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今を生きる私たちが、沖縄の未来を見ていくシリーズ「IMAGINE・おきなわ」です。今回は、平和について考えます。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1年。今なお、現地では激しい戦闘が続いています。そんなか沖縄では、ことし5月にウクライナの民族楽器・バンドゥーラを奏でる女性音楽家がコンサートを行います。

78年前、苛烈な地上戦を経験したここ沖縄で開くコンサートの思いを聞きました。

60本以上の弦が連なるウクライナの民族楽器・バンドーラをあやつり、透明感ある歌声を響かせるのはウクライナ出身の歌手・ナターシャ・グジーさん。

2000年の来日から20年以上が経つ彼女は、日本各地でコンサートを開いています。

音楽家として、精力的に活動を続けるナターシャさんですが、その原点は、祖国・ウクライナをめぐる歴史的な出来事にありました。

#IMAGINEおきなわ vol.8 平和祈る歌声 沖縄からも ナターシャ・グジーさん

旧ソビエト時代の1986年に発生したチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故。「史上最悪」と評価されたこの事故では、大量の放射性物質が各国に拡散しました。

事故当時、6歳だったナターシャさんは、原発で働く父を含め一家で施設からおよそ3・5キロ離れた村に住んでいました。

事故直後、「3日で帰ってこられる」と言われたためナターシャさんは家族ともに、着のみ着のままで避難しました。

ナターシャさん「(故郷を離れるとき)こぼれてくる涙の向こうに見えてるその大好きな風景を、一生懸命に記憶の中に残そうとしていました。本当に自分がここには戻ることがないんだっていうのを子供ながらも直感的に感じた瞬間でした」

#IMAGINEおきなわ vol.8 平和祈る歌声 沖縄からも ナターシャ・グジーさん

事故によって故郷を追われたナターシャさんの一家は、その後、首都・キーウに避難し新しい生活を始めます。

つらい避難生活の日々、ナターシャさんの親は子どもたちの心の支えにしてもらおうと、いろいろな習い事をさせます。その中で、ナターシャさんが生涯の友に選んだのは音楽でした。

ナターシャさん「今、私にとって本当に体の一部になっているんですけれども、このバンドゥーラっていう、ウクライナの民族楽器に出会って歌を歌ったり、楽器を習ったりしました」

ナターシャさん「(すでに習っていた)姉が奏でているバンドゥーラの音色が何かとても美しくて、そして切なくて、そしてその姉が弾いてる姿をが美しくて、自分が姉のようになりたいなっていうふうに強く感じていました」

#IMAGINEおきなわ vol.8 平和祈る歌声 沖縄からも ナターシャ・グジーさん

バンドゥーラとの出会いをきっかけに、音楽家の道を歩み始めたナターシャさん。その後、公演のためたびたび日本を訪問したことで、ナターシャさんは、自分の経験を日本で伝えていきたいと思うようになります。

そして2000年、ナターシャさんは日本に音楽活動の拠点を移し、各地で原発事故の経験を語りながら活動を続けています。

ナターシャさん「日本の皆さんの思いやり、人を思う気持ちっていうのをやはりとても肌で感じまして、そして本当に日本が好きになりました」

異国の日本で、祖国への思いを馳せるグジーさん。しかし「大国の暴挙」によって祖国が、再び悲劇に見舞われます。

去年2月24日、国際法を破り、ウクライナに全面侵攻を始めたロシア軍。今も姉やいとこなど多くの親類がウクライナに残っているといいます。

#IMAGINEおきなわ vol.8 平和祈る歌声 沖縄からも ナターシャ・グジーさん

ナターシャさん「やはりなかなか連絡とりづらいし、インターネットがなかったりとか、攻撃されたりしているので電気もなかったりしてるので、できるだけ毎日姉たちだったり、その親戚だったり友達だったり、みんなとできるだけ毎日のように連絡とって状況を確認したり、安否を確認したりするようにしてます」

今回の侵攻でナターシャさんは、祖国の人々の力になろうと、日本各地でのチャリティツアーを開いてきたほか、ウクライナの民族衣装の販売しその売り上げなどを送っています。

ナターシャさん「ウクライナへの支援が今だけでなく、長い間の支援が必要と私は考えています。無関心というのが一番あってはいけない事じゃないかなと思っています」

そして、ナターシャさんは、ある楽曲をウェブサイトに投稿しています。

♪希望の大地「手に手を取って歌声あわせ 小さな瞳が夢みる幸せの種をまこう」

祖国への思いを交えた「希望の大地」には、ウクライナや世界の平和を祈るへの思いが詰まっています。

ナターシャさんは、太平洋戦争末期、沖縄が体験した苛烈な地上戦と現在のウクライナで住民を巻き込んだ状況を重ね、沖縄から平和のメッセージを発信する意味を強く訴えます。

ナターシャさん「心を一つに、音楽を通して心を一つにしたりしているっていう部分がやはりウクライナの人たちもそういったところがあるので、何かどこかで繋がってる部分があるのではないかなと感じていますので、そんな沖縄でコンサートするのが私はとても楽しみにしています」

#IMAGINEおきなわ vol.8 平和祈る歌声 沖縄からも ナターシャ・グジーさん

ナターシャさん「ウクライナの人たちも沖縄の人たちも、ふるさとに対する思いがとても強いんじゃないかなと思うので、ウクライナの人たちの故郷に対する強い思いを日本、沖縄で伝えるっていうのも大切だと思うし、何かきっと通じ合うものがあるんじゃないかなと」

平和への祈りがこもったナターシャさんの澄んだ歌声が、沖縄の地で響きます。