きのうから特集でお伝えしています、陸上自衛隊の配備を問う与那国島の住民投票。

「賛成多数」の背景には、人口減少という問題と国防という大きな計画の狭間で苦悩する与那国の人々の姿がありました。崎元酒造所・工場長稲川宏二さん

崎元酒造所・工場長稲川宏二さん「やはり島の生活の中にお酒はつきものですので、仕事というか島のために頑張っていかないといけないなという気持ちを持っていますので、楽しい仕事ですね」

与那国町にある酒造所の工場長、稲川さんは、酒造りに携わって20年。八重山諸島の中でも、わずかしか残っていない昔ながらの蒸留機を使い、従業員5人で、90年続く島の味を守っています。

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崎元酒造所・工場長稲川宏二さん「自分たちでつつましくでもしっかりやっていく。本当の基本的な生活をする力を持っている島なので、そういうところはしっかり残して子どもたちにも伝えていかないといけないんじゃないかなと思います」

緑豊かな森と、海に囲まれ、農業やカジキ漁など、自然と共に暮らしてきた与那国の人々。

しかし、その生活も、時代の流れの中で変わってきました。

カジキをさばく女性「(若者が)帰ってこないのに。学校がないから、高校入ると旅にでますよね。卒業、大学卒業しても、与那国で就職やる人がいないんだよ」

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与那国の人口は、戦後一時は1万2000人とも言われていましたが、減少の一途をたどり、現在はおよそ1500人。現在、第一次産業を支える180人のうち、およそ半数が60才以上です。そんな中、6年半前、町議会は、島の発展の切り札として、自衛隊誘致を決議し、外間町長が政府に配備を要請しました。住民は賛成、反対で二分。自衛隊誘致を争点とした前回の町長選で外間町長は再選を果たしました。票差はわずか47票でした。

あれから2年。歯止めがかからない人口減少の中、当初、配備によって島の自然が壊されるのではないかと心配していたという観光協会の会長も賛成の立場です。

賛成派の期待の声観光協会・新嵩会長「その人たち(自衛隊)が来ることによって嗜好品が消費されるじゃないですか。たばことか。観光だけじゃなく、多岐にわたって経済効果が起きてくるんじゃないですか?」

一方、政府にとって与那国島への配備は、あくまで南西諸島の防衛強化が狙いです。

リポート大矢英代「あちらの高台が、自衛隊のレーダーが配備される予定地です。その真下には、人口およそ460人が暮らす久部良地区があります。」

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国は、近隣を航行する外国船の監視のための沿岸監視レーダーの設置を計画。先月、町と防衛省がレーダーによる人体への影響についての住民説明会を開きました。会場からはレーダーへの不安の声があがりました。

質問する住民「想定外のことが起きているんですよ。それが世界一安全と言われる原子力発電所がいとも簡単に壊れているんです。それがものすごく私の頭をよぎっているんです。」

回答する防衛省の職員「これまでもそういう事態は一件もありませんので、仮にあった場合には、万全の体制をとる形で、みなさんとご相談させて頂きたい。」

与那国の経済は、島のものづくりの力で支えていけると考えている稲川さんは、島が国防という大きな計画の中に組み込まれていくことに、疑問を抱いています。

崎元酒造所・工場長稲川宏二さん「全く中国や北朝鮮や台湾などからの侵略の不安を感じたことがなく、平和に暮らしているんですね。なぜか知らないうちにここが脅威のところだと」

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そしておととい。与那国の町民の半数が選んだのは「賛成」。票差は187票でした。

崎元酒造所・工場長稲川宏二さん「正直思った以上に票差がついたなと思ったんですけど」

投票の翌朝、反対の看板を回収して回る、稲川さんの姿がありました。配備に反対という気持ちは変わらないものの、具体的に何をすべきか、見えないままだといいます。

農家の男性「(Q必ずしも自衛隊でなくても良かった?)自衛隊でなくても。そうですね。とにかく人口が増えればという考え。それと職場ですね」

町長「(Q自衛隊ではない道もあったということで宜しいんですか?)それはそうですね、確か平成17年に交付金がカットされてきたんですね。もうもがいてもがいて、もがいてもどうしようもない。どうしてもなんらかのインパクトがなければならない。それに自衛隊しかないんじゃないかということで」

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戦前、沖縄を代表する作家、伊波 南哲は、与那国島を讃える詩を贈りました。

「南海の防壁・与那国島」「皇国南海の鎮護に挺身する沈まざる25万噸の航空母艦だ」

島の名所に掲げられたその詩は、国防の要として歩み出した与那国島を静かに見下ろしています。