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こちらの数字をご覧ください。「61万3000人」これは、今年3月に内閣府が発表した、40歳から64歳の、”中高年だけを見たひきこもり”の推計人数です。最近、ひきこもり者が関係する事件が相次いだことから、社会的にもクローズアップされています。

実は誰にでも起こり得る身近な問題でした。17年間ひきこもりだった男性を取材しました。

宜壽次大樹さん「中にはすごくいい香りがするお花もあっていい匂い嗅ぎながら仕事できるって、「幸せだなあ」と思う。」

本島中部の園芸農家で働く、宜壽次大樹さん(41)

Q基本的には毎日?宜壽次大樹さん「毎日やって、できないときは「お休みします」という条件で働かせてもらってすごく安心して働いている。」

すごく安心して働いている。

笑顔で手際よく作業をこなす宜壽次さんですが、実は20代前半から17年間、ひきこもりの経験があります。

宜壽次大樹さん「ある日突然、朝起きたら体が動かなくなって、「体が動かないぞ」って思って、次に生きる気力がなかった。」それまで楽しく仕事もしていたという宜壽次さん。彼を襲ったのは「うつ病」でした。

宜壽次大樹さん「うつ病」という言葉も認識もなかった時代に、生きる気力もないし、人にも言えない、恥ずかしいという気持ちで、毎日夜は寂しくて泣く日々。ふつうの人は朝を迎えたら気持ちいいとなるが、うつ病で引きこもっている自分にとっては地獄だった。」

次第に、やりきれない気持ちが溜まり、家族に不満をぶつけることもあったといいます。

宜壽次大樹さん「同じ年ごろの人は結婚して子供出来て幸せな家庭を持っているのに、何で自分だけひきこもってみじめな思いをしないといけないのかという悲しい気持ちでいっぱいだった。」

その後、自分ではどうしようもない、17年間のひきこもりから宜壽次さんは回復します。そこにはある友人夫婦の存在がありました。

宜壽次大樹さん「もし安里夫婦と出会えなかったら自分はまだうつ病、ひきこもっていたのかなと思う。」宜壽次さんと20代の頃からの友人という、安里慎也さんと愛さん。宜壽次さんが働く農園を経営しています。

安里愛さん「親しみやすいから、みんなとも冗談言ってやってて、急に落ち込んだ。」

安里さん夫婦

宜壽次さんの変化に気づいた安里さん夫婦はドライブに誘いだしたり、自宅に招いたりしまして話を聞きました。そして何よりも、宜壽次さんを救ったのが…。

宜壽次大樹さん「大樹、引きこもってるけど大丈夫だよ。たくさん休んで。治った時にとても忙しくなるから、引きこもっておいて。充電期間だから」と言われたときに「これって引きこもり期間じゃないんだ、休み期間なんだ」とこの言葉が治るきっかけを与えてくれた。」

宜壽次さんは今でも、常に励まし続けてくれた愛さんからのメールを大事にとっています。

宜壽次大樹さん「これが自分の宝物。落ち込んだ時にこれを見て「よし頑張ろう」となる自分の一番の宝物ですね。」

ひきこもりという長い葛藤や苦しみからようやく開放された宜壽次さん。一方で、最近、世間の目に再び心を痛めました。

宜壽次大樹さん「そういう事件やニュースを見ると本当に心が痛いです。」今年5月、川崎市でスクールバスを待つ児童らが次々と殺傷された事件。容疑者はひきこもり傾向にあったことが報じられました。さらに、その4日後。ひきこもりがちで、家庭内暴力があった長男を父親が殺害した痛ましい事件。

それ以降、県内でひきこもりの家族を支援する団体には多くの相談が寄せられたといいます。

近藤さん「相談件数は非常に増えていますし。親から心配だ、どうしたらいいんでしょう?という相談がものすごく増えています。」

ひきこもりの当事者や家族からの相談を受ける「てぃんさぐぬ花の会」。事件後、相談件数は2倍になりました。

近藤さん「一番言いたいのは、引きこもりが原因でああいう事件になったというのは困る。事件を起こすようになる前までどういう状態だったのか?ということを考えてそれに対する対応が必要だと思う。」

「てぃんさぐぬ花の会」では、それぞれが抱える悩みや課題を共有し合うことで、解決の糸口を見出すことを目的としています。

近藤さん「ひきこもり」と一言で言ってもいろんな人がいて十人十色。みんな違うんですよ。実はひとり1人違って、たいてい何か(原因を)持っている。それがうつ病であったり、統合失調症、あるいは発達障害(会は)苦しんでいる、苦しんできた家族のかたがたくさんいるので、来ていただくだけでも気分的に違ってくる。ぜひこの場を活用してほしい。」

来ていただくだけでも気分的に違ってくる

ここからは取材にあたった比嘉記者です。

比嘉記者「はい。内閣府の推計をもとに県が試算したところによると、県内でも40歳から64歳の引きこもりの人は、およそ7000人いるとされています。特に最近では、ひきこもりが長期化・高齢化しています。

子どもを抱える親は80代、当事者は50代といういわゆる「8050問題」ですよね。

比嘉記者「はい。取材した「てぃんさぐぬ花の会」の近藤さんはこういったことを指摘しています。」「まずは、ひきこもり専門のカウンセラーがなかなかいないこと。ひきこもるきっかけで最近多いのが、転職・退職なんですが、更にその背景には発達障害やうつ病などがあり、家族や当事者も、それに気づかないことも多いそうです。こうした多様な状況に対応できる専門機関やカウンセラーが少ないそうなんです。」

そして、回復後の居場所、ですね。

比嘉記者「はい。ひきこもりの方が回復しても、安心して行ける場所や、働く場所が少ないと指摘します。」「障害者雇用の枠には該当しなかったり、勤務の日数や時間など徐々に社会復帰していく環境は少ないのが現状です。」

そして3点目に、悪質業者の問題。これは?

比嘉記者「実は今、多額な費用で親から子どものひきこもり回復を請け負い、無理矢理当事者を家から連れ出すという”引き出し屋”といわれる業者が全国で問題となっています。」「てぃんさぐぬ花の会」によると、県内でもそうした業者がセミナーを開いていたことがあるそうです。」

当事者も、家族も悩みが深刻なだけに、それに漬け込む業者も出てきているんですね。

比嘉記者「はい。取材した宜壽次さんは実は、「てぃんさぐぬ花の会」で家族会の話を聞いて経験を話す活動をしていますが、『ひきこもりは誰にでも起こりえるもので、もっと当事者や家族がひきこもりや障害、心の病気についてもっとオープンに話せる環境が必要』と話していました。」

「てぃんさぐぬ花の会」、そして県が設置する支援センターの問い合わせ先

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