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Qプラスリポートです。きょうで、東日本大震災の発生から9年。災害や大事故などを想定し、迅速で正確な処置がおこなえるかを競う、救急医療の競技会・メディカルラリーが先月、北中城村で開催されました。

横たわり、助けを求める人々。トイレで意識を失った男性。乳幼児突然死症候群で亡くなった赤ちゃん。先月ひらかれた琉球メディカルラリーでの一幕。

メディカルラリーは、医師、看護師、救急隊員から成る6人1チームが、災害や事故などの現場で的確な処置ができるかを競うものです。県内では初の試みにも関わらず全国から強豪チームが集結!

奈良・チーム飛鳥川「1位を頂いて帰ります!」

兵庫県災害医療センター「災害医療を中心に3次救急をやっている病院なので、ラリーも優勝したいと思います。」

ツワモノたちを惹き付けるハイレベルな大会を企画したのは、中部徳洲会病院で働く村上医師です。村上医師は全国各地で優勝をさらってきたメディカルラリーチーム「トリニティ」のリーダー。

中部徳洲会病院・村上医師「ある日突然、災害がおこって知らない人たちが一堂に会して急に医療をしないといけないのがそれほど珍しいものではない。その時に、ガイドラインに準じた医療であるとか、チームビルディング・ノンテクニカルスキルを使った医療の実践というのが非常に大事になってきます。それのリアルな訓練、シミュレーションとして、今そういう時期かなと思って開催を決めました。」

メディカルラリーに初挑戦したのが、琉大・玉城医師率いるチーム「コードクリア」。寄せ集めで結成、ということもあって、練習を始めたのは大会まで3週間を切ってからでした。

琉球大学医学部附属病院・玉城佑一郎医師「やることめっちゃいっぱいある。沖縄県で第1回のメジャーリーグがやりますよっていう所に、すみません、未経験で高校生野球チームですけど大丈夫っすか?そんな感じです。」

練習方法も、用意するものもわかりません。県内のベテランチームを訪ね、情報収集。大会まであと4日。再び、琉大チームを訪ねると、本番を想定した練習も、だいぶ本格的に!

琉球大学医学部附属病院・玉城佑一郎医師「シミュレーションではなくて、実践をやっているような気持ちで現場にのぞむことができて、さらにその現場で、また得られることがあったらいいかなと思います。次につなげることが大事かなと思っていますので。」

こうして迎えた大会当日。用意されたシナリオは8つ。

案内人「皆さんは、これから国際救助隊の一員として、沖縄から海外にむかってもらいます。」

こちらは、海外に向かう飛行機の中で、偶然、急患に遭遇したというシナリオ。実は、こちらの患者の心停止の原因は、アレルギーによるアナフィラキシーショックという設定です。友人に話を聞いたり、スマートフォンに登録されているメディカルIDを確認したりして、アナフィラキシーの診断が正しくできるかどうかが問われているんです。

そして、琉大・コードクリアが臨んだのは、ヘリが国際通りに墜落したというシナリオ。大勢のケガ人がいる現場に到着し、けがの程度で治療の優先順位を決める「トリアージ」を実施します。なかには、耳の不自由な方も。ひとりひとりに適切に対応できるかも試されます。

メディカルラリーでは、こんな場面での対応も体験します。救急搬送されてきたのは生後2か月の赤ちゃん。呼吸をしていません。懸命な処置の甲斐もなく、赤ちゃんは亡くなってしまうという想定です。

動揺する母親に、どう接し、亡くなったことをどう伝えるか。難しい局面ですが…。こうした中、琉大・コードクリアの玉城医師は、あえて、ドライに、母親に接していました。

琉球大学医学部附属病院・玉城佑一郎医師「虐待も考えないといけない。」

中部徳洲会病院・能美康彦医師「そういうことも、全身観察しなきゃいけないんだけど。」

結果発表。優勝したのは、奈良県から参加したチーム飛鳥川。琉大・コードクリアはというと、初挑戦ということもあり、最下位も覚悟していましたが、13チーム中、6位という結果でした。

しかし、手ごたえも。実は最後に玉城医師がとったある行動が高評価だったのです。それはこちらの場面。自宅で倒れている男性を発見し、搬送するというシナリオ。玉城医師は、救急隊に電話連絡しながらも、吐いたものがのどに詰まらないように、器用に体の向きを変えたのです。そんな玉城医師は、すでに当直のため会場をあとにしていました。

玉城医師「僕が長い事やっていても経験していない症例もみましたので、それまた次に、もう1回帰ってから復習して、いい機会を与えてもらったなと思っています。」

全国の同志と競いながら医療技術を磨くメディカルラリー。仲間と学ぶ楽しさが、現場の絆を深め地域の医療を育てます。

今回の琉球メディカルラリーは、医療従事者を対象としたものですが、全国では、市民を対象とした大会も開催されていて、災害時の対処法を学ぶ機会として活用されています。主催した村上医師は、今後も大会を継続させ、地域の医療を育てる環境を作りたいと話していました。