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正殿など9つの施設を焼失した首里城火災から1カ月。大きなシンボルを失った影響は広がっています。QABでは今回、情報開示請求をして消防設備に関する報告書を入手。文化財を取り巻く課題を検証しました。

先月31日。朱色に彩られた城は、瞬く間に真っ赤な炎に奪われていきました。火災では、正殿や北殿など9つの施設が消失し、文化財など400点以上が失われた可能性があります。

寂しいですよね

北殿を望む龍潭前では…。埼玉からの観光客「見るのを楽しみにしていたんですがちょっと残念なことに」「…寂しいですよね、この状態」大阪からの観光客「朝テレビを見てものすごくショックだった」「今の形を記録に残しておきたいなと」

沖縄のシンボル、沖縄の人たちの心のよりどころが失われてしまってから1カ月。公園に入ってみると、厳しい状況が見えてきました。焼失した正殿や北殿、南殿などがある有料区域はまだ立ち入りが制限されているため、人の姿はまばらです。

「こちらは、団体客の大型バス専用の地下駐車場ですが、26台分あるというスペースに、ほとんどバスは止まっていません」

首里城公園によると、大型バスの駐車場の予約は今月、およそ8割がキャンセルに。来園者数は激減しています。その一方でこんな影響も…

「こちら、同じく世界遺産の識名園です。多くの観光バスが止まっています」首里城からおよそ1.5キロ、琉球王家最大の別邸だった識名園では。

バスガイドの女性「コースは首里城を変えてこちら識名園に来たりしている」「一度は見て見たかったという声は初めてのお客さんですと多く聞こえてきます」

那覇市によると、去年11月の来園者は1日平均294人でしたが、今月は(27日現在)1日平均811人と、およそ3倍の人が訪れるようになりました。また、王家の陵墓、「玉陵」でも、去年11月と比べ、来園者はおよそ2倍となっています。

こうした中、沖縄の本土復帰から50年の節目となる2022年までに、再建計画策定を目指し動き始めた県。

玉城知事定例会見

玉城知事定例会見「10月31日当日にも必ず首里城を復元するという強い決意を述べた。多くの皆さまの強い願いを実現させるためにも全身全霊で取り組んでいくという言った。全身全霊で取り組んでいくという気持ちは日に日に強まるばかりです」

しかし肝心の火災原因は未だ明らかになっていません。QABでは那覇市に情報公開請求を行い、首里城公園など文化財を保管している施設の消防設備の点検結果報告書を入手しました。

このうち首里城の報告書によると、昨年度の点検では、正殿に設置された自動火災報知設備に空気漏れや作動不良が見つかっていたものの、去年12月までに修繕されたり取り換えられたりしていたことがわかりました。

しかし一方、別の文書からは、ある懸念が浮き彫りになりました。2006年に国宝に指定された、国王が儀式の際に着用する冠、「玉冠」をはじめ多くの文化財を所蔵する那覇市歴史博物館。実は今回の火災に際しても、一部の資料がこの博物館に貸し出されていたおかげで消失を逃れたことがわかっています。

しかしこの博物館が入っているビル全体の点検結果を見てみると…。消火器やスプリンクラー消火設備、自動火災報知設備といった多くの項目で「不良」と診断されていることがわかります。

多くの項目で「不良」と診断

ビルを管理・運営する会社は取材に対し、「指摘されたカ所のおよそ7割はすでに改善されていて、すべての修繕、取り換え作業は今年度中に終わる」としています。

観光客「ちゃんと防災設備をととのえて、みんなが悲しむことが起きないようにしてほしい」多くの人が望む、シンボルの再建。観光や経済、文化財の管理など課題は少なくありません。