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今を生きる私たちが沖縄の未来を考える「イマジンおきなわ」です。今回のテーマは国際協力です。沖縄からおよそ1万キロ離れたアフリカ・ケニアの地で、住民に安全な水の供給に取り組む男性がいます。現地の人たちとともに活動する男性の言葉を通して、国際協力に必要なことを考えます。

下川樹也さん「僕もこのアフリカのことをやって何べんも死にかけました」「なので自分に与えられている時間というのは無限じゃないっていうことを、すごく自分で今思っているんですね」

先月16日。西原町の沖縄キリスト教学院大の教室で、学生たちに語り掛ける男性の姿がありました。下川樹也さん。ケニア西部に施設を建設し、水の供給などに取り組んでいます。

40年近く日本とアフリカを行き来してきた下川さん。原点は1986年、写真家として活動していた26歳の時までさかのぼります。

下川樹也さん「私がなぜアフリカに行くようになったかというのは、一番最初のきっかけは興味があっていきたかっただけなんですね」「ただ、行ったときにこのスラムでマラリアに感染して、子どもたちに助けてもらった経験をしました」「このマラリアになっているこの今の状態がアフリカの人たちの日常だということを、自分が身をもって知るためにここに来たんだなと」「その時、心で決めて。そこから僕は、アフリカの人たちにために何かしたいと」

#IMAGINEおきなわ vol.26「双方向の国際協力 沖縄とケニアつなぐ」

下川さんは大阪で会社員などをする傍ら、現地で孤児院や学校の運営にかかわるようになりました。沖縄に拠点を移したのは2020年。現在は南城市のカフェを本拠地に、ケニアと沖縄を行き来しています。

現地では「ハーベストパラダイス」と名付けた拠点で活動しています。現地のニーズ調査をする中で水の入手に苦労する女性たちの姿に気づきました。

下川樹也さん「この村では水をくむためにですね、村の女性たちは1人5時間歩かなければならない」「お金がない人たちは、汚れた川の水を飲んで、感染症を起こして亡くなっていく」「水というものがこの村では一番大切なものだと思って、この水を何とかしようとスタートしたんです」

下川さんたちは重機を使って170メートルの深さまで井戸を掘りました。澄んだ安全な水を周辺地域のおよそ1万5千人に水を届けています。その中で安価ではありますが、あえて販売という形をとっているといいます。その狙いを次のように語ります。

#IMAGINEおきなわ vol.26「双方向の国際協力 沖縄とケニアつなぐ」

下川樹也さん「やはり現地でそれなりの経済効果を上げていかなきゃいけないので、タダで配るとその考え方が崩壊してしまいます」「僕たちも一緒になってビジネスの構築、水の売り先であるとかマーケットの作り方であるとかブランディングのやり方であるとか、一緒にやるっていうのがこのハーベストで考えている一番根幹のところです」

水の供給以外にも、ハーベストパラダイスでは農園の経営や、手編みのかごの作成などに取り組んでいます。一見、水の供給とは無関係に見える事業も、水供給が始まったことで、できるようになったことだといいます。

下川樹也さん「僕たちがこのプロジェクトをやることによって水が容易に入手できるようになった」「そしたら、当然のことながら時間ができるんですよね」「この浮いた時間でこうやってもっと生産的に使ってもらう一つがワークショップなり農園ですね」「これだったらできそうだなって、僕が思うやつを現地でやってきます」

#IMAGINEおきなわ vol.26「双方向の国際協力 沖縄とケニアつなぐ」

キリスト教学院大での講義中。ケニアでの活動を語っていた下川さんは、新しいアイデアを募っていました。

学生「商店で地元の人たちの交流場みたいな」「あーありだね」

グループごとに話し合っていた学生たちからは、いろいろなプランが出てきます。

学生「自分たちのグループは桜を持って行って現地の人に見せたいなと思いました」「ティックトックを撮って、ここには水のウーバー(配達)があるよとか、ここは一日こんな風に生活してるよとか日本との違いを発信できるかなと」

#IMAGINEおきなわ vol.26「双方向の国際協力 沖縄とケニアつなぐ」

下川樹也さん「実際レポートして皆様にお届けしたいと思います。楽しみに待っていてほしいと思います」

現地の様子を動画でSNSに投稿したり、祭りを開いたり。次回の渡航に向けて、実現可能そうなアイデアを見つけ出していました。

下川樹也さん「僕が国際協力で思っていることというか、伝えたいっていうのは心なんですね。現地の人たちとどのくらい心でつながることができるか」

国際協力のあるべき姿を力説する下川さん。現地の人たちと関係を築こうと、ファッションショーなどイベントやラグビーチームを結成するなどしてきました。そんな中で、ある出来事が起きました。

下川樹也さん「日本はすごく裕福な国だと彼ら(ラグビーチームのメンバー)は思っている。けれども『裕福な人ばかりじゃない』『1日に1食しか食べられない、そういう子どもたちも日本にいるんだ』という話をしたんですね」「彼らは1週間後にもう一度僕をグラウンドに呼んで一つのプレートを持ってきました」「彼らが50円とか100円とか、たくさんの人から集めて、1万シリングにして、この1万シリングをケニアの人たちから沖縄の子どもたちにドネーションを届けてほしいと」

#IMAGINEおきなわ vol.26「双方向の国際協力 沖縄とケニアつなぐ」

ケニアの通貨、1シリングは現在のレートでは、日本の1円とほぼ同じ価値で、寄付額はおよそ1万円。現地では月収に相当する額だといいます。

下川樹也さん「国際貢献っていうのは絶対、一方通行じゃだめだと思っています」「彼らが日本の子どもたちに向けてのドネーションというのは一つの完成形だと本当に思う」

下川さんはこうした水供給を軸にした様々な事業の展開をパッケージにして、アフリカで広めていく計画を立てています。2カ所目の設置に向けて取り組む中で、今後の目標を大きく掲げます。

下川樹也さん「2033年までにアフリカ全土で100カ所のハーベストパラダイスを作る。これが僕たちのビジョンです」「多くの人に言ったら笑われるような数字なんですけれども」「最初の1カ所目も笑われるような状態でしたでも僕たちはすでに企業と協力して、1カ所目を完全に完成させているんですね」「1カ所目ができるということは、絶対に2カ所目もできると思っています」「2カ所目ができればきっと10カ所目もできて、10か所できれば加速度的に100カ所と必ず広がる」「全力でそれに向かっていく」

#IMAGINEおきなわ vol.26「双方向の国際協力 沖縄とケニアつなぐ」

下川さんが目指す双方向の国際協力。およそ40年にわたってアフリカで水を注いできた努力は花咲き、実ろうとしています。

下川さんは、ケニアの人たちが沖縄の子どもたちに寄付してくれたお金について「大切に届けたい」と話していました。「情けは人のためならず」という言葉がありますが、ケニアの人たちに下川さんの思いが伝わったために起きた出来事だとおもいました。

一方で安全な水の供給は世界中で課題になっていて、SDGsの目標の一つにもなっているんですね。蛇口をひねれば水が出てくる生活を私たちは享受していますが、それは当たり前ではないんだということを改めて意識する必要もあるとおもいます。