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過重な基地負担を強いられている沖縄の現状と、日米両政府が辺野古への新基地建設という、県民の思いとはかけ離れた工事を強行していると、知事も国際社会に訴えていわけですよね。

2週間前の不承認を巡る裁判の最高裁の判決で県が敗訴して以降、裁判闘争などで続く県と国の攻防が注目されています。

ここでそもそも「辺野古」が必要なものなのか考えたいと思います。

長年辺野古の問題を追ってきた識者は、軍事や財政などの側面から、辺野古が抱える問題点を考えながら、新基地建設の是非を検証する必要があると訴えています。

沖縄国際大学・前泊博盛教授「最大のポイントは。この埋め立てをして造ろうとしている基地が何のために造られるのか。本質的に原点に戻って、検証が必要だと思います」

基地問題に詳しい、沖縄国際大学の前泊博盛教授は、記者や研究者として、辺野古問題を追い続けてきました。

辺野古新基地、その問題点は?/普天間撤去は四半世紀未解決/前泊教授「フェイク」

名護市辺野古の新基地建設は1990年代末に浮上した話です。日米両政府がSACO合意などを経て、普天間基地を辺野古に移設することを決定しました。

ただ、1966年の時点ですでに、アメリカ海軍が辺野古に滑走路や軍港の設置を構想していたことが明らかになっています。

沖縄国際大学・前泊博盛教授「ベトナム戦争で資金的にも厳しいと棚上げされた計画が、普天間移設という形で息を吹き返し、米軍の欲しかった基地を日本の金で作るというからくり」

沖縄国際大学・前泊博盛教授「60年代(に計画した)の基地が、2020年代のドローンの時代、あるいはミサイル防衛の時代、長距離ミサイルの時代になっても適合する、安全保障上有効に機能するような基地なのかどうか。見直しを米軍でもしている。そんな時代に、それを裁判までして強行する理由は何なのか。そのあたりを再検証してほしい」

沖縄国際大学・前泊博盛教授「一部の政治家とその関係する利権のために(基地建設が)強行されていないかという。そのあたりの検証は必要じゃないかという声が出ています」

辺野古新基地建設の問題が浮上して30年近くが経ちます。これまでに巨額の税金が投じられてきました。工事や警備の費用は、現行の移設計画が決定した2006年度から22年度までに、およそ4312億円に上っています。

一方で、軟弱地盤を固める工事を盛り込んだ費用としておよそ9300億円という額を国は示しています。去年度までに、半分ほどを使い果たしていることになります。

ただ、投入が完了した土砂量の全体に占める割合を計算すると、およそ16%にすぎません。9300億円以上に膨らむ可能性がないとは言えない状況です。

辺野古新基地、その問題点は?/普天間撤去は四半世紀未解決/前泊教授「フェイク」

県は辺野古新基地建設にかかる総費用を2兆5500億円と試算し、膨大な費用について国民の理解が得られないと指摘しています。

沖縄防衛局はQABの取材に「総経費を見直す段階ではない」とあくまで強調しています。

沖縄国際大学・前泊博盛教授「軍事専門の方から指摘をされたのは、1兆円のお金があれば、空母が2隻作れると。今のヘリコプター搭載型護衛艦だったら、5隻程度が作れる。2兆円かかるのであればイージス艦まで整備できると。(空母を超えるような機能を、この基地が持ち得るのかという議論)安全保障上も1兆~2兆円規模の投資は不合理であると。そういう指摘まで出てきてるんですね」

沖縄国際大学・前泊博盛教授「湯水のごとく税金を使っていいという話ではない。基地は費用対効果分析の中で効果的に証明できるのか」

前泊教授は、数兆円の国税を投じる費用対効果の側面でも批判を加えています。

木原防衛大臣「辺野古移設が唯一の解決策であるという。そういう方針に基づいて着実にこれまでと同様、工事を進めていくことが普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、そしてその危険性を除去するということにつながったものと考えております」

辺野古新基地、その問題点は?/普天間撤去は四半世紀未解決/前泊教授「フェイク」

13日に新しく就任した木原防衛大臣も、政府のこれまでの見解を繰り返しました。日本政府はほぼ4半世紀にわたって、「辺野古が唯一」と言い続けています。

その間危険性が放置され続けている普天間基地では、防衛大臣が交代した13日も、オスプレイや大型輸送ヘリが飛行を繰り返していました。

滑走路の脇では隊舎の補修工事が行われています。防衛局によると今年度末までに空調や外装などを、およそ40億円かけて整備する計画になっています。

返還が予定される普天間基地で施設の補修工事が行われていることに防衛局は、「必要最小限の補修を行うもので、飛行場の固定化につながるものではない」と強調しています。

沖縄国際大学・前泊博盛教授「長期使用に耐えうる形で、普天間が強化されていることについてはどう説明するのか。何年で完成し、何年で危険性除去がされるのか。普天間の危険除去という大義名分が25年先送りされていること自体、4半世紀も過ぎたらもうフェイクとしか言いようがない」

沖縄国際大学・前泊博盛教授「特定の人たちだけにお金が回るような仕組みになっていると。するならば、税金の使い方として、歯止めをかけていく必要がある。そこからのアプローチで言えば、軍事的合理性も非常に希薄とされているこの計画は、とどめをさせる」

連日注目してきた裁判闘争での県と国の攻防だけでなく、視点を変えてみると、司法の場では顧みられることのなかった新基地建設の様々な問題が浮き彫りになってきました。

辺野古新基地、その問題点は?/普天間撤去は四半世紀未解決/前泊教授「フェイク」

金城キャスター:ここからは塚崎記者です。今回は前泊教授に新基地建設の問題点を改めて聞いたわけですが、ほかにどういった問題点が挙げられていたのでしょうか。

塚崎記者:前泊教授は今回の取材で、問題点としてご覧の14項目を挙げていました。先ほど取り上げた軍事や予算上の問題のほかに、不正支出や工事業者と政府関係者との関係など経済的な利害や、ジュゴンやサンゴなど環境面、航空法の安全基準などの観点など、さまざまな側面の問題点がありました。

金城キャスター:今月4日に、新基地建設を巡る裁判で県の敗訴が確定して以降、私たちが取り上げてきた行政不服審査法や裁判の問題は、その中のこちらの2項目に過ぎないことになりますね。

塚崎記者:前泊教授は、私たちメディアを含めて、県と国の攻防にばかり注目が集まっている現状について、警鐘を鳴らしていました。

辺野古新基地、その問題点は?/普天間撤去は四半世紀未解決/前泊教授「フェイク」

沖縄国際大学・前泊博盛教授「政府の自作自演の裁判劇を見せられているのではないかと。裁判を受けた地元沖縄の反応を見てもですね、やはり行政にかしずくような判決しか出されていない」

沖縄国際大学・前泊博盛教授「なぜそれ(判決)が出るのかと根源的な問いをしなくてはいけないが、皆さんこぞって、沖縄県が負ける。知事の苦渋の表情を見たい。コンフリクト・対立。矛盾、闘争は。メディアによって。格好の劇場化できるので、求めてるものなんですよ」

塚崎記者:前泊教授が指摘したように、私も新基地建設の問題を報道するときに、国と県の攻防を図式などを使って説明してきました。構図を単純化することで、背景に隠れる問題を覆い隠してしまうという点も今回の取材を通して痛感しました。

塚崎記者:裁判など日々の現象面を報じることに手いっぱいになってしまいがちですが、さまざまな側面から分析し、問題を明らかにしていくことが必要だと強く感じています。

金城キャスター:きょうも松野官房長官の発言がありましたが、政府は「唯一の解決策」という言葉だけで、新基地建設が抱える問題に正面から答えていない現状があります。

金城キャスター:基地の完成が2030年代以降にずれ込むことも明らかになっていて、本当に必要なのかどうか多角的に考える必要もありそうです。ここまでは塚崎記者でした。