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久田記者「滑走路の北側から、旅客機が1機、着陸態勢を取って侵入してくるのが分かります。その横では2機の旅客機が離陸を待っています」

Q+リポート なぜ?那覇空港増設に県外石材を

滑走路が1本の空港としては離着陸回数、旅客数とも、全国で2番目に多い那覇空港。第2滑走路の建設は安全面からも急務とされるほか、経済界も強い期待を寄せます。

県経営者協会 安里昌利会長「(沖縄でも)非常にスピーディーなインフラ整備が出来ているなと思う」「空港と港湾の整備。これをやることによって、他の物流拠点より有利な環境になる」

こうした中事業を進めている国は、ことし4月、ある計画変更を県に届け出ました。

「夏までに県外産の石材を搬入し、工事を急ぎたい。」

国は、護岸工事に使用する石材のおよそ2割を、県外から調達したいと県に申請。その理由として、冬場の悪天候による工事の遅れをあげています。

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しかしこれには、県内の砕石業者の間で動揺が広がりました。県内業者10社は、この事業のための事業組合を結成し、これまで20億円以上を投資していたのです。計画変更となれば、石材の2割分の受注を失うおそれも出てきた組合の代表者らは、石材は県内で十分生産可能だと強調しました。

琉球セメント比嘉部長「出荷できる能力自体は持っていますよということです。こういう工程なので、これに対応できるように設備投資、設備をということだったんで、これだけの量を使うからという前提で僕ら設備投資したんで、この辺についてはちょっと、僕らも納得しがたい部分があるにはあります。」

久田記者「切り出した石材が続々と大型トラックで港へ運ばれていきます。現場は休日も返上で作業しているといいます。」

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石材を産出する山の正面にある、本部町の塩川港では、先月、5月に比べ倍近いペースで出荷された石材が、山のように積み上げられていました。

トラックの運転手さん「(もう毎日毎日ですか?)毎日ですよ」「交代制で、交代制でやってます。」「日曜日も、今月から。」

塩川港からは、去年3月から1年あまりをかけ、70万立方メートル、ドーム球場の半分以上を埋めるほどの石材が出荷されました。

「石材の調達先は県内を想定しており」「最も実績のある北部地域の組合にヒアリングを行った」「本事業における石材の調達は十分可能」

当初国が作成した資料からは、国が当初、県内からすべての石材を調達できると判断していたことや、冬場に波が荒れることによる作業の遅れも、ある程度想定していたことが伺えます。

Q+リポート なぜ?那覇空港増設に県外石材を

しかし国は県に対し、護岸に必要な石材の8割を今年度中に搬入したいと方針を説明。そのため県内石材だけでは足りず、県外の石材も必要だとしています。しかし、護岸を締め切るのは再来年度末と予定されるなか、なぜ今年度中に8割までを搬入するのか。変更案は、石材の搬入ペースが先月までの4倍となる、極端なものです。

県は、国に対し、それほど工事を急ぐ理由を繰り返し質問していますが、合理的は説明はまだないとしています。

===記者解説===

倉持:取材した久田記者に聞きます。久田さん、那覇空港の第二滑走路の計画変更、改めてどういう計画なのか教えてください。

久田:はい、国の変更案は、護岸工事を急ぐため、「すべて県内調達」としていた石材を、「ことし夏までに一部石材を県外から調達」という内容です。その調達元と言われるのが、奄美大島なんです。県の内部では、「再来年度まで護岸工事の工期はあるなかでなぜ、県外の石材が必要なほど搬入を急ぐのか」、不可解だという声があがっています。私は沖縄総合事務局に取材を申し込みましたが、「コメントすることによって審査に影響があってはいけない」との回答でした。

倉持:奄美というと、辺野古の埋立て土砂の搬出元にもなる計画ですよね。これは偶然なんでしょうか。

久田:辺野古の土砂を出荷元になるとされている奄美大島の砕石業者に取材したところ、那覇空港向けの石材の仕事があるという噂はある、ということは言っていました。

倉持:どちらも大量の石材、土砂が県外から入ってくる事業ですが、今県議会で議論されている、埋立て土砂の規制条例は関わってくるんでしょうか。

久田:国の計画通りに進めば、規制の対象からは外れます。条例が成立すると11月から施行されますが、国は那覇空港に使用する石材を10月末までに搬入したいと説明しているからです。つまり、条例の網がかかる前に、那覇空港については、県外から石材が入ってくる、ということなんです。

久田:心配なのは、「那覇空港で石材を受け入れるのに辺野古ではダメと言うのはおかしい」とか、反対に「辺野古の埋立てを止めるために那覇空港の石材も拒否すれば那覇空港の工期が犠牲になる」という論調がすでに出てきていることですが、この2つは元々が別の問題です。一緒くたに議論してしまわないよう気を付けたいところです。

久田:そして、大量の土砂、石材を生産する側も受け入れる側も、環境への負担は非常に大きいものがありますから、きちんとした手続きを経て作業が行われていくか、今後しっかり見ていく必要があります。