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2001年に施行された家電リサイクル法。しかし県内では、法律の狙いとは逆に廃家電の不法投棄が急増。この状況を改善するため、リサイクル料金を値下げし、もの作りの段階から素材の再利用を考えた商品開発に取り組む企業の舞台裏を取材しました。

岸本記者「たくさん捨てられてます。この白いものは洗濯機です。その横にはテレビ、こちらもテレビ、あの奥にもあります」「ここはお墓の傍ですが、こちらはクーラー、そちらは冷蔵庫です。そこらじゅうに家電製品が散乱しています」

2001年にスタートした家電リサイクル法。資源の再利用を促し、廃棄物を減らすことを目的とし、違反した場合の罰則も設けられています。しかしー

中城村住民生活課・小橋川富雄係長「年々増えてるのが現状です」

処理費用を支払わず、海や山に廃家電を捨てる人が急増。

3年後の7月にアナログ放送が終了することも、不法投棄の増加につながるのではと心配されています。

小橋川係長「その時(2011年)に向けて買い替えがこれから始まるということで、不法投棄が新たに生まれるんじゃないかと危惧している」

消費者「捨てるのにお金を出すっていうのがちょっと」「払うしかないですね。でも嫌です」

消費者の理解がまだまだ得られていない現状を改善するため、家電メーカーは11月から対象の4家電のリサイクル料金を一斉に引き下げます。

ブラウン管テレビは出荷量の多い15型以下のものについて、引き取り料を大幅に4割近く引き下げ。

エアコンは一律で2625円となり、また冷蔵庫や冷凍庫は容量が170リットル以下のもので、リサイクル料が1000円以上下がります。

ヤマダ電機テックランド豊見城店・井一之店長「(Q:リサイクル料金引き下げの影響は?)販売の促進にはつながるし、販売しやすくなるということはあると思います」

家電メーカー最大手の松下電器はリサイクルを推進するため、兵庫県で世界最先端の研究を行っています。この施設では近畿地方全域から年間67万台の廃家電を回収。

一日に処理されるテレビの数はおよそ1000台で、分解にかかる時間は一台当たり78秒です。

『設計された方々も一緒にバラして頂いて、リサイクルにかかる時間、リサイクルした時の価値、そういうことを理解して頂いて』

この日、私達は松下電器の新製品について、設計者とリサイクルの担当者が意見をぶつけあう戦略会議の撮影を許されました。

リサイクル担当「このガラス素材を(リサイクルに)戻そうとしますと、全面にフィルムが貼ってありますが、フィルムを剥がなきゃならない。あるいはこのスポンジがありますけど、こういったものもきれいに取らなきゃならない」

リサイクル担当「以前、エアコンでも実施した例だが、断熱材に全面接着剤をつけると当然剥がれない、はがしにくい。本当に全面に貼る必要があるのか?」

リサイクル担当「これもなかなかリサイクルしにくい材料になっているということで、極力、一般(リサイクルしやすい素材)に戻るような材料を工夫して使って頂けるような設計改善をしていただけたら」

厳しい表情の設計士も、ともに改善策を探ります。

製品設計者「確かにビス(小ネジ)は多い。この機種だと200本あるが、最近のは100本近くに半減している。設計者もかなり課題を認識して、そういう方向で現実に進んでいます」

こうした研究の結果、松下の製品は使われるプラスチックが13種類から2種類に減少。部品の数も大幅に減り、解体のスピードアップにつながりました。

また最近では、他の企業とも連携して新しい価値や利益を生み出す「攻めのリサイクル」も展開しています

松下エコテクノロジーセンター・瀬戸山正博工場長「これは冷蔵庫の断熱材に使われるウレタンフォームというプラスチックです。これは建材メーカーといろいろ共同開発しまして、建材の断熱材として使って頂いている」

これはエアコンから取り出した純度99%以上の銅です。

瀬戸山工場長「特に今のこの時期は(銅の)相場が非常に高くなっていて、こういったものはそのまま松下電器のエアコンに再利用される」

『こんにちは。ザ・マーケットです!』

一方、こちらは中古家電を扱う浦添市の業者。

ザ・マーケット王・菊地尚人マネージャー「説明書と洗濯機を合わせて1万500円になりますね」

中古の家電製品を買い取り、販売しているこの業者は、素材のリサイクルに重点を置いた研究よりもリユース、つまり再利用の方が環境に優しいと考えています。

菊地マネージャー「使えるものであれば、処分しないでリサイクルショップでお金に変えてもらうのが一番いいと思う」

しかし問題は、再利用を繰り返した家電製品もいつかは必ず廃家電になるということ。

松下エコテクノロジーセンター・冨田和之社長「年間で約2000万台強の廃家電が発生している。ただし、その中でリサイクル法に則って(工場に)帰ってくるものは、去年の実績で1200万台。半分なんです」

瀬戸山工場長「よく言われるのは、長く商品を使うのがいいのか、あるいは省エネの商品に買い変えるのがいいのかという問題。これも考えは一つで、やはり買い替えても、その不要になったものがきれいにリサイクルされてきちっとした材料で還元できればいい」

政府は来年4月から薄型テレビと衣類乾燥機についても新たに家電リサイクルの対象に加えます。

しかし、国や企業がどれだけ取り組みを強化しても、電化製品を使う消費者の意識が足りなければ、リサイクルの流れが途中でせき止められてしまうことは今後も変わりありません。

家電メーカーや電気店は、新しい電化製品や省エネ製品を販売して、素材の回収もしたいと考えます

一方、リサイクル業者にとっては中古家電の流通が大事ですので、「消費者にはできれば家電のリユースをしてほしい」と考えます。両方それぞれの立場と考えがあります。

どちらがいいとはいえない問題ですけれど、消費者はもう電化製品を買う時点から「その製品をどう処分するか」というところまで考えて商品を手にするくらいの気持ちが必要になってきます。