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15年前に沖縄市で2人の米兵が起こしたタクシー強盗事件の補償をめぐって遺族が国を訴えた裁判の控訴審判決が9月14日に福岡高等裁判所那覇支部で言い渡されます。

日高洋一郎弁護士「今後も基地がある限り、被害者は生まれるでしょうからその時の救済のあり方がどうあるべきかというのが(判決で)1つ示されると思っています」

2008年1月、沖縄市で当時59歳だったタクシー運転手の男性が乗客のアメリカ兵2人に襲われ、2800円ほどの料金を踏み倒される事件が起きました。運転手の男性はPTSDに苦しみながら事件から4年後に亡くなりました。

被害救済のための補償がきちんと果たされるよう遺族が国を相手に裁判を起こしていて法律で認められた遅延金を含む損害賠償の支払いを求めています。

事件から11年が経った時に裁判で確定した約1700万円の損害賠償と1年で5%の金利という遅延金をあわせた補償の総額は2600万円あまりに膨れ上がっていました。

米政府が提示した額はわずか”146万円”で差額分を支払う責任を持つ日本政府も遅延金は”補償の対象外”という姿勢を示しています。

これまでの裁判で、遺族側は日米地位協定に基づく補償制度の要件を満たしているのに日本政府が遅延金の支払いを拒むことは違法だと訴えています。一方、国は、補償の前提となる合意がないため見舞金を支給していないことは違法ではないと反論しています。一審の那覇地裁はどの程度支給するか国に裁量が委ねられていると指摘したうえで「米兵によって生じた損害を賠償する法律上の責任を負わない」として遺族の訴えを退けていました。判決を不服として遺族は控訴していました。

日高洋一郎弁護士「(SACO見舞金)の仕組み上は(支給に必要なのは)確定判決と米側の見舞金の差額ですから、文言上遅延損害金が含まれるはずなのにそれを放棄しないと(見舞金を)もらえないという立場に被害者が置かれているのでそれで本当にいいのかという問題がある」

判決は9月14日午後3時に言い渡されます。

15年前の米兵タクシー強盗の補償めぐる控訴審で9月14日に判決へ 福岡高等裁判所那覇支部

中村アナ「ここからは濱元記者に加わってもらいます。きちんとした補償を求めている遺族にとってあすの判決は大きな節目を迎える日となりそうですね」

濱元記者「そうですね。補償制度のあり方というのを今一度考えなければいけないと思います日米地位協定では公務外のアメリカ兵が起こした事件・事故の賠償金を加害者が支払えない場合は、アメリカ政府が補償金として支払うことになっています。アメリカが示した補償額が少なかった時に穴埋めしようというのが「SACO見舞金」という制度で裁判で確定した損害賠償額とアメリカの提示額の差額を日本政府が肩代わりします」

中村アナ「事件・事故の発生から少しでも早く被害者を救済するためのものだと思うのですが、今回のタクシー強盗の補償は事件から15年経っても日本政府から全く支払いがない状態が続いているんですよね…?」

濱元記者「アメリカ兵が絡む事件・事故の補償はかなり遅くなって待たされるケースが多くを占めているんです。なぜなら、アメリカ側が金額を示すまでに時間がかかるだけでなく被害者自身が裁判を起こして損害額を確定させないといけないといった負担も重くのしかかっていて早期救済をうたっているのに被害者の方を向いた運用になっていないと日高弁護士は訴えています」

日高洋一郎弁護士「米兵個人に対する確定判決と米国からの見舞金の差額を払うという制度を作ったのに、そこで差額のうちの一部は実は補償には入らないんですよという対応をされているわけですから被害者からしたら納得いかないですし、さらにそれが、今回でいえば、10年以上放置されているのは不条理だなと思う」「だれもが同じ被害にあう可能性があるので、他人事だと思わないで…」「日本国全体で補償するという気持ちをもって対応することが必要だと思います」

濱元記者「現在までの遅延金を加えた補償の総額はおよそ3100万円になっています。そのうちアメリカ政府の提示額が146万円です。すると、日本政府は2950万円ほどを肩代わりしないといけない計算になります。それなのに、今回のケースでは遅延金を除いた1600万円しか支払う意思を示していません。法律で当然のように認められているはずの遅延金が15年も待たされると全体に占める割合は44%にのぼり、無視できなくなっているのに”関係ない”と言っているわけです。つまり、「法治」国家である日本が被害者救済の責任を「放置」していると言わざるを得ない状況だと思います」

中村アナ「被害者に寄り添った救済とは何なのか、日本政府はどういう姿勢を示すべきなのか、改めて考える必要がありそうです。あすの判決が注目されます」