沖縄の伝統工芸のひとつ、琉球漆器の職人たちが培ってきた技で古いピアノを再生するチャレンジを行っています。街行く人が誰でも触れることができるストリートピアノとして製作されています。

実は漆とピアノは相性がとても良いのです。私たちが当たり前と思っているピアノの色の理由も見えてきました。

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

那覇市伝統工芸館の一室。市内の保育所で40年余り使われていた古いピアノがあります。子どもたちに音を奏で続けてきたこのピアノに新しい命が吹き込まれようとしています。

琉球うるし工芸・上原昭男プロジェクトリーダー「お椀とか飾り物だけでなく、アクセサリーからピアノまで漆器の技術はいろいろなものに応用できるので、この機会に理解いただいて、もっと漆器ファンを増やしたいのが大きな希望」

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

琉球漆器の職人たちが挑むピアノ再生プロジェクトは、漆を塗り直し、ストリートピアノとして復活させようというものです。4月から作業が始まり、完成まであと1カ月。クリスマスイブにコンサートを開くことが目標です。

琉球漆器は中国から技術や原料が伝わり、14世紀ごろから始まったとされています。漆を乾かすために高温多湿な環境が必要です。デイゴやガジュマルなど、漆器に適した木材にも恵まれたことから独自の発展を遂げてきました。

戦後も経済成長とともに沖縄の文化を象徴する工芸の1つとして知られるようになり、土産品としての需要も高まりました。1980年代の最盛期には6社、380人ほどの職人がいました。

しかし現在、後継者不足や新型コロナによる観光客減少などで琉球漆器に携わるのは個人工房など、わずか40人までに減ったといいます。

上原昭男プロジェクトリーダー「この時期だから、暗いニュースばかりだから、ひとつ明るいニュースになるのではないかと。この3人の方々は、この伝統工芸館の体験工房で講師をやっていて、相談するとやってみようと」

プロジェクトに関わる3人のプロフェッショナル。それぞれに担当があります。

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

漆に顔料を混ぜた彩漆をさまざまな文様にして張り付ける、堆錦。後間義雄さんは那覇市の花ブーゲンビレアを制作しています。

後間義雄さん「葉を一枚いちまいしっかり描かないと、なかなか図案として成り立たない。(椀などに比べ)こんな大きなものは普通作る機会があまりないが、特別にいろいろ組み合わせをしてその(ピアノ側面の)大きさにして仕上げた」

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摺った貝で艶やかな色合いを表現する螺鈿。そして堆錦で作業する伊集守輝さん。オオゴマダラが木の枝に戯れる姿を表現します。

伊集守輝さん「せっかくの機会なので、伝統的なものだけでなく、自分が感じたものをプラスするというか、ピアノを弾くとメロディーが出るこれ(メロディー)を感じさせるような軽やかな雰囲気を出したい」

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

2人の匠の技を際立たせるのに欠かせない縁の下の力持ちがもう1人の職人・森長武一さんです。傷ついたピアノの形を整える「磨き」を担当しています。

森長武一さん「磨きをきれいに仕上げていかないと、こういったもの(螺鈿)が映えない。中途半端にすると曇ったりとか。きれいに磨かないと加飾する場所自体が浮いてこない」

3人の技術を結集して、街行く人たちが思わず触って自由に弾くことのできるストリートピアノに仕上げます。

ストリートピアノと言えば、那覇空港にアルベルト城間さんが寄贈したものがあります。新型コロナの影響から、人出や活気を取り戻すきっかけにしたいという思いがありました。そのアルベルトさんの思いに賛同して、ピアノを無償で提供した店舗があります。

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

沖縄市に開業して半世紀あまりの老舗「島ピアノセンター」。販売だけでなく調律やメンテナンスも手掛けます。ストリートピアノに提供したのは中古のものですが、年季の入ったある音が魅力だとといいます。

島ピアノセンター・小林誠さん「(ストリートピアノは)古いピアノを再生してというケースが非常に多いので、いまのピアノとはまた違う、当時の何十年も前の音色などを楽しんで頂くという意味でも非常に良いことだと思う。少しだがお手伝いできたことを誇りに思っている」

琉球漆器のストリートピアノについても興味深い話が。

島ピアノセンター小林さん「日本は海外に比べ湿度が非常に高いので、漆が最適。その関係で日本では(ピアノの色は)黒が主流」

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

実際ピアノには木目調のものなど、様々な色合いのものがあります。日本では湿気からピアノを守るため、黒漆を塗ったところ高級感も好まれ、黒い色が一般的となりました。今では安価な化学塗料を使うことがほとんどですが漆とピアノの相性はとても良いのです。

漆器業界や街の活性化につなげるべく、匠たちは腕によりをかけて黒いキャンバスに新たな息吹を芽吹かせようとしています。

上原昭男プロジェクトリーダー「ぜひこのピアノを弾きながら、多くの人たちに琉球漆器を見直していただいて。業界活性化の再スタート、第一歩になれば素晴らしいことなのではないかとみんなで考えているところ」

間もなく師走。漆器職人たちのチャレンジはラストスパートを迎えます。

琉球漆器の職人 ピアノ再生に挑む

このプロジェクトは那覇市の市制100周年を記念した事業の補助金を使っていますが、材料費やコンサートの費用など足りない分をクラウドファンディングでの支援を呼びかけています。沖縄タイムス社のサイトLink-Uで12月22日まで受け付けています。