな人から話を聞いたり、高いスキルを持った大工さんから学べる機会はなかなかないと思っているので、丁寧に教えてもらえることに本当に感謝している」

宮大工として働く、北中城村出身の後藤亜和(ごとうあや)さん。21歳、現場で作業する職人の中では最年少です。

後藤亜和さん「県出身者としてこんな大きい現場に関われることは自分自身想像していなかった(です)」

職人の技術 次の世代につなぐ

首里城が焼失した時は高校生だったという後藤さんは、今こうして大工として再建に携わる自分の姿を想像していなかったと話します。沖縄を象徴する首里城の再建に携われることは貴重な経験で、職人の道を突き進む原動力となると自信をのぞかせています。

後藤亜和さん「この仕事に携われている誇りなど、そういうものが私を頑張らせてくれる原動力になってくれているのかなと思っている。聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥というもので、今のうちにたくさん聞けることは聞いて学んでいけたら良いと思ってます」

正殿の再建とともに、首里城を支える伝統技術を引き継ぐ取り組みも着々に進んでいます。工事に携わるすべての職人が誇りをもって突き進める、夢と希望にあふれる復興になって欲しいと思います。