沖縄冬の風物詩、第39回NAHAマラソンがきのう開催され、約2万4000人のランナーがゴールを目指して師走の南部路を走りました。様々な思いを持って走るランナーの中に、歳の差42歳。先生と二人三脚で走る高校生の姿がありました。
今年で39回目を迎えた「NAHAマラソン」。
琉球国王の仮装をしたランナー「琉球国王です」「これを弾いてカチャーシーを踊ってもらうというのをめざしている」
沖縄尚学の仮装をしたランナー「(Q.監督の仮装ってことですかね?)そのつもりでやっていますが見えますかね…?」
沖縄尚学の仮装をしたランナー「夏の沖縄尚学に対する感謝を42.195キロで表していきたい」
お馴染みとなっている仮装ランナーも多く参加する中、大会にはランナーを救いながら走るメディカルランナーも。
メディカルランナー上江洲清政さん「ランナーとして走りながらボランティア活動をして、もしも救護とか急病に備えて何か倒れた人がいたら応急処置をするメンバー」
様々な立場・思いを持ってスタートに備えるランナーたち。その中に二人三脚で完走をめざす選手が。
高校3年生の喜屋武快士(きゃんかいし)くん。軽度の知的障害を持ち現在、沖縄高等特別支援学校に通っています。授業を覗いてみると明るく、何事にも積極的。
喜屋武快士さんの同級生「いろんな相談事に乗ってくれて頼れる存在です」
喜屋武快士さん「めっちゃうれしいです」
そんな快士君は高校1年生から陸上を始め、去年NAHAマラソンに初挑戦。しかし、中間点の約20kmでリタイア。その悔しさを晴らそうと今年もエントリーしました。そこには心強いサポーターが!
沖縄県立沖縄高等特別支援学校 陸上部顧問 宮里真栄先生「どうしても今年NAHAマラソンを完走したいということで、直々に伴走のお願いがあったので、彼らにゴールしてほしい気持ちもあって伴走させてもらいます」
陸上部顧問の宮里真栄先生に伴走をお願いしました。歳の差は42歳!二人三脚で完走をめざします!
宮里真栄先生「特別支援学校の子たちはなかなか自信がなくて、新しくチャレンジすることに躊躇しがちな子が多い。僕も年は年なので疲れが残らないように、体調を十分管理して当日ゴールを目指して完走できたらと思っています」
喜屋武快士さん「(宮里先生は)性格はめっちゃ温厚な方です。みんなを笑わせてくれる先生です。悔いなく完走できるように頑張りたいです」
去年よりも2000人以上多い約24000人が、それぞれの思いや目標を胸にスタート。快士君・宮里さんも42.195キロへの挑戦が始まりました。軽快に走り出した快士君を後押ししたのが13km地点。沿道に家族の姿が!
喜屋武快士さんの父・姉「かいし!頑張れ!」「諦めず最後まで走り切ってほしいと思います!」
宮里真栄先生「良いペースで来ています。快士君余裕ですか?」
喜屋武快士さん「大丈夫です」
序盤から順調な走りを見せる快士君。去年リタイアした20kmに力強く進んでいきます。そして、制限時間よりも30分以上早く、中間地点を突破!まずは去年の記録を更新します。
次なる目標は完走!ですが、体には疲れがたまってきていました。
宮里真栄先生「マメできてるの?」
喜屋武快士さん「親指に」
宮里真栄先生「どうする?」
喜屋武快士さん「走ります!」
喜屋武快士さん「きついです!」「左脚の太ももが痛いです」「頑張ります!」
きのう那覇市では最高気温23.7度を記録し、強い日差しが降り注ぐ時間も長く、暑さとの戦いにもなったランナーたち。その背中を押そうと、沿道からは暑さに負けない熱い応援が!たくさんの差し入れがランナーたちの力になります。
ランナー「(味噌汁が)めっちゃしみます」
戦後80年の今年、ひめゆりの塔には手を合わすランナーたちも。
そんな中、レース後半に挑んでいた快士君は足の痛みも強くなり、ペースがかなり落ちていました。それでも懸命に足を進める中、30km過ぎ、再び家族の応援が。
喜屋武快士さんの父 隆さん「よく成長したなと感じます。根性がついたのかなと思っています。去年に比べて力強いですね!」
家族からも力をもらって第2制限地点も通過しますが、その足取りは重く。残り約8km。制限時間内でのゴールが厳しいペースまで落ちていました。
ゴールとなる奥武山公園では、続々とランナーたちが感動のゴールを迎えていきます。
残り約3キロまで来た快士君。制限時間が迫るなか、宮里さんが声をかけ続けます。
宮里真栄先生「歩いたらギリギリアウトの時間だから、最後振り絞るよ?ゴールしたい?したくない?」
喜屋武快士さん「したい!」
宮里真栄先生「したいなら行くしかない!」
喜屋武快士さん「ここで終わったらまた悔しい結果になるので、今年こそはリベンジなので完走したいという気持ちがあったから、(宮里先生の声掛けは)とてもうれしいし、パワーがもらえて元気が出ました」
そして、午後3時15分。最後の関門が、閉ざされます。果たして快士君たちは。
その姿は、扉が閉まる5分前に!宮里さんとともに。完走を果たしました!
宮里真栄先生「お疲れさん。よく頑張りました」
喜屋武快士さん「とてもうれしいです。(途中)やめようかなと思ったんですけど、(宮里先生に)ありがとうという気持ちを伝えたいです」
宮里真栄先生「僕も少しきつかったんですけど、何とか最後まで一緒にゴールできたので、子どもたちの力を信じてよかったです」
宮里真栄先生「また自信がつきましたね。ひとつね、後輩にも良い影響があると思うのでよかったです」
喜びも悔しさも、多くのランナーの思いがあふれたNAHAマラソン。来年は節目の40回大会。ランナーそれぞれのドラマが待っています。
