※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

きょうはこの後の名勝「識名園」からの中継にも登場する、高校生の双子の兄弟が主人公です。今から300年前の琉球王国時代に初上演された、沖縄の伝統芸能「組踊」。その若き継承者の物語です。

「組踊」。琉球王国時代に、中国の使者としてやってくる冊封使を迎え、接待するために、踊奉行、玉城朝薫によって生み出されたエンターテインメント。1719年に初めて上演され、ことしで300年を迎えます。

1972年、国の重要無形文化財に指定。2010年にはユネスコが指定する重要無形文化遺産にも選ばれ、沖縄が世界に誇る伝統芸能です。披露される演目は、親子の愛情を描く人情物や、奇想天外のストーリーなど多彩。この組踊を次の時代に継承する2人の若者がいました。

稽古に励む長髪の2人は、高校2年生の双子の兄弟。どちらかというと柔らかい表情をしているのが兄の森山康人(やすと)くん。きりっとした表情をしているのが弟の和人(かずと)くん。

2人が組踊の世界に飛び込むきっかけは、4歳のころに出席した親戚の結婚式。目にした「かぎやで風」に心を奪われ、小学4年生の時、初めて組踊の舞台を踏みました。幼い頃から一緒に琉舞や組踊に励んできた双子だけに、互いに意識する存在でもあります。

兄・康人くん「ライバルでもあるが、いい関係だなと思います。」

弟・和人くん「(兄の)康人はちょっとゆっくり行動するので、一緒に踊るときは間の取り方が微妙に変わってくるの、でそこは自分が意識してタイミングを合わせて、一緒にがんばっています。」

この日の稽古は、組踊の代表的な演目の一つ、「二童敵討」。父を殺された兄弟が仇討ちをするという物語です。兄と弟が主役の演目だけに、双子の森山兄弟にとってはまさにはまり役です。

鶴松(和人くん)「母の露なみだ思ながしかねて(母の涙を忘れることなく)、あたら敵かたきけふや討たね(大事な敵仇をきょうこそ討とう)。」

亀千代(康人くん)「母も立戻れいつ迄も名残(母上もお帰りくださいいつまでも名残惜しい)。袖に貫きとめて別れぐれしや(袖にとどめて別れにくい)。」

2人を指導する佐辺良和さん。組踊の継承者を育成する「組踊研修生」の1期生で、沖縄芝居でも女形のスターとして人気の役者で、自らも組踊の継承者であるだけに、森山兄弟に期待を寄せます。

佐辺さん「ちゃんと次に指導していけるように育ってもらいたいですし、僕自身もこの子たちをそのように育てていきたい、一緒に勉強していきたいと思ってます。」

300年の伝統を今に受け継ぐ2人がこの後、琉球王国時代に外国の使者を招いた識名園で、組踊の基本である琉球舞踊の舞いを披露します。