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高校の歴史教科書検定問題。記述復活に向けて沖縄からの訴えは続いていますが、いまだに解決の見通しは立っていません。県民とともに声を上げる人の中に教科書執筆者の存在があります。そんな執筆者と県民の心の交流です。

先月、沖縄戦の集団自決を巡る歴史的な判決が出されました。高校の歴史教科書で集団自決の記述を変える根拠とされた裁判。大阪地裁の判決は・・・

『日本軍は集団自決に深く関わっていた』

集団自決に対する日本軍の責任に言及した判決。これを聞き涙ぐむ男性は坂本昇さん、教科書の執筆者です。

坂本昇さん「大きく背中を押していただいた、励ましていただいた」

県民の怒りが大きなうねりとなった教科書検定問題。多くの執筆者たちも悔し涙を流しました。しかし、そこには彼らを支える県民の存在があったのです。

坂本さんは都立高校の教師。教科書を書き始めて15年以上になります。

坂本さんの教科書。限られたスペースの中で、めいいっぱい沖縄戦について触れています。中でも特徴的なのが、母親と幼い兄弟に手をかけたという集団自決の体験者の証言をそのまま載せていることです。

坂本さん「この資料が語る集団自決の本質は、生徒の心に届かないはずはありません。毎年、毎年、この資料をもう少し膨らませて授業に使っておりますが、授業中にすすり泣く声が聞こえます」

生徒たちに戦争の本質を、家族に手をかけなくてはならないほど追い込まれた人々の悲しみ、痛みを感じとってほしい。そこには教師としての深い思いが込められていたのです。しかし―

文科省からの指示は、そんな執筆者の思いを否定するものだったのです。

坂本さん「検定通達の終わった日はつらかったです。沖縄戦の体験者、とりわけ集団自決の体験者、それを証言された方々に大変申し訳ないことをしたと」

坂本さんは記述を元通りにしようと決意し、声を上げます。しかしそれは強い反発を招くことになります。

新しい歴史教科書をつくる会・藤岡信勝会長「検定前よりもさらに日本軍を悪役非道に描きだそうとする意図が際立っています。私たちはこれを認めることはできません」

反対派からは抗議の声。勤務していた学校にも「文科省に逆らう教師は辞めてしまえ」といった非難のファックスや電話が寄せられたのです。そんなとき、坂本さんを勇気づけたのは沖縄からの励ましでした。

集団自決の体験者から寄せられた手紙
『あなたの勇気に感動しました。沖縄戦を歪曲されては集団自決で死んだ県民がかわいそうで浮かばれません。あなたの後ろには130万の県民が後押ししています』

沖縄を久しぶりに訪れた坂本さん、手紙の送り主との対面を果たしました。宮城恒彦さん、姉を集団自決で亡くしました。

宮城恒彦さん「色々頑張って本当に嬉しいです。ただ者じゃないと思ったわけよ、勇気がいるからね。執筆される方の努力がないといけないし、私たちは後方から応援する」

宮城さんにとっても体験者として何とかしなければならないという必死な思いで書いた手紙でした。

坂本さん「こういう声に支えられ、改めて頑張らなければいけないという気がしましたし、大変つらいときに本当に助けていただいたという気がしている」

坂本さんはこう述べ、戦争について教える意義を次のように語っています。

坂本さん「戦争を学ぶ意味は、決して死の美学を学ぶことではない。生き残った人が未来に向けて戦争は二度とやりたくない、やらない国にしようという生きる実学といいましょうか」

坂本さんたち教科書執筆者は秋ごろまでに訂正申請を行い、記述の復活を目指すということです。