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県内の感染者増加とともに急増している妊婦の感染。先月はこれまでで最も多い169人の感染が確認されました。重症化する事例もあるため、県は「かかりつけの医師に相談したうえでワクチンを接種してほしい」と呼びかけています。しかし、ワクチンを打つかどうか慎重に考えたいという人も少なくありません。妊婦を悩ませるワクチン接種について考えます。

新川春菜さん「2カ月待ったので、やっと受けられるなと、少し安心なのと」

現在、妊娠8カ月の新川さん。夫と子ども2人の4人暮らしで、11月に3人目の出産をひかえています。これまでとは違うコロナ禍での出産。ワクチンを打つかどうか慎重に考えました。

妊婦のワクチン接種について考える

新川さん「かかりつけの産婦人科に聞いてみたところ、打ってもいいよとも打たない方がいいともどちらとも言えない。あくまでも自己判断になりますと言われて。それだったら自分が予防に努めた方がいいのかなって」

6月、新川さんの職場で職域接種を実施すると知らされましたが、その時はすぐに判断できなかったといいます。悩んだ末、ワクチンを打つことを決心しましたが…

新川さん「職場に申し出たんですけど、でもその時にはもう空きがなくてキャンセル待ちというふうになりました」

1カ月近くたっても枠が空かないなか、7月、自治体から接種券が届きました。

新川さん「すぐ受けたいなと思って問い合わせたんですけど、妊婦は優先枠ではなくて一般枠なので、9月後半から10月ぐらいになりますって言われて」

自治体によっては、妊娠は優先接種の対象外。キャンセル待ちをするしかありませんでした。さらに1カ月待ち続け、先月下旬、自治体から「枠が空いた」と連絡が入り、やっと接種の日を迎えることができたのです。

妊婦のワクチン接種について考える

新川さん「出産前に一回でも打っておきたいなって思ってて、打てて良かったです。(職員が)『ぜひ受けて安心してください』って優しい言葉で言ってくれてちょっと安心しました」

今月に入ってからも22人の妊婦の感染が確認されているなか(9月6日時点)先月下旬から妊婦を優先接種の対象とする自治体は増えていて、県によると先週時点で那覇市や名護市、宮古島市などが妊婦を優先対象に。沖縄市などは検討中としています。

妊婦優先の動きが進む背景には、先月、千葉県で自宅療養していた妊婦が出産し入院先がみつからず赤ちゃんが亡くなる事態になったことが一つの要因で、県内でも妊婦の優先接種を希望する声が高まったといいます。

自宅療養中に早産となり失われた命。琉球大学病院で妊婦を支える銘苅医師は、決して他人事ではないと話します。

琉球大学病院周産母子センター教授・銘苅桂子医師「いつ起きてもおかしくないことです。沖縄県はやはり発生頻度が高い。妊婦さんへの感染も、人口当たりの頻度が高い所になってますので。今そういったことを本当に絶対に起こさないということで、さらに県内の周産期の先生方と連携を進める対策をしています」

妊婦のワクチン接種について考える

先月の集計では、感染した妊婦169人中116人が自宅療養となっていました。銘苅医師は重症化を防ぐためにもワクチンを接種してほしいと話します。

銘苅医師「例えば37〜38週とか分娩が近くなった状態を後期と言いますが、その時期になると肺炎の症状が重症化してしまうというリスクがわかってきました。もうひとつはコロナに感染してしまうと早産のリスクが増えるということもわかってきました。コロナに感染しないために予防接種を打つというのは非常に妊婦さんにとって、メリットが大きいということ。それでは、デメリットは何かというとやはり新しく出たワクチンなので、長期的なリスクがまだわからないというところだと思います。ただし、今も非常に世界的に多くの妊婦さんに接種をしてきているデータが集まってきている時点で、ワクチンを接種することで、妊婦さん自身に大きな副作用が起きることはないだろうということがわかってきました」

妊婦のワクチン接種について考える

では、一番懸念されている胎児への影響はどうなのでしょうか?

銘苅医師「心配されていた、ワクチンを打つと流産が増えるんじゃないかということもほとんどなさそうだとわかってきましたし、ワクチンを打って早産になってしまうんじゃないか、赤ちゃんに何か異常が起きてしまうんじゃないか、そういった懸念も、多くの接種をすることでデータが蓄積されてきて、そういうことはないだろうということがわかってきました。そうしますと今現時点のデータを見てみると、やはり感染して、先ほど言ったようなこと(肺炎の重症化や早産)が起きるよりも打つメリットの方が大きいだろうということが言えるのではないか」

妊婦のワクチン接種について考える

自分自身と産まれてくる我が子のためにも接種の重要性を語る銘苅医師は、ひっ迫が続く医療現場で妊婦が大変な思いをする状況を目の当たりにしてきました。だからこそ一人ひとりの命を守りたいと話します。

銘苅医師「さらに病床がひっ迫していて次に来る妊婦さん受けられないかもしれないっていうところでやりくりしているので、もう本当に誰一人に感染してほしくないっていうのが本音なんです。なので、自分を守るためにもワクチンを打ってほしいなと思います」

銘苅医師は「ワクチン接種の際に、かかりつけの医師にワクチンを接種してもいいか確認していなかった場合、会場で接種を断られるケースもあるので、必ずかかりつけの医師に相談をしてほしい」と話していました。