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今月9日は救急の日、県内ではさまざまなイベントがひらかれ、救急医療の重要性を訴えています。一分でも一秒でも早く救急措置をほどこすために、医療関係者の新たな取り組みが県内で始まりました。比嘉雅人記者のリポートです。

「おじさん、おじさん!どうしたの?おじさん!誰か、誰か救急車よんでください!誰か救急車!…」

目の前で人が倒れたら。事故や災害が起きたら。誰でもそんな事態に遭遇する可能性があります。とくに意識がなく呼吸をしていない、あるいは心臓がとまっているという「心肺停止」状態は非常に危険な状態で、回復したとしても様々な障害が残ることが多いため、社会に復帰できるのは回復者のわずか2%といわれています。

患者の気管に管をいれ、酸素を送る「気管挿管」、また強心剤などを投与する「薬剤投与」は、蘇生法として効果的ですが医療行為となるため、これまでは救急隊員には行えませんでした。

この二つの行為に関して、規制の緩和や法改正により救急救命士が行うことが可能になり、県内でもその認定をうけた救命士が活躍しています。しかし、まだその人数は少ないのが現状。

中部徳洲会病院・伊波院長「その僅かな(救命士の)方々を、現場に確実に送るのは非常に難しい。たくさん増えれば医者がいくのと同等の効果があるが、まだそれには時間が抱かかる」

それなら、医者を直接現場に向かわせればいいのではないか?その発想で現在全国で実施され始めているのが「ドクターカー」と呼ばれる救急車です。この車に医師と看護士が乗り込み、直接、現場へ向かいます。

沖縄市はことし6月、中部徳洲会病院と救急医療活動の協定書をかわしました。行政が医療機関と合同で救命活動にとりくむのは県内では初めてのことです。救命率の向上が期待されるドクターカー。では消防と連携した救急医療は実際どのように行われるのでしょうか?

沖縄市内の救急車出動要請は、一日平均10〜15件ほど、多いときでは20件ほどもあります。このうち、患者の「意識がない」場合に、救急隊と同時にドクターカー出動を要請します。

「救急指令受信、50代男性、沖縄市役所内でロビーで急に倒れ意識がないということです。ドクターカー、出動願います」

徳洲会病院・無線室「了解、ドクターカー出動します。指令書をお願いします」

指令をうけ、医療スタッフが出動するまでは、およそ1分。現場の救急隊員と速やかに処置を行えるように、ナビゲータから患者の容態を聞きながら、車内で気管挿管や薬剤・輸液の準備を行います。

通報を受けた救急車が現場から患者を搬送し、病院へとむかう。この時間を、ドクターカーは大きく短縮します。運用開始から2ヶ月、実際に心肺停止状態の患者のうち2人が蘇生し、そのうち一人は現在リハビリを続け、まもなく退院するということです。今後は市内の病院によるネットワーク作りが課題です。

沖縄市消防・長堂署長「出動の件数が増加した場合は、ほかの病院とも協定をむすぶなど連携して(ネットワークを)広げていくことを考えています」

ドクターカーの出動で、現場の医師の意識も変わりつつあります。運用され、最初に出動した池原さんは、治療器具や施設も少ない「現場」という環境に出ることで、救急医療のあり方をあらためて見つめなおしたといいます。

池原医師「医療側からそとに飛び出すという点は、今まで全く進んでいなかった。やはり私たち医者は待つ側だった。外に出て行くというのは本当に画期的なことだと思います」「私たちが病院でやっている救急医療そのものと同じことが現場でできるように、救急隊員と私たちがコミニュケーションをとりながらトレーニングをしていく必要があるということを考えているところです」

ご覧頂いたように、心肺停止状態の人を救うには、一刻も早く蘇生法を施すことが重要です。医師や救急隊員がいち早く駆けつけることも重要ですが、もっとも効果的なのは、そのときにそばにいた人が人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生法を施すことです。私たち一人一人が救急救命法を理解し、その技術を学ぶことで身近な人や倒れた人を救うことができます。この機会に救急法の講習会やフォーラムなどに参加するのもいいかも知れません。