今を生きる私たちが未来の沖縄を見ていく「IMAGINEおきなわ」です。今回のテーマは「動物の命」です。まずはこちらをご覧ください。2017年から2021年までの5年間における、県内で殺処分された犬と猫の数の推移です。右肩下がりで減っていて、最新の2021年だと犬は28匹ですが猫は223匹となっています。
殺処分をしないで済む、人と動物がともに生きる社会のあり方とはどういったものなのでしょうか?動物愛護団体の現状や行政の取り組みを通して考えます。
「命どぅ宝」「命は何ものにも代えがたい大切なもの」という意味の言葉です。先の戦争で激しい地上戦を経験し、多くの犠牲者を出した沖縄は戦後、「命こそが宝である」と誰もが認識し、命を尊び、今日の繁栄を築いてきました。
「私は南大東島に住んで居るのですが、島では猫条例ができて、のら猫ちゃん達の行き場がなくなっている状況です。猫ちゃん達(50匹近く)を引き取って保護しています。まだまだのら猫ちゃん達は島に居ます。毎月毎月、捕獲されています」
去年5月、SNSにこんな投稿がされました。南大東島に住む女性の訴えです。11月末に「多頭飼育崩壊に至った」として動物愛護法違反の疑いで逮捕されました。
「最初に猫条例があって、その時に聞かされてました。飼い主のいない猫たちは処分の対象だからってことで(みんな知ってます)」
南大東村では「南大東村飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」いわゆる「猫条例」が制定されています。
http://www.vill.minamidaito.okinawa.jp/pdf/r02/cat_low.pdf
「第15条 村長は飼い主の判明しない猫等を保護収容することができる。」
これは一体どういう事なのでしょうか。
ねこかつ店主:梅田達也さん「建前上は条例では「保護収容」という言葉になっているんですけども捕まった猫たちのほとんど全てが殺されていると。」
「通常日本全国で猫を積極的に捕まえて処分のルートに乗せるということはしていないんですけども、やんばると南大東島(ちょっと事情は違いますけども)その両方では外にいる猫の尊厳が認められなくて捕まえられると。そもそもその捕獲する必要性があるのかと。いうところに大きな疑問を感じます。」
南大東で捕獲された猫たちのうち20匹ほどを受け入れた埼玉の保護猫カフェ「ねこかつ」。猫たちは島から島へ、はるばる旅をしてここに辿り着きました。
南大東村で外にいる猫が捕獲後に殺処分されているのではないかと疑念をもった店主の梅田さんは村に情報開示請求して資料を入手しました。
「保護収容された所有者不明ネコは/約1週間飼育し、島内における引取り手を募集する。引取り手のない個体については村と協議の上、安楽殺を実施する。」
ねこかつ店主:梅田達也さん「情報公開請求して、来たもののなかに過去2年間で殺処分・捕獲して殆ど捕まった猫が処分されているという記述があって」「これはとんでもないことが起きているという事で、何とか猫を保護する手立てがないかと今模索しているところです。」
また県は、名護以北のやんばる地域で「希少種の保護のため外ネコをゼロにする」という「ずっとやんばる ずっとうちネコ アクションプラン」計画を10年かけて実施するとしています。
玉城デニー知事「一番重要なのは適正に、1度飼ったネコちゃんはずっと自分たちで飼い続けようねということの意識を改めて持っていただくことの必要性・重要性と、必要以上にネコが増えないように去勢をするなどの飼い主の努力をぜひお願いしますという事の啓発活動が大切だと思うんですよ」
ねこかつ梅田さん「一生うちのこプロジェクトもそうなんですけども、おうちの中で飼いましょう、一生飼いましょう、捨てるのはダメですと、それがですね家の中だけでしか猫を認めないという風に何かこう飛躍して、そっちに使われていますね」
