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初夏を予感させるこの時期、県内各地で伝統行事のハーリーが開催されますが、まもなくその海が埋め立てられ、これが最後のハーリーになってしまうかもしれないという地域があります。名護市辺野古区が普天間基地の移設先とされてから18年。大きな節目を前にした区民たちの思いを取材しました。

力強く漕ぎ出す船。今月25日、名護市辺野古の海で年に一度のハーリー大会が開催されました。

検証動かぬ基地vol.133 辺野古ハーリー 地域の人々の思い

辺野古区青年会川上将吾さん「もう最高ですね。地域の人が一丸となって年一度の行事楽しんで。この日ばかりは嫌なこと忘れて競技に熱中して。とても楽しいハーリー大会だと思います」

80代女性「もっと若ければ乗って太鼓叩きたいですけどね。海のおかげでね祖先なんかが海を残してやってるから、この行事は非常に大切ですよ」

普段は静かな辺野古区ですが、ハーリーの時には、地元を出て行った若者たちも帰って来てにぎわいを見せます。また、基地を抱える地域とあってアメリカ軍の兵士やその家族も参加し、この日ばかりはみんなでレースに熱中するのです。

米兵「3位だったけど、とても楽しかった。みんな良い人ばかりで感謝してるよ。ありがとう」

検証動かぬ基地vol.133 辺野古ハーリー 地域の人々の思い

この地にキャンプシュワブができて50年。こうしたアメリカ軍との交流は、基地の中でも行われています。ハーリー大会の1週間前、シュワブで開催されたフェスティバル。兵士による格闘技のパフォーマンスや軍用車両の展示は、基地の催しならでは。

家族連れのお母さん「普段見れないこういう乗り物ちょっと見てみたいなと思って。あとこの子たちにも見せたいなって。はい」

女子大学生「基地の問題はあるけど、こうやって触れ合えるのはいいと思います」

しかし、ことしはこれまでとは違う複雑な思いでこの場を訪れた人もいました。

西川征夫さん「今年ここでやるのが最後だろうという思いがあって、写真を撮らせてもらおうかなということで、今来ておりますけども」

検証動かぬ基地vol.133 辺野古ハーリー 地域の人々の思い

仲井眞知事「基準に適合していると判断し、承認することと致しました」

去年12月、知事が埋め立てを承認したことを受け、政府はこの秋にも辺野古沿岸部の埋め立て工事を始めようとしています。そして、まさに大会が開催されているこの浜も工事が始まれば、作業ヤードとして埋め立てられることになっているのです。会場には埋め立て工事に関わる沖縄防衛局からも2チームが姿を見せました。

沖縄防衛局幹部「(毎年参加されてるんですか?)そうです。我々も仕事でずっと地域と一緒にやってきてますので、当然地域との懇親も含めてみんなでこうやって一緒に食事しながら、なおかつハーリー出るというね、喜びもありますからねみんなね」

本当にこのままこの海は埋め立てられてしまうのか。今年が最後のハーリーになってしまうのか。様々な思いが交錯する中、大会はクライマックスを迎えます。

区民の人達「もう最高ですもう1年の最高のハーリーこれ」「息子たちが3人入ってますよ3名出てます。頼もしいです」

検証動かぬ基地vol.133 辺野古ハーリー 地域の人々の思い

優勝チーム「しんどぅー(船頭)が良かったので1位になれました。エンジンがみんないいので。ありがとうござます。うれしいです」

飯田昭弘商工会長「実際にこういうイベントがあると賛成も反対もないんですよみんな生き生きとして、ひとりひとりの顔が生き生きとしてるわけです。これがわれわれの辺野古ですよという事」

基地問題をめぐり、二分されてきた区民が年に一度心をひとつにするハーリー大会。しかし、実際に埋め立てが始まれば、この海がそしてこの辺野古区がどうなってしまうのか。誰にもわからないのです。

70代女性「こっちまでは埋め立てないよ。ハーリー大会毎年あるよ来年も来てまたずっと続くよ」

西川征夫さん「やはりこれがなくなる。この場所でなくなるというのがですね。非常に残念だなという思いでなりません」

検証動かぬ基地vol.133 辺野古ハーリー 地域の人々の思い

徳田真一青年会長「こういった自然の海ですね、が、使えなくなるんであれば、まあ。ちょっとさびしい思いっていうのかな。そんな思いもあります。仕方ないといったら仕方ないですね」

名護漁協古波蔵廣組合長「国策として来るならば、僕はいつでも言ってるように、区が地域がマイナスにならないような対応をしなければいかん。だから、いろいろ気持ちとしては複雑な面もあるけどもそれはそれで、これからクリアしていかなければならない立場だからね」

嘉陽宗克区長閉会のあいさつ「来年もまた皆さんが元気でこの大会に参加できるようにご祈念申し上げます。本日はありがとうございました。」

この場所で、再びこの光景を見ることができるのか。辺野古に打ち寄せる波はまもなく大きなうねりに変わろうとしています。埋め立てでなくなってしまうかもしれない地元の祭りと今後普天間基地が移ってくることで、大きくなっていくかもしれない基地のフェスティバル。基地の存在がその土地の人々の暮らしに影響を与えるというのは紛れもない事実です。