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今年相次いで沖縄を襲った台風。特に8月、9月は3つの大型台風が隔週ごとに接近しました。そしてその台風被害は今も農林水産業や観光業に深刻な爪痕を残しています。台風被害の現状を取材しました。

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9月29日・草柳記者「那覇市内午前7時です。取材中に動けなくなりました。今、木の枠につかまっていますが、猛烈な風で前に進めません」

今年沖縄を何度も襲った大型台風。台風の接近数は11件。その数は1951年以降、2004年の15件に次ぐ過去2番目に多い数です。

その度ごとに欠航が相次いだ海や空の便。いまだ台風の傷跡が残る座間味島では経済的な打撃も大きいと言います。

宮里哲座間味村長「観光事業者の方々相当困っている感じです。これほど夏の繁忙期を含めて、週末に来るというのは非常につらい」

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農林水産業の被害も深刻です。県のまとめによると8月と9月に襲来した3つの大型台風だけでも農林水産業の被害はおよそ50億円に達します。

河合記者「うるま市の伊計島に来ています。台風の影響でこちらのサトウキビは立ち枯れていて、隣のビニールハウスは屋根がまだやぶれたままの状態です」

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パパイア農家・上田秀子さん「(Q:ここは何を栽培されていたんですか?)パパイア。たわわに実っていたんですけど、もう駄目ですね。農協さんもB級でもいいですよっていうんですけど、もう出せるものがないんですよ」

所有する2棟のビニールハウスの修繕にはおよそ300万円かかると言われたこちらの農家。鉄柱さえも曲がり、それを支えるセメントにもひびが入っています。

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さらに、新たにパパイアの苗を植えても塩害のため枯れてしまいました。暴風が運んた塩は、いまだ畑の表面に白く残っています。

上田さん「毎月の収穫はなくても毎月の支払はありますし。もう自分たちの力ではどうしようもないです。ハウス入るのもちょっときついですね、気持ちが滅入ってしまって」

8年前にパパイアの生産を始め、やっと軌道に乗ったところでした。自然の驚異になすすべがありません。

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河合記者「全国的な菊の生産地である糸満市でも、その被害は深刻です。菊の苗を植えていたこちらの畑は一面真茶色。こちらの苗は全滅です」

全国でも40~50%を占める小菊の生産地である糸満市。露地栽培を中心に、総面積のおよそ8割が被害に合いました。

被害は風台風と言われた9月の台風17号に集中。暴風の割に雨がそれほど降らなかったため、運ばれた塩が流されることなく苗を枯らしていき、海沿いの農家に大打撃を与えたのです。

小菊農家「塩かぶって、先がどんどん枯れていった。もう畑に来たときは真っ黒状態でした。(Q:収入は?)ゼロです」「7000坪定植(植えつけ)して1000坪位かな?残っているのは。みんななくなったもんだから、苗もない」

さらに最悪だったのは、台風襲来が正月用の小菊の生産のピークの時期だったということ。

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JAおきなわ・仲門和則さん「大口の農家であれば1000万円以上投資をしたうえで、12月と1月の収入という形があったんですが、その投資をしたのが何も戻ってこないわけです」

この他、8月、9月の3つの台風で、県内のサトウキビの被害はおよそ13億7000万円あまりに達しています。

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一方、大潮と重なり高潮の被害が多くでた台風16号は、本島北部東海岸の水産業に深刻な爪痕を残しています。

国頭漁協・宮城清志理事「スロープがあって、ここから停まっている船まで浮桟橋があったんです。それがすっぽり抜けてしまって反対側に落ちてました」

こちらが台風前の安田漁港です。2つあった浮桟橋。台風16号の暴風と高波はコンクリート製の橋まで流してしまいました。港の脇に放置されたままの浮桟橋は、船の乗り降りや荷卸しに欠かせないものでした。

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海人「少しでも足滑らせたら大変なことになる、大変不便です。網入れる方はみんな70歳以上ですからね。ここに足をおいて、これから上がる。これがなければ全然だめです」

故障した船も多く、いまだ修理待ちのものもあります。製氷施設も浸水し、機械が故障。正月に向け、書入れ時を迎えるこの時期に漁を再開できているのはまだ4〜5割です。

本来、安田漁港は、荒天時に船が避難する避難港に指定されていました。しかし今回の損壊で、施設整備に疑問を感じると国頭漁協の宮城理事は指摘します。

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宮城理事「県の方では風対策ということで(防波壁を)設置している。でもその風対策が全然意味なってないという現状です」

暴風高波対策のため沖縄県が設置した防波壁実は、今年の台風以前にも破損と修理を繰り返していました。さらに今回の高波は、防波壁を超えて打ちあがり、その下のアスファルトを損壊。水の浸食で地面が浮き上がっています。

宮城理事「こういう現状でしたら、少し台風時の避難をみなさん考えるんじゃないですか?避難できないですよね、これだったら。(失笑)もう本当に港自体がどうなのって思うくらいです」

県は国の査定を待って本格的な修繕に入るということですが、作業の開始は来年以降になるということです。

先日、JA沖縄中央会が県に、農家への緊急支援対策を要請しましたが、より早い対応が求められます。

東日本大震災以降、防災減災が叫ばれてきました。沖縄は元々台風襲来に敏感に反応してきましたが、今年の様に過去に例を見ない規模の台風が相次げば、農作物対策、施設の対策等を抜本的に見直す時期にあるのかもしれません。