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沼尻アナ「これは犬用のコートなのですが街中で見かけたことがありますか?」

このオレンジのコートを身に着けた「聴導犬」というのは聴覚障害者に生活に必要な音を伝える大事な役目を担うことができるんですが、非常に認知度が低いんです。その現状と原因について取材しました。

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真剣な表情でパソコンに向かっているのは漫画家の上原麻奈未さん。小さいころから抱いていた漫画家という夢を諦められず、子どもを出産してから勉強しなおし、念願の漫画家になりました。

上原さんは生まれつき耳が聞こえません。その上原さんに代わって生活の音を聞いて伝えているのが、聴導犬「けい」です。

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チワワの「けい」は先月、初めて沖縄で行われた認定試験に合格し、聴導犬となりました。

聴導犬とは、盲導犬・介助犬と並ぶ障害者を支える補助犬の一種で、生活に必要な音に反応し飼い主にタッチするなどして知らせてくれます。

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今回、その仕事の一部を実践してもらいました。その他にも聴覚障害者の生活に合わせて様々な音を覚えることができます。音を覚える数に限界はありません。

また「聴導犬」に認定され、コートを着用することでバスや電車など公共交通機関にも同伴できるようになります。その際には、他のお客さんに迷惑をかけないよう、足元でおすわりしているよう訓練されています。

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またスーパーなどでの買い物に同伴することも可能となり、その時も決して食べ物にひかれることなく、おとなしくしています。

聴導犬としてきちんと仕事をこなす「けい」、県内では2頭目です。1頭目は、上原さんを7年間支え続けた「まつ」で「まつ」が引退し、跡を継いだのが「けい」です。つまり、現在、県内ではここにしか聴導犬はいないのです。

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聴導犬の数は全国的にみてもまだ多いとはいえません。全国で42頭。聴導犬の訓練自体は1981年から始まっているにもかかわらず、それからおよそ30年後の現在でも聴覚障害者の数に対し聴導犬が非常に少ないのがわかります。

聴導犬が普及しない原因について、日本聴導犬協会の有馬会長は聴覚障害者そして聴導犬が社会から理解されていない現状があると言います。

日本聴導犬協会・有馬もと会長「耳の不自由な方が生活に問題があるということ自体、あまり知られてないということだと思うん。そうしますと聴導犬の補える働きというのが見えてこないので、聴導犬の働きがわかりにくいっていうことがあると思う。耳の不自由な方にとっては情報が来ないということは命にかかわること」

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行政においても、聴覚障害への理解は進んでいない現状があります。上原さんは県に補助金の申請の時に担当者に「1頭目のまつ君の時の県に助成金の申請の時、担当の方に『聴覚障害者』より盲目の人の方が、緊急性が高いと言われたことがありました」と後回しにされました。

想像しづらく、なかなか理解されない音のない生活。県聴覚障害者協会で災害ネットワークを担当している田中雄喜さんは、音のない生活の中での不安や危険をこう語ります。

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田中雄喜さん「建物の中で災害が起こった時に、警報機というものが備え付けられていますよね。実を言いますと2年前、3・11の時に福島に住んでいました。その時とても困ったのは、やはり地震についてのいろいろな情報がほとんど音での情報であったので、大変困りました。いろいろな不安を抱えながらの生活ということになると思います」

聴覚に障害を持つ人の不安を解消してくれる聴導犬が、なかなか理解されない現実。上原さんに社会に思うことを聞きました。

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上原さん「今も聴導犬などの補助犬の同伴を断るお店が絶えません。補助犬は「犬」ではなく「耳」であるので、私の一部として同伴を認めてほしいと思います」

最後に上原さんに、聴導犬「けい」との生活を絵に描いてもらいました。そこには安心して暮らす上原さんと、奮闘する「けい」の姿がありました。上原さんは、これから聴導犬が普及し安心して暮らせる社会が広がってほしいと願っています。

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耳の不自由な人に安心を与える聴導犬なのですが、なかなか普及しないのが現状なんですね。

沼尻アナ「その原因に聴導犬に関する誤解もあります。育成団体が犬を選び、訓練したものが聴導犬として貸与されるのですが、以前は障害者自身が訓練費用を負担していました。ですから現在でも聴導犬は高いイメージがあります。しかし現在は日本聴導犬協会から無料で貸与されているんです。訓練費用は寄付や募金、国からの補助金で賄っているので、現在は安心して申し込めるようになっています」

そうなんですか。障害者に対してもまだ聴導犬について知られていない部分があるんですね。沼尻さん、私たちにできることはあるのでしょうか?

沼尻アナ「まずは聴導犬の存在を理解することが重要です。聴覚障害は見た目では障害がわかりにくく、聴導犬を連れていることで『耳が不自由』ということを周りに伝えられます。ただ、私たちが聴導犬を知らずにペットと勘違いしてしまうと、その効果はありません。ですから、オレンジのコートを着ている犬が聴導犬であると理解すること、それが耳の不自由な方の安心につながります」