※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

辺野古新基地建設の軟弱地盤を固める工事を巡り、国は、2023年10月5日工事を県に代わって承認する代執行に向けた訴訟を、福岡高裁那覇支部に提起しました。

軟弱地盤の工事を巡っては、斉藤国土交通大臣が玉城知事に2023年10月4日までに承認するよう、指示を出していましたが、玉城知事は2023年10月4日、「期限までの承認は困難」と国に回答しました。

これを受けて、国は2023年10月5日午前、福岡高裁那覇支部に、知事への承認の「命令」を求め、提訴しました。裁判所が、命令を出しても玉城知事が工事を承認しない場合は、国が代わりに承認できる「代執行」が可能になります。

玉城知事は「訴状が届いたら、どのような状況で対応するか協議をしていきたいという段階に移る」と述べました。玉城知事は2023年10月5日午後、記者団の取材に、「訴状を確認して検討する」と答えました。

斉藤鉄夫国土交通大臣は「沖縄県知事が期限までに承認を行わなかったことは遺憾であります。知事は最高裁判決に沿って、法律に基づいた対応をすべきことは明らかでありますので、速やかに承認すべきと考えていることに変わりはありません」と述べました。

先ほど記者団の取材に応じた斉藤国交大臣は知事に対して「速やかに承認すべき」との考えを改めて示しました。

辺野古新基地建設 国、設計変更承認「代執行」提起 知事「訴状みて対応検討

代執行への動き 宜野湾・名護市長などの反応



辺野古新基地建設 国、設計変更承認「代執行」提起 知事「訴状みて対応検討

国の代執行に向けた動きについて市長などの反応です。

松川宜野湾市長は「また改めて裁判という形になるんだなということでさらに沖縄県と政府の対立が深まる、溝が深くなっている状況でしたけど、亀裂の状態になるんじゃないかと懸念もしている」と述べました。

普天間基地を抱える宜野湾市の松川市長は、2023年10月5日午前取材に応じ、状況を注視し、今後、代執行が進み、埋立工事が進められることで普天間の危険性除去につなげることができるとの考えも示しました。

松川宜野湾市長は「実際に工事が進んでいけば現在埋立をしている辺野古側の活用も何らかの形でできるのではないかと、負担軽減に向けては様々知恵を出していけるのではないかと期待している」と述べました。

辺野古を抱える名護市の渡具知市長は、今回の国の動きについて「まずは裁判の推移を注視していくということでございます」と述べました。今後の対応などは、久辺三区の意見などを踏まえて検討していきたいとしました。

一方、キャンプシュワブのゲート前で抗議活動を行う人たちからは、2023年10月4日の玉城知事の判断を支持する声などが聞かれました。

抗議活動を行う男性は「頑張ったと思いますよ。実質不承認なんだから」と述べました。別の男性は「代執行が行われても毎日のようにここに通って国の不正義を訴え続けたい」と述べました。



記者解説 辺野古不承認・代執行訴訟へ 真に問われるべきは基地押し付けの構造



辺野古新基地建設 国、設計変更承認「代執行」提起 知事「訴状みて対応検討

ここからは塚崎記者です。辺野古新基地建設の設計変更承認について、きのう知事が判断を見送りましたが、国側はきょう、即座に裁判に訴えました。今後はどのように動くとみられますか。

塚崎記者「国側は裁判所に、知事に設計変更承認を求める「命令」を求めたものとみられます。」「裁判所が国の訴えを認めて「命令」を出し、知事が従わなかった場合、「代執行」で国が県に代わって設計変更を承認することになります。」

国側は「代執行」の手続きを粛々と進めているという印象ですが、裁判はいつごろ行われて、どのような点が焦点になるのでしょうか。

塚崎記者「はい。法律の規定では、15日以内に口頭弁論を行うとなっているので、少なくとも今月中には裁判が行われることになります。」「問われるとみられるのは、こちらの2点。玉城知事が設計変更を承認しないことが、著しく公益を害するのか、という点と、今の状況を解消する方法が、「代執行」以外にないのかという点です。」

塚崎記者「国交大臣は知事への勧告文で、設計変更を知事が承認しないことが「埋め立て工事を妨げる」として、普天間基地の危険性除去が喫緊の課題であるとか日本のアメリカとの関係や、安全保障にかかわることなどを挙げて「公益を害する」と主張しています。国側は裁判でもこうした主張をしてくるとみられます。」

この裁判について、私たちはどのように見ていくべきなのでしょうか。

塚崎記者「先ほど想定として挙げた国側の主張は結局「辺野古移設が唯一の解決策」という前提に立った主張です。政府は「普天間基地の全面返還を1日も早く実現する」と言っていますが、軟弱地盤の工事に10年近くがかかる辺野古が、解決策として本当に唯一なのか疑問です。」

「裁判で問われるべきは、地元の反対を無視し、本来地方自治体が持つ権限を奪ってまで「日米関係」や「安全保障」のために新基地建設を進めることが本当に「公益」になるのかということです。」

「国が国策を進めるために、地方自治体の権限を奪うということは沖縄の基地問題以外でも起きうることを、日本全体が認識しなければなりません。」