さて、きょうは盆の送り、ウークイ。そこで登場するのが、こちらのウチカビです。「あの世のお金」言われるウチカビがどんな風につくられるのか、あの世の紙幣の造幣局に潜入しました。

沖縄県中部にある県内唯一の工場。この日は、間近に迫った旧盆に向け、生産はラストスパートを迎えていました。

女性作業員「忙しいです。とても忙しいです。」

作っているのは、「ウチカビ」。「あの世のお金」なんです。ここは県内唯一のウチカビ製造工場。秘密に包まれた「あの世の造幣局」です。

昭和製紙営業部・城間盛孝(しろま・もりたか)係長「一つひとつ丁寧に作っていますので、真心込めてあの世に送ってほしいなと思います。」

ウチカビは、お盆や墓参りのとき、あの世のご先祖さまが向こうでお金に苦労しないようにと、この世の家族から送られる、いわば仕送りです。

どうやって送っているのかというと、燃やして天に昇らせているのです。諸説あるものの、あの世ではウチカビ1枚あたり2000万円の価値があるとも言われています。

女性「家族からご先祖様に、お小遣いとして、あちら(あの世)で使ってくださいという気持ち。」

男子高校生「(Q.どういうことに使ってほしい?)おいしいもの食べたりとかです。見守ってくれてるんで。」

沖縄大学・前田舟子(まえだ・しゅうこ)講師(琉球史)「(福建省の先祖が)1392年に福建省から琉球にわたってきたので、おそらく彼らの風習とかも根付いていく中で琉球に広まったのかなと。あと、逆に琉球人が中国・福建省によく滞在しているので、そこでの風習を見て、琉球人が持ち帰っている可能性もある。」

ウチカビの風習は1000年以上前、中国がまだ唐の時代に始まり、その後、東アジアの国々に広まったと言われています。

沖縄大学・前田舟子(まえだ・しゅうこ)講師(琉球史)「特に台湾だと種類がとても豊富で、神様に対しては金箔を貼ったウチカビを使っていて、神様以外の祖先とか人間に対しては銀箔を貼ったウチカビを使ってます。祖先だけじゃなくて、悪い気を払う意味でも、鬼払いの意味でも、例えば新しい店をオープンして、その店の前で燃やしている場面もよく見ます。」

台湾人女性「沖縄の文化と台湾の文化はちょっと同じです。」

香港人男性「小さいころこれ(ウチカビ)をやっておりました。」

すっかり県民に根付いた風習ですが、作り方を知っている人はあまりいません。「あの世のお金」がどんな風に作られているのか、再び造幣局に戻りましょう!

原材料は「あるもの」と全く同じです。

昭和製紙営業部・城間盛孝係長「トイレットペーパーも作ってるんですけど、原紙までは一緒です。この原紙を作る原材料も沖縄県内の古紙を利用しております。」

こちらがウチカビのもとになる素材をロールにしたもので、1つのロールの重さは30キロほど。黄金色に染められた紙を世界に1つしかない専用の機械にセット。5枚1組に重ね、最大の特徴である銭の型押しをして、20束にまとめると出来上がりです。

昭和製紙営業部・城間盛孝係長「今はこういうふうに銭形が機械のほうで押されてるんですけど、当初そういう機械がない時は、自分たちで銭形がついた手作りのもので、まっさらの紙に押し付けてたたいていた。色々手作りで作って、それぞれの家庭でウチカビの形があったということを聞いています。」

漢字で「打つ」、「紙」と書いて、「打ち紙」。手作業で紙に銭型を打っていたことから、その名前が付きました。作業の機械化が進んだ今も、最後の仕上げだけは手作業なんです。

従業員「燃えやすいようにほぐしています。」

一つひとつ心を込めて、丁寧に束にまとめます。この工場では昨年度、およそ7800万枚のウチカビを生産していて、あの世での価値はなんと1500兆円にもなるのです。

昭和製紙営業部・城間盛孝係長「沖縄県内唯一の製紙工場になっていまして。製造を途絶えてしまったらいけないので、ずっと製造していきたいと考えております。」

ウチカビという風習は、あの世で暮らす祖先を思う県民の心そのもので、それを支える秘密の工場の存在があったのでした。