「北部の森林域でのネコの排除」「完全室内飼育、終生飼養などの啓発活動」によって、屋外にいる飼い主不明ネコをいなくするという「ネコ管理・共生行動計画」。これには多くの保護団体などが反発や不安を訴え、パブリックコメントが600件以上寄せられました。
県では過去(2005年)に国頭村、大宜味村、東村の3村で「ネコの愛護及び管理に関する条例」(ネコ飼養条例)を施行しました。その時、積極的な捕獲・排除、集落における飼い主不明ネコの保護収容、譲渡、飼いネコの不妊去勢手術などの事業で森林域におけるネコの捕獲数及び確認数が減少し始めた」とあります。
2017年に288匹、その後212匹、174匹、25匹、2021年度には0匹となっています。
ねこかつ梅田さん「一般の人たちは猫を捨てないで、おうちで飼いましょう、それだけ見ると皆賛成なんですけども、家の中にいる子は飼い猫で守るべき存在、外にいる猫は殺していい存在。」「マイクロチップが入っている猫は家の子で戻って来られるけどマイクロチップの入っていない猫は野良猫で所有者不明の猫なので殺しますと。そういった仕組みが今の沖縄じゃ作られだしているので、これは本当におかしなこと」
「外にいる猫たちにも同じくできれば飼い猫と同じような環境を与えてあげたいですけどそれは無理な話なので少なくとも手術をして増えないようにして今後生きていく手だてを模索していくと。それだと間に合わないという風に行政の方はおっしゃるんですけども、猫はずっといたんですね、沖縄の中に。でもヤンバルクイナは絶滅しなかったんです。」
人間のエゴで生きることを許されなくなってしまう外ネコ。また猫の避妊・去勢手術や保護には費用がかかり、今やどの保護団体もオーバーフローであり、保護の状況は決して良いとは言えません。一方、行政はほぼ「民間に丸投げ」といえる現実が横たわっています。
玉城デニー知事「今までの取り組みで非常に要請や陳情が多かったということも含めて動物愛護センターと譲渡管理棟を新設して、そこでも引取り期間を延ばしたりして、できるだけ情報を出すことによってノネコにならなくてもいい、ちゃんとした飼い主さんが、じゃあうちで飼いましょうということで引き取っていただけるような環境をつくるためにはそれなりの人員も必要ですし予算も必要ですから、そこは県としても出来る限り努力をしていきたいと考えています」
南城市にある「動物愛護管理センター」の隣にある「譲渡推進棟」は、知事の「殺処分廃止」の理念を叶えるため昨年秋から運用が始まりました。「保護収容」のちに駆虫やワクチン接種、避妊・去勢手術などを施し、里親希望者に引き合わせて譲渡をすすめるとしています。
じゃれるネコ、見学者「可愛い~♪」「ネコちゃんさがしてるんですか?」「そういうわけじゃないけど気になったので見学に」
玉城デニー知事「今まではボランティア団体の皆さんに丸投げするしかなかったことも、団体の皆さんが余裕ができるように県としてももっとやれるところはしっかりやっていきましょうと確認もしてますので」
命は小さい命も大切にしましょうということを皆で本当にしっかり考えていくということに私は、県としてももっと広報を推進していくべきだろうと考えています。
ねこかつ梅田さん「デニーさんが仰っていた殺処分ゼロにするという言葉と全く逆行したことが行われています。県として何をしたらいいのか、どうしたらいいのか、しっかりと考えていただきたいなと思います。」
「命どぅ宝」それは人間のものだけではありません。希少種の保護は当然大切な事ですが、そのために他の命を犠牲にして、その上に成り立つものであってはならないはずです。全ての、島に生きる生きとし生けるもの達の命が平等に「宝」なのですから。
こちら譲渡推進棟の2階の部屋なんですけど、ガラガラです。まさに「ネコの子1匹いません」ね。まだ運用が始まって半年あまりということですが、ここに「保護収容」された猫たくさん収容できそうですから、知事が言うとおり、是非この場所を大いに活用してもらって殺処分される猫が減るよう努力していただきたいですね。