509人という数字。実はこれは県内で「若年性認知症」と診断された方の人数です。その実態がまだ社会に周知されていない中、県内で初めて「若年性認知症」だと公表した男性を取材しました。

つながる × 若年性認知症 “記憶”を書き残す男性の思い

いつもの職場を目指す男性。その手には写真つきの手作りの地図が。大城勝史さん(42歳)。40歳のとき、若年性認知症と診断されました。

大城さん「こういうところとか左曲がるって書いてるんだったら左、左、左と思いながら曲がる」

大城さんが若年性認知症だと告げられたのは、2015年4月のことでした。当時、自動車販売会社の営業マンでしたが、お客さんの顔と名前を忘れてしまう、自分の席がわからなくなる、そんな症状に襲われたのです。

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大城さん「たまたま通っていた耳鼻科で先生に悩みがあるということで、私に起きているちょっとした物忘れとか話をしてたら、もしかしたら脳の病気があるかもしれないと」

精密検査の結果、医師から認知症か脳炎の疑いがあると告げられました。ひとまず脳炎の治療を始めましたが…。

大城さん「徐々に自分の中で能力が落ちているのを感じて。疲れやすくなったとか、時間の感覚もどんどんおかしくなってきて」

大城さんの記憶は一日も持たないことが多くなりました。生活には様々な工夫を凝らしています。

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大城さん「なにか忘れないようにするために、こういうところにメッセージボードに書いたり、携帯のアラームで私自身に気づきのメッセージを送ったりとか、あとはメモリーノートを確認したりとか」

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これは、その日あったことや体調を書き綴っているメモリーノート。過去の自分からの伝言が記されています。

家のいたるところには自分へのメッセージが。ここにも、ここにも。

病気を告知されたときから、ブログも始めました。そこには記憶を失っていく苦しみ、将来の不安などが記されています。

『今日のこと、昨日のこと・・・分からない。点の記憶は、繋がりがあるのか全く別なのかさえ分からない。こんな状態で、本当によくなるのだろうか』

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大城さんは今も、病気になる前と同じ職場で働いています。持ち場は「営業」から「洗車担当」に代わりましたが、同僚たちに支えられながら、ひとつひとつの仕事に精一杯こなしています。

大城さん「ひとつひとつ確実にやること。マット洗うときはマットだけ一枚づつ出して、窓だけだったら窓だけ拭いたりとか」

同僚・大見謝さん「勝史が出勤してから帰るまではみんなでサポートという形で、危ない場合にはこうしたら危ないとかですね。大城勝史は基本的に気持ちが前向きですから。その状況に負けないで頑張っているのがすごいと思います」

彼が前向きに生きられるのは、理解してくれる仲間たち、そして家族の協力があるからです。会社や病院に行くときに持ち歩いている地図。進行方向や曲がり角などが細かく書き込まれているこの地図は奥さんの手作りです。

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大城さん「大変だったと思いますね。これ作るのも。できない自分にイライラして当たり散らすこともあったと思います。そういう部分でもぐっとこらえて我慢して見守ってくれてると思うから」と話していました。

父・義健さんも認知症と向き合う息子の姿を見守っています。

父・義健さん「入退院が大変だったと思う。自分も見舞いに行きましたけど。やっぱりわからないからね、その苦労は。その時が一番苦しかったんじゃないかな。すすんで、親、兄弟が助けてあげないと、その状況よくはならないし、良くするためには家族、兄弟が力を貸すことが大事じゃないかな」

大城さんが若年性認知症だと公表したのは、もっとこの病気について理解してほしいからだといいます。

大城さん「(認知症に関する)本なんかにもできないことは書いてある。あれができない、これができないと書いてあるんですけど、その中でできることは書いてないもんですから、みんな極端なイメージを持つのかなと」

実際、淡々と仕事をこなしているように見えても、病気の進行を実感することの連続、脳が疲れやすいため仕事中も強い眠気に襲われたり、すぐに体調を崩してしまうのです。それでも1日に2回、15分程度の仮眠をとるなど、仕事の仕方を変えて自分のペースでやれる方法を探しています。

大城さん「認知症だから何もできないではなく、サポートとか本人の努力次第ではできることもいっぱいありますので」

『認知症だと診断されたら人生が終わってしまう』最初はそう思って落ち込んだと言う大城さん。今は、ひとつひとつできることを見つけて、精一杯、前を向いて歩いています。

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