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今を生きる私たちが沖縄の未来を考える「イマジンおきなわ」です。今回は危機に直面しているサンゴを蘇らせる一大プロジェクトに焦点をあてます。世界各地から英知が結集する、沖縄が誇る研究機関が企業とタッグを組んでサンゴを守り育てていくために立ち上がりました。

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「サンゴプロジェクトの一つの目的は、できるだけ多くの人たちを巻き込みたいっていう。私たちだけじゃどうにもなりませんので、いろんな人たちを巻き込んでいろんな人たちの知恵を借りて、実際に沖縄の人たちが、「こんなプロジェクトをOISTでやってるんだ」ということを喜んでもらえるようになれたら、それは最高の幸せだと思いますね」

#IMAGINEおきなわ vol.27「サンゴを守り育てる最新研究」

今月、恩納村にある沖縄科学技術大学院大学・OISTが、今ある沖縄のサンゴ礁を守りながら、失われたサンゴ礁を取り戻そうという産学官連携のプロジェクトを始動させました。第1弾として県内外の企業8社が加わっています。

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「年配の方々に伺いますと、皆さん「自分たちが小さい頃には海岸のすぐそこまできれいなサンゴ礁が広がっていて、そこでサザエやウニをよく取ったんだよ」とおっしゃるんですけれども」

海底を彩る美しい姿のサンゴ礁は、私たち人間を魅了するだけではありません。およそ30%の海の生きものが暮らす、生物多様性が豊かな場所です。

#IMAGINEおきなわ vol.27「サンゴを守り育てる最新研究」

天然の防波堤として津波などの災害の被害を抑えてくれる役割を担っている上、サンゴと共生する褐虫藻の光合成で年間20億トンもの二酸化炭素を吸収しています。

そんなサンゴが現在、急速に失われつつあります。国が石垣島と西表島の間にあるサンゴ礁で去年9月に行った調査ではサンゴの死滅を示す「白化現象」が90%以上進んでいたところもあったということです。

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「現在、残念なことに浅瀬のサンゴ礁が今消えたものになっています。このプロジェクトの1つは、なんとか昔の美しい沖縄のサンゴ礁を取り戻したいというのが1つの目的です」

危機に瀕しているサンゴを救おうとOISTで海洋生物のゲノムを研究している佐藤矩行(さとう・のりゆき)教授が立ち上がりました。

昆虫、カエル、メダカ、ホヤなどを研究対象にしてきた生物学者で、教授を務めていた京都大学を退官後、15年前からOISTでサンゴの研究を始めました。

#IMAGINEおきなわ vol.27「サンゴを守り育てる最新研究」

佐藤教授の研究チームはサンゴだけでなく、サンゴと共生する褐虫藻や天敵のオニヒトデなどの遺伝子情報・ゲノム解析を世界で初めて成功させました。これまで謎だった生態を解き明かす技術を見出したといえます。

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「ここからが私たちマリンゲノミックス(チーム)の研究室ですね。それぞれのブロックで、それぞれ1人が仕事をしているという感じになっています」

ここでは海水から採取したサンゴの環境DNAを増やすためにPCRの作業を行っていて、11人で日々研究をしています。

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「OISTはもう本当にすごい大学でして、特にゲノムを、っていうか遺伝子を読む装置と施設がものすごくそろっていまして、世界でトップクラスの機械が常にあって、そこで技官の人たちが私たちの塩基配列を決めるというのを手伝ってくれているので、本当に研究がしやすい。多分世界のトップの多分場所だと思います」

#IMAGINEおきなわ vol.27「サンゴを守り育てる最新研究」

佐藤教授の研究チームは海水に含まれる環境DNAを分析することで、実際にサンゴが生えているところを見なくても、どんな種類のサンゴがいるのかが分かる仕組みを構築しました。本島周辺63カ所で調査を行ったところ、ダイバーが目視した結果と一致率90%以上を達成しました。

そして、去年3月からは大手通信会社が開発を進めている海水を採取できる機能を搭載した水中ドローンとコラボした研究を始めています。

ドローンが水深350mまで潜水可能なため、深い場所のサンゴも調査することができ、ダイバーの負担軽減につながります。こうした最先端の技術を駆使して、サンゴの調査を進めているのです。

#IMAGINEおきなわ vol.27「サンゴを守り育てる最新研究」

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「珊瑚礁が大きいということと、それからやっぱり珊瑚礁を構成している造礁サンゴをはじめとして、いろんな生き物がいて、非常に複雑だっていうことですね。ですので、(ホヤなど)今までやってきた研究から比べると、非常に複雑なものを相手にして、小さいところを、少し研究して理解できたというわけにはなかなかいかなくて。できるだけ全体を捉えるような研究をしたいと思うと、非常に大変な相手だと思っています」

サンゴを知ること、そして守っていくことも、このプロジェクトの大事な柱の1つです。植え付けは、早ければ今年10月にも座間味村で始まる予定です。子どもたちを対象に、サンゴの重要性なども伝えながら、3年から5年の歳月をかけてじっくりと経過を見守ります。持続可能な社会の実現に向けて、失われたサンゴを取り戻す一大プロジェクトが今動き出します。

OIST マリンゲノミックスユニット 佐藤矩行教授「サンゴ礁回復するには、こうやってサンゴ植え付けるというだけでは、回復できなくて、このサンゴたちが大きくなって、卵を産んで、そのたくさん産んだ卵の幼生が、実際にいなかった岩場にくっついて、そこにサンゴ礁回復させたいというのが最終目的なので、やっぱりここまでなんとか大きくしていきたいということですね」

#IMAGINEおきなわ vol.27「サンゴを守り育てる最新研究」

OISTのサンゴプロジェクトは海の日の今月17日から動き始めていて、個人・法人問わずサポートをすることができます。詳しくはこちらのQRコードを読み取るか、「OIST サンゴプロジェクト」で検索してみてください。

OIST Coral Project | Okinawa Institute of Science and Technology OIST