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在日アメリカ軍の再編に伴い、2012年に合意された在沖海兵隊の一部のグアム移転。移転先となったグアムでは、先月、日本が移設費用を負担する形で開設された基地の式典が行われました。

QABでは、式典や現地を取材をしました。見えてきたのは、米軍に翻弄され続ける沖縄とよく似た「グアム」の今でした。

1月25日式典グアム レオン・ゲレロ知事「海兵隊基地の再開を心待ちにすると同時に、チャモロのための記念碑を造ることを促してくれた多くのグアムの人たちに心から感謝します」

グアムリポート前編「在沖米海兵隊グアム移転計画のいま」

沖縄から南東へおよそ2300キロ、美しい海に囲まれ、あたり一帯に緑が広がる一方で、ホテルや商業施設が立ち並び、多くの観光客が訪れる南国の島「グアム」。

先月25日、グアムの北部に位置する場所で、新しいアメリカ軍基地の開設を祝う式典が行われました。

リポート「在沖アメリカ海兵隊およそ4千人の移転が予定されているキャンプ・ブラズに来ています。広大な敷地の中、隊員宿舎など、今も多くの施設の建設が進められており、全体の工事を終えるのは2030年を予定しているということです」

新しい基地の名前は「キャンプ・ブラズ」。沖縄のアメリカ海兵隊が2024年から移転する予定となっています。そもそも、沖縄のアメリカ軍がグアムに移転することになったのは、2006年にさかのぼります。

グアムへの移転は、沖縄の基地負担軽減を図る目的として示された、「再編実施のための日米ロードマップ」において 1普天間基地の移設・返還 2在沖海兵隊のグアム移転 3嘉手納以南の土地返還、この3つを結び付けて計画されました。

しかし、2012年に計画は見直され、「グアム移転」と「嘉手納以南の土地返還」は、「普天間基地の移設・返還」から切り離されたのです。さらに総予算を86億ドルとし、日本側の予算上限を28億ドルとすることが取り決められました。

現在までに日本側が予算措置あるいは、資金提供を行った総額は約3000億円にのぼっています。(平成21年度~令和4年度までに総額3313億円 防衛省HPより)

グアムリポート前編「在沖米海兵隊グアム移転計画のいま」

沖縄国際大学 前泊博盛教授「(1960年代にアメリカ側は)もう沖縄はいいよと。グアム、サイパン、テニアンに撤収しようということになったんですよ。それはあの中国の脅威が増大ということで中国は核ミサイルの開発にも成功する、ミサイルの射程内に沖縄が入るということになったので、撤退しようという話なんですね」

沖縄のアメリカ軍基地の問題に詳しい沖縄国際大学の前泊博盛教授はグアム移転計画について、「住民目線のない、アメリカ軍目線のもの」だと指摘します。

沖縄国際大学 前泊博盛教授「住民目線はどこにもないですよ。軍事戦略上のポイントだけが指摘をされて、沖縄に住んでいる146万人のことについては全く議論の対象になっていない。アメリカ側の戦略の変更に日本側が応分の負担を求められて支出をして、その新しい基地を建設した。それを負担をする際の国内向けの理由としては、沖縄の負担軽減、沖縄からのいわゆるリロケーション(移転)なんだ、というようなことで負担をさせられてしまった」

新しい基地の中に造られたチャモロ人のための記念碑に対して、「中身のないもの」だと厳しく批判する人がいます。

モネカ・フローレスさん「その記念碑は中身のないものです。軍が記念碑をつくることによって私たちの遺産を保護しているというのは、チャモロの人々に対する敬意と感受性を完全に欠如しています。あの場所は私たちの先祖の永眠の地であり、彼らがその永遠の眠りから掘り起こされたことに胸が張り裂ける思いです」

グアムリポート前編「在沖米海兵隊グアム移転計画のいま」

モネカ・フローレスさんは2017年からグアムで環境問題に取り組み、保全活動を行ってきました。今回の移転計画に対して、基地負担が増大し、環境が破壊されると反対の意志を示しています。

モネカ・フローレスさん「沖縄からの基地移転は決して喜ぶべきことではありません。移転は多くの森を破壊し、唯一の水源である帯水層に深刻な脅威をもたらします。私たちはすでにグアムでアメリカ軍に直接関係する環境汚染と暴力による犯罪などの申告な問題を抱えており、海兵隊が来るとさらに問題が増えることを知っています」

一方で、アメリカ海兵隊のグアムへの移転を歓迎する人もいます。

エディ・カルボ前知事「私は沖縄がアメリカ軍において非常に大きな負担を負っていたことを理解していました。私は当時、知事としてアメリカと日本で調印された協定に基づいて、沖縄の軍隊の一部を受け入れることは、私の責任であると感じました」

こう話すのは2011年から2019年まで、グアムで知事を務めていたエディ・カルボ前知事です。今回のグアム移転による様々な経済効果を期待しています。

エディ・カルボ前知事「(基地移転は)経済的なメリットもあります。短期的には建設事業者に、長期的には5000人の海兵隊員とさらに1500人の公務員が必要となり、グアム内の税収が増えることになります」

前泊教授はグアムへの移転が単なる基地負担の軽減にはならない可能性があると指摘します。

グアムリポート前編「在沖米海兵隊グアム移転計画のいま」

沖縄国際大学 前泊博盛教授「米軍基地が自衛隊基地に置き換わる可能性も含めて負担軽減どころか、むしろ日本の軍隊による使用が増えて負担は減らないっていう、そういう危険性はありますね。むしろ、グアムに移転することによって、日米安保の中で自衛隊がその米軍に代わる役割を担わされ、そして武器も買わされ、そして40兆円に及ぶ装備の強化をこれからしていく。税負担が、国民にのしかかってくる。そこからするともう米軍基地から自衛隊基地へというパラダイムシフトが始まっている。そしてそれまで米軍ですら持っていなかった、宮古、八重山、そして与那国まで含めて基地が展開をされていくというね。こんな時代になってるんですよ」

グアムに暮らすカルボ前知事も中国への懸念を感じていました。

カルボ前知事「私たちの多くは平和を望んでいますが、中国は別のことを望んでいると理解しなければなりません。なぜなら中国はとても攻撃的です。私は戦争を見たくありませんが、その準備をしなければなりません」

キャンプ・ブラズという新たな基地が造られることについて、経済成長や安全保障の重要性から賛成と考える人もいる一方で、歴史や環境、人々の権利が失われると反対の声があがるグアム。そこには基地に翻弄され続けてきた沖縄と重なるグアムの今がありました。

あすは、新たな基地が移転される現地の受け止めと様々な思いについてお伝えします。