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キャスター:さて、こちら(タイムス6月21日付け1面)をご覧ください。「沖縄戦『伝わらず』6割」。戦後75年の「慰霊の日」を前に、沖縄タイムスと朝日新聞が沖縄戦体験者にアンケート調査を実施した結果をまとめて分かったものです。

キャスター:いくつか質問項目はあったのですが、それによると、全体の62.5%の戦争体験者が、沖縄戦の体験が次の世代に「あまり伝わっていない」「まったく伝わっていない」と答えています。

キャスター:そのうえで、沖縄が将来再び、戦場になる可能性が「大いにある」「ある程度ある」と思う人が58.8%にも上ったというんですね。

沖縄タイムス・阿部さん:まず、あの沖縄戦を生き抜かれたお年寄りに、このような心配をさせてしまっていることを、下の世代として、とても申し訳なく思います。

阿部さん:「伝わっていない」と思うのには二つの要因があると思います。一つ目はとても伝えられない、口にできない、悲惨な体験だったということ。同じアンケートで、戦場で見た光景や家族の死については十分に伝えられていない、という回答がありました。

阿部さん:体験者に「伝わっていない」と思わせてしまう理由の二つ目は、体験を受け継ぐ私たち下の世代の想像力、感受性がまだまだ足りないということかもしれません。

キャスター:そのうえで、継承するためには何が必要だと思いますか?

解説 沖縄戦の継承を考える

阿部さん:はい。こちら(6月10日付・沖縄戦跡247カ所消失)の記事を見て下さい。これは、10日付の記事ですが、県内41市町村に沖縄タイムスがアンケートした結果、沖縄戦の歴史や傷跡を今に伝える、戦争遺跡が道路整備や住宅建設などの開発で、少なくとも247カ所がなくなってしまったというものです。

キャスター:戦後75年が経ち、戦争を語る体験者が高齢化するなか、戦争の傷跡を伝える場所が消えつつあるのも沖縄戦の風化につながりかねないですよね。

阿部さん:そうですね。住民が身を隠した壕、破壊の跡が残る建物など、戦争遺跡は、その場所に立ち、たとえば岩や壁に触れるだけでも、いかにあの頃の人たちが苦しかったか、追体験できる場所でもあるわけで、立派な語り部です。

今、首里城地下にある第32軍司令部壕の公開を求める声も上がっています。行政には積極的に戦争遺跡を保存し、公開する努力が求められます。

キャスター:行政と同時に、今、私たちにできることは何でしょうか。

阿部さん:実は慰霊の日のきのう、気になる出来事を取材しました。夜明け前の暗闇の中、陸上自衛隊の幹部らが、「黎明之塔」を集団参拝しました。沖縄戦で日本軍を指揮した牛島司令官らを祭る塔です。

阿部さん:牛島司令官は沖縄を犠牲にする捨て石作戦に住民を巻き込み、時には、住民を虐殺することもあった日本軍の総責任者です。

阿部さん:日本軍とは違う、という名目で戦後出発したはずの自衛隊がその人物に敬意を示し、いつの間にかDNAを受け継ごうとしていることは、まさに戦争体験者アンケートで心配されている、再び沖縄が戦場になる道ではないか。基地問題を含め、沖縄には沖縄戦から地続きの現在があります。私たちには、過去も現在も、学ぶ責任があると思っています。

キャスター:およそ24万人の命が奪われた75年前の沖縄戦の記憶を、私たちは考え続ける必要があります